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【競輪祭女子王座戦】女王サトミナと挑戦者の意地、最後まで賞金争いを続けたガールズ選手たち/ケイリン女子部・二宮歩美の現地レポート

2025/11/22(土) 11:15 0 4

小倉競輪「競輪祭女子王座戦(GI)」は21日、佐藤水菜選手の優勝で閉幕しました。今回はケイリン女子部・二宮歩美部長によるシリーズ終了後の現地レポートをお届けします。

 競輪祭3日目をもって女子王座戦が終了。佐藤水菜選手の優勝でガールズグランプリへ向けた長い1年間が一足先に幕を閉じました。終わってみれば4つのGIをすべて制覇し年間グランドスラムという記録を達成。

佐藤水菜(写真:著者提供)

「落車もあり、コメントしづらいですが優勝は嬉しくもあり悔しくもあり…。 力を出し切った結果ではあるが(アクシデントもあり)理想的なゴールではなかったので。ゴール前で戦い切りたかった。(年間グランドスラムを達成してもなお)まだです。あと一つ、グランプリが!

(平塚グランプリは2回出場も優勝がないことに対し)そこに向けて今回は3日間グローブを着用して走ってみた。ちょっと温かく出来たかなと。これからの予定はクリスマスにはコーチが帰ってしまうので、それまでしっかり練習積んでいきたい」と話していましたが、このまま年間グランプリスラムまで勢いと実力で樹立してしまうのか!

 さすが『世界のサトミナ』。世界選手権「女子ケイリン」も2年連続優勝でサトミナ熱はまだまだこれから2028年のロス五輪に向けてどんどん加熱していきそうだ。

 それにしても冷静に考えると、GIが設立されて本来なら一つの開催毎に一人ずつ優勝が出ることで、熾烈な賞金争いのプレッシャーから解放される選手がいるはずなのに、今年は“サトミナ大女王様”にガールズケイリンを支配され、誰一人も賞金バトルロイヤルから抜け出せる選手がいない年になるとは…、恐るべし。

 その中でも特に年間を通して、賞金争いのボーダーに位置し、一瞬たりとも肩の力を抜くことが出来なかったであろう選手にこのタイミングでフォーカス。ます最初に名前を上げたいのが、1年間通して通常開催、全てを完全優勝した梅川風子選手。

梅川風子(写真:著者提供)

 ちなみに58勝18Vで、4回のGIに全て出場し、オールガールズクラシック決勝3着、パールカップ決勝4着、たった1回オールスターのみ2日目に落車欠場で直前ランキング6位って…! えーーー!

 これだけ突き詰めて記録を積み上げても年間を通して一瞬たりとも気が抜けないってエグくないですか!? しかも前後との賞金差100万円のみって通常開催を2回優勝したら、どんでん返しが起きてしまうような僅差!? 今年はナショナルを卒業して競輪に専念していましたが、決勝では内枠に佐藤選手がいながらもスタートで出て佐藤選手の前から勝負したのは印象的でした。

「直前まで悩んでいたけれど、佐藤選手を後方において始めたかった。反応が悪かったです。今日のレースは反省しかない。二度と起こらないようにしたい」と一切の笑顔なし。

 しかし、初代女子王座戦では佐藤選手を差して優勝している実績もあり、佐藤選手に逆転できる可能性が一番近い有力候補。それだけにグランプリでも期待したいですね。

 そして自身のレースが終わった地点でランキング7位となり、残すは決勝の結果次第となっていた山原さくら選手も印象的でした。今年は52勝10VでGIには4回とも出場。今開催は尾方選手、柳原選手、太田選手、奥井選手などとほぼ横並び一線で迎え、この3日間がまさに勝負となる気が気ではない状況。

そんな中でも委縮せずに2日間積極的に仲澤選手や奥井選手に対して合わせにいこうとする動きは目を惹くものがありました。

山原さくら(写真:著者提供)

「ちょっと結果があれ(落車のアクシデントがあり)だったので素直に喜べないけれど、防府で腰を据えて1年間やってきてグランプリに出場することが恩返しになると思っている。今回、自分のレースは出来たけれど成績が振るわなかった。仕掛けるポイントなど掴めたこともあったのでそれをしっかり出せるように後1カ月、練習して臨みたいと思います」

 2022年グランプリ以来の出場と返り咲いた山原選手が防府に移籍して迎える初の大舞台。掴んだものがあったと言っていただけに、ここからその感覚をどこまで磨いて本番で形にできるか動きがよかっただけに期待したくなりますね。

 最後は惜しくも目の前にあったグランプリの切符を手に出来ず、悔しい思いをした小林莉子選手の存在も皆様には知っていて頂きたいなと。

小林莉子(写真:著者提供)

「今日も悔しいけれど久米さんの仕掛け方や緩急が後輩だけれども勉強になった。年末に向けていい順位で迎えていたが、私生活(練習中の落車を差していると思われる)で残念な形になってしまった。毎年、食らいついていくのでいっぱい。年々、ガールズケイリンのレベルも上がっていてしんどい時の方が多い。ここにくるまでにグランプリを決められるくらいに来年に向けていきたい」

 毎年出場ボーダー付近にいて、本当にあと少しの僅差のところに長年位置している。ガールズケイリン14年目の1期生であり初代グランプリ女王。今年はクラシック、オールスターと決勝に進出もしている。ただ、とにかくどんなにこの1年間を積み重ねてきても、最後の最後に落車で一ヶ月休んだだけで賞金争いは窮地に追いやられてしまう…。それを考えたら気持ちや体を休めたくても休まらなかったことだろう。

 1年間気を引き締めて臨んでもたった1回のミスや欠場が大きく明暗をわけるシビアな環境で戦い抜いてきたガールズ選手たち。どんな結果であれ今日、この一瞬だけは“一区切り”という意味で息を抜ける貴重な瞬間だったはず。改めてどの選手のことも心から尊敬したい。1年間、本当にお疲れ様でした。少しだけ心底、ゆっくりと休んで貰いたいと思います。



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