2025/06/17(火) 10:00 0 5
岸和田競輪場で17日に初日を迎えた「高松宮記念杯競輪(GI)」。埼玉のレジェンド場立ち予想家「木村安記」が今シリーズの展望と注目選手を紹介します。
▶︎今日の競輪予想はこちら
6月17日から22日までの6日間、岸和田競輪場にて、「第76回高松宮記念杯競輪(GI)」が開催されます!
選手が演じる激闘、死闘、の戦地は浪切バンクの愛称で人気を集めている岸和田競輪場。浪切とは「浪」を沈めて未来を切り拓く希望を込めてつけたそうで、ここから新しい世界を広げて歴史に名を刻む選手が出てくるのか!?
岸和田競輪場は直線が56.7mでこれといってクセがなく、それぞれどんな戦法でも個々の特徴が活かせる標準バンク。近くに海が広がる地域に存在するため、時々1センターあたりから吹き込む風の影響を感じる日があります。
高松宮記念杯競輪は、他のGIレースとはまったく異なる勝ち上がり方式が特徴です。一次予選から二次予選、そして準決勝までは、東と西に分かれてレースが組まれます。そのため、普段は同じラインで走るような選手同士でも対戦することになり、激しいぶつかり合いの中で勝ち残った9名が、決勝で激突します。
先行日本一は新山響平。ただ、毎回同じ表現にはなるが、「ここ一番」で狙いすましたまくりで勝負ができるか。一方、怪童オリンピアン・中野慎詞には当然ながら先行での活躍を期待したい。とはいえ、その高い競輪力を活かし、「獲れるなら獲っちまえ」とばかりに放つまくりにも大きな魅力があり、期待がかかる。
この二大先行型の番手をどうするかも見どころのひとつ。前走・別府記念で新山響平を目標に勝ち切った守澤太志が、復調気配でその座に収まる可能性もあるし、1月の松阪記念で落車し骨盤を骨折、まだ万全とは言えない佐藤慎太郎がどこまで主張できるかにも注目。そして、取手記念で健在ぶりを示す鋭い脚を見せた成田和也も、まだまだ侮れない存在だ。
5月23日、輪界に激震が走ったーープリンス・平原康多が電撃的な引退を発表。関東のニューリーダーとして注目を集める眞杉匠は、完全にモデルチェンジをして勝利至上主義に変貌してしまった。しかし、彼にはまだ走り込むべき距離が残されており、勝つことだけでなく“魅せる闘い”を演じる場面も必要だ。
2023年西武園オールスター決勝では、眞杉を引き出す形となり、無念の失格で奈落の底に落ちた吉田拓矢。だが、先月のGI名古屋では見事にV奪取し、ダービー王として今開催に臨む。SS上位と互角の闘いはやや苦しいポジションかもしれないが、勝ち上がりのどこかで必ず自力勝負を強いられる。そのシーンをどう凌ぎきるか。そして、プリンス・平原の引退で注目が集まるのが、埼玉の若頭・森田優弥。求心力が高まる今、単なる引き出し役にとどまらず、自ら頂点を目指す走りに期待がかかる。
西の横綱が古性優作なら、東の横綱は待ったナシで郡司浩平。年明けから安定感抜群の成績を残し、自力、番手、何でも来い!で信頼を集めている。前走の別府記念では「底は脱した」と語り、久々に重低音を響かせた深谷知広。郡司との前後関係は常に注目されるが、すでに12月30日の平塚グランプリ出場をほぼ手中にしている郡司が前をまわるなら、深谷はダントツの番手候補となるだろう。近況では不慣れな番手や3番手の位置取りが続く岩本俊介も、我慢を重ねて今がある選手。まわれる位置しだいでは自力もあるし突き抜けはありえるところ。
そして、南関の豪脚・松井宏佑。すでにGIファイナルの経験もあり、次こそは「獲りたい!」という思いが本音だろう。ただ、勝負どころでの位置取りの甘さが課題。そこを克服できれば、一瞬で勝負を決める可能性も十分だ。
FI四日市での前走では、山口拳矢がようやく復調の兆し。いや、もしかしたら“完全復活かも!?”と思わせる走りを見せた。調子を取り戻せば、GI上位陣とのまくり合戦にも加われる存在だ。
そして、先月のGI日本選手権(名古屋)で1着、2着、3着と着実に勝ち上がり、決勝進出を果たした浅井康太。その走りは、灯が消えるどころか“再燃”を印象づけた。かつて中部の課題だった自力型の駒不足も、ここにきて藤井侑吾、志田龍星といった若手が頭角を現しており、陣容は一気に心強くなってきた。
近畿で開催されるGIなので、もちろん地元地区の選手のボルテージは他地区よりアップ! 今年はやや取りこぼしも目立つが、年間を通しての安定感では群を抜く“最強スナイパー”古性優作が近畿勢の大黒柱だ。
ナショナルチームを離れ、“そろそろ夢を掴みたい”寺崎浩平は、勝ちにこだわるべき場面でフィニッシュホールドまくりにかまえられるかどうか。正直、陰りを感じるラスボス・脇本雄太だけど、依然としてタイトル争いをできる脚はある。若手の台頭により番手まわりで狙われなければ不動の頭勝負。
低迷から立て直してくるなら、近畿にとって大きな戦力となるのが窓場千加頼。地元バンクで“旋風”を起こしたい福永大智にも注目したい。そしてやや存在感が薄れてきたとはいえ、近畿一のキラーワークマン・南修二の番手仕事には引き続き注視が必要だ。
プリンス平塚康多の引退に伴い、空席になったSSに松浦悠士が昇格。これにより清水裕反と共に再上昇を目指す“ゴールデンコンビ”。さらに、北井佑季に代わってSSに上がった犬伏湧也、そして輪界の超新星・太田海也と4車が揃うなら他地区には相当な脅威。ただし、松浦・清水のコンビは、最後方からの仕掛けで離れる場面も時折見られる。時代とともに取り残されず追走なるか。
もう“犠牲になる”だけのレースは終わりだと言わんばかりに、勝ち上がりで後ろに誰が付こうが欲を出していい立場にいるのが取鳥雄吾。そして自力だけでなく番手もこなせる器用さを持つ松本貴治も要注目の存在。
いったいどうした、いつ、どこで何があった熊本のニュースター・嘉永泰斗。そして4月の武雄記念と「日本選手権競輪(GI)」で落車に見舞われ、リズムを崩した伊藤颯馬、自在戦が冴えない伊藤旭。若手の一斉低迷により、九州勢は一気に勢いを失った印象が否めない。この3人が復調しなければ、九州の繁栄は厳しい。しかし、ひとり気を吐くのが山崎賢人。ナショナルチームでの経験に比例したスピード感ある自力勝負が魅力だ。
また、勝負強さに定評のある“山田ブラザーズ”ーー山田英明と山田庸平も、仕上がり次第で勝ち負けできる力を持っている。ピークは過ぎたとはいえ、直線のキレ味は健在な井上昌己、さらに5月の平塚記念での落車から回復すれば、ベテラン・荒井崇博の直線一閃にも警戒が必要だ。
初めて立川でGIIIを獲ってから、もう、2年だよ、2年。「何かデカいことが、すぐそこにあるのかも」と感じさせる走りはあったが、それから大きな結果は残せていない。自分の“時代”を創るには、今こそひと仕事が必要だ。
関東の総大将・平原康多の突然すぎる引退劇に、ファンは悲しみに暮れ、同県・他地区の選手も落胆した。だからこそ、「あとは吉田拓矢と眞杉匠に任せた」という流れに、森田が“待った”をかけたい。GI奪取という既成事実を作り上げることで、「埼玉の若頭」森田の存在なくして関東の相関図は語れないーーその現実を示すしかない。
もう、誰かのために奔走するだけではない。平原がいない今なら、GIを“勝ち切る”ことだけを考えてもいいはずだ。
4月の高知記念で落車し、初の鎖骨骨折。GI日本選手権(名古屋)を欠場し不安もあったが、2場所前のFI宇都宮では3日間しっかり距離を踏み、直前のFI奈良でも結果を出した。戻ってきている、仕上がってきている。関東を引っ張る存在として突っ走ってほしい!
2021年12月30日、静岡で開催された競輪グランプリ出場が決定しているのに直前、欠場することなく出走したGIII別府での落車にての鎖骨骨折はショッキングだった(グランプリは出場して6着)。だが2023年、GI日本選手権平塚での落車で喫した頚椎骨折が本当の悲劇の始まりだったのではないだろうか。
その翌年から3年間守り続けたSS班から陥落して2024年以降、度重なる落車、失格、大きなケガによりこれでもかと続いてしまう不運に「さすがに、もう、キツいかな⋯」という声もファンの間でささやかれていた。それでも今年の春先から差し脚が戻りはじめ、2023の別府記念以来、通算5度目のGIII優勝を先日、別府にて果たす。
北日本には守澤を復活GIII優勝に先行で導いた新山響平、怪童オリンピアン中野詞といった2人の輪界屈指の先行選手が存在は絶大なる味方になるのは間違いなく、今なら実績はあるが低調な佐藤慎太郎、成田和也ではなく番手の席は守澤になる可能性は高い。その先に見えてくるのはまだ成し遂げてはいないワンチャンスありえるGI初優勝。
もちろん連れていってもらうにあたり新山、中野のスピード&パワー、踏み出しに離れることなく付いていかなければならないわけで、その辺の対応は課題になる。
S級に昇級してから約9年。ずっと中四国の先頭で闘ってきた先行選手。もう、やりきったよね、貢献し尽くしたよね!ーーそんな想いは見る側にはもちろんあるし、何より本人がそれ痛感しているのかどうかが一番の問題。
SS松浦悠士、清水裕友が万全とは言えない中、救いの手を差し伸べるがごとく引き出し役を担うのではなく、ここ一番で勝利至上主義に徹することができるかどうか。
当然、同地区にはSS犬伏湧也、太田海也という他地区を黙らせる大砲の心強い存在はあるし、連係となりいざとなれば、躊躇なく身を任せるのもひとつの手段。
前走の全プロ(青森)ではまくり、逃げきりで連勝。仕上がりも上々で、さらに状態を上げていれば、大きな夢を見てもおかしくない存在だ。
昨年から続く不運な落車による大ケガ、そして今年の2月、GI全日本選抜競輪(豊橋)最終日にも大転倒で右鎖骨骨折。
そんな苦難を乗り越えながら4月のGI日本選手権名古屋、5月のGIII平塚では決勝戦で南関の2段駆けに立ち向かう姿に復調の兆し。
FI戦ではあったが前走の四日市を皆さまはご覧になったでしょうか? 目標の村田祐樹が後方まったく動かずも、待って待っての3コーナーから捨てて仕掛けて届いた上りタイムは渾身の10.8。
まだ、早い。こんなモノではない。そんな声はあるかもしれないが、もう上位陣と闘う準備は整った段階に入り、あとは狩って、狩って、勝つ! それだけ。
初制覇を成し遂げたGI日本選手権平塚から早2年が過ぎたが、ソロソロ完全復活は見えてきている。