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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の意気込み】目の前の霧は晴れた! 冬の大決戦へ死力を尽くすのみ

2021/11/30 (火) 18:00 13

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。11月は『周防国府杯争奪戦(GIII)』と『競輪祭(GI)』に参戦してきました。今月も読者のみなさんに振り返りを届けられたらと思います!

意気揚々と乗り込んだ小倉競輪祭(撮影:島尻譲)

地元に懸ける裕友の想いに感動

 防府記念は裕友の4連覇で幕を閉じましたが、僕は開催中に裕友を見ていて「つらそうだな…」と感じていました。緊張感が重くのしかかり苦しそうでしたし、準決勝では裕友らしくないレースもありました。裕友自身、仲間を思えば不本意だったところもあったかもしれません。ただ、地元に懸ける想いの強さが表れた走りだったと思いますし、つらさを乗り越えて4連覇を達成したのは凄かった。レース後に大歓声を浴びている姿に感動しました。僕にも地元に対する想いがあるので、勝った裕友を見て、「広島で勝ちたい!」という気持ちが強まりました。

周防国府杯争奪戦、清水裕友1番車(白)が4連覇を達成。場内は祝福の歓声が飛び交った(撮影:島尻譲)

自転車に不調の原因を見つけ潮目が変わる

 前回のコラムでも競輪場でのインタビューでも『結果は良くなくても体は好調』と言ってきましたが、本当に体の状態は悪くなく、なのに自転車の進みが悪いという感覚に悩まされ…。そんな中、防府記念の3日目に思わぬところで原因を見つけることになりました。

 準決勝のレースを終えたとき、吉田拓矢君から「松浦さん、これハンドル曲がってませんか?」と声をかけられたんです。僕はハンドルとステムを新品に変えていたんですが、『新品だから大丈夫』という固定概念があって、まさか曲がっているなんて思いもしませんでした。正面から見て曲がりを確認し、修正して最終日を走ったのですが、体と自転車がしっかりと噛み合って勝つことができました。体と自転車がマッチする感覚で走れたことは自信に繋がり、競輪祭へ向けて気持ちが明るくなりました。

最終日は町田太我(写真右)と連係し1着、ワンツーを決めた(撮影:島尻譲)

 開催後には帰って自転車を細かくチェックしました。久留米で落車後、寛仁親王牌と防府記念は寸法が全く同じの別のフレームで走っていたのですが、前フォーク(前輪を取り付ける横のパーツ)部分を落車したフレームに移植する形で念入りに調整しました。今振り返れば、京都向日町の初日の接触に歪みの原因があったように思います。原因がわかり、自転車を元の状態に戻すことができ、「これだ!」という感覚も戻ってきました。競輪祭前検日の2日前にはすごく良い状態を実感でき、楽しみな気持ちになりました。

 不調の原因がわからない時は24時間何をしていてもずっと張り詰めて考えてしまうので、9月10月はメンタル面も良くなかったように思います。『何でスピードが出ないんだろう…』、『思うよりも長い距離を踏むことができない…』、『体の状態も良くて力も入っているのに自転車が進んでいかない…』といった不安が解消されたことで心が落ち着きました。

絶対に決勝まで勝ち上がる! 気合い十分で競輪祭へ

 不調の原因も見つけ、体も動く状態にあったので、今回は決勝が絶対条件だ! くらいの気持ちで臨んだ競輪祭でした。2日目のレースで強いけん制を受けましたが、持ちこたえることができ、前にも踏み込めたので、体やバランスの良さを確信しました。

 準決勝も緊張せず硬くならず、前を走る雄吾をどれだけサポートできるかに集中して走ることができました。ただ残り1周で僕の後ろが併走になっていたのは想定外で、しかも併走は長く続いていました。あのケースはなかなか稀で、車間を空け過ぎるのも危なく、難しかったです。もっと雄吾をサポートしたかったというのはあります。

107期の2人の強さを感じた決勝レース

 すべてのレースで勝負駆けだという気持ちでシリーズに入り、決勝まで上がれました。発走前、僕自身のメンタル面も相当仕上がっていたと思いますが、優勝を勝ち獲った吉田君のメンタルの強さは本当に凄いのひとことです。あの時の吉田君は『自分が優勝するか』あるいは『松浦・郡司・古性以外の誰かが優勝し、なおかつ自分が4着以内』でグランプリの出場権を獲得するという状況。そんな過酷な条件の中、持てる力を出すために落ち着いて立ち回り、優勝し、グランプリへの切符をものにしたのだから敵ながら天晴だと思いました。

 また、結果2着となった新山君も本当に強かったです。前日の準決勝で新山君は逃げ切りを決めていましたが、準決勝は他の選手も脚を使っていたのもあるし、タイムもベストのようには感じませんでした。新山君の準決勝のタイムを参考に決勝レースのイメージを固めていたので、捲りにいったときは「行ける!」と思いましたが、決勝の新山君のかかりは準決勝とは別物でした。本当に凄まじかったです。

107期のライバル同士が火花散らした競輪祭の決勝(撮影:島尻譲)

 レースを振り返れば、北日本ラインにそのまま追走すれば良かったのかな、吉田君のように脚をためていたらどうだっただろう、とかはないわけじゃありません。でも自分の思う「ここだ!」というタイミングで仕掛けることができ、自分の後ろが誰かなんてまったく気にせず、自分の後ろからは誰も来ないと信じて優勝めがけて走ることができたので、納得して走り終えることができました。9月10月に感じていた不安がなくなり、グランプリに向かっていける『楽しみな気持ち』を得たことにはとても大きな意味があると思います。優勝はできませんでしたが、競輪祭は僕にとって良いシリーズとなりました。

競輪祭の戦いを終えて

 競輪祭のシリーズを通じて『ルールを守る意思』について改めて考えていました。競輪は接触もあるし、時に激しいプレーが起きてレースが壊れることもあります。ファンの信頼や支持を得るためには、事故のないレースを心がけないといけないと思うんです。選手たちが失格・落車を起こさないという意志をもっと持たないといけないのでは? という場面があったように思います。

 昔を振り返ると僕自身、危ないところを突っ込んでいって落車をして、レースを壊してしまったこともあります。そういう経験から『事故はファンのためにならない』と感じていますし、改めて危ないプレーや「失格しても良い」という“故意”に見えるようなプレーはなくしていくべきだと思いました。これは選手同士の話かもしれませんが、たくさんのファンが応援してくれているので、思ったこととして書き記しておきます。

S級S班としてはじめての地元戦

やっと地元で観戦してもらえる喜びを闘志に変える(撮影:島尻譲)

 来たる12月9日から4日間、僕の地元の広島競輪で「ひろしまピースカップ(GIII)」が開催されます。この文章を書いている今、本当に楽しみにしている自分がいます(笑)。

 去年、玉野記念の代替開催と全プロが地元広島で行われることが決定し、「やっとS級S班になった自分の走りを地元の人達に見てもらえる」と喜んでいました。でも今年はコロナの影響を受けての無観客開催。今年は仕方ない、走れるのは今年だけじゃない、と気持ちを奮い立たせましたが、やっぱり地元の無観客は気落ちしました。

 地元のお客さんの前でS級S班として走りたい、見てもらいたいという気持ちがいよいよ報われそうです。今はついにその時が来たと気持ちが高ぶっています。絶対に良い走りをして、グランプリへと弾みをつけたいです。気合い十分に挑みますので、みなさん応援よろしくお願いいたします!

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は4問の質問に答えていきます!

今回は4問の読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー広島競輪場の好きなところは? 広島の街も好きですか?

 ファンの応援が熱いところです! ファンとの距離が近いので顔もしっかり見えるんです。そこが好きです。また、普段から練習を積んでいるところなので走りやすいですし、思い入れもあります。やっぱり地元は格別です。広島の街は住みやすいところが気に入ってます。都会過ぎず、田舎過ぎず(笑)。そしてご飯も美味しいです。当然好きです。カープだってあるし(笑)。

ーーお誕生日おめでとうございます。これからの1年はどうしていきたいですか? また、誕生日軸で1年を振り返って、一番のレースはどのレースでしたか?

 一番のレースは松戸記念の決勝戦です。過去のコラムにも書いていますので、ぜひ読んでみてください。あと、広島での玉野記念も印象深いです。「地元だから」と焦ることなく、しっかりコースを見極められたことが良かったです。『これからの1年』については特にありません。特にないというのは決して悪い意味ではなく、今年の年末のグランプリにすべての目標が詰まっていますので、来年以降の何もかもを考えられない、考えていない状態です。

ーー体重は気になりますか(体重計を使わなくても自分の体重がわかる、など)? 体重のことを話している選手コメントが多いので、レースへの影響が気になりました

 体重は気にしてますし、体重計にのらなくても大体自分が今何キロなのかはわかります。レースへの影響も大きいので、ベスト体重を探しながら取り組んでます。ダービーを優勝したときは72キロくらいでしたが、その頃は「軽過ぎて伸びないな」という感覚がありました。それで74キロくらいが良いのかな?と思っていたんですが、松戸記念の状態がすごく良くて、その時は76〜77キロでした。今回の競輪祭は75キロくらいで調整しました。

 競輪はダッシュも大事なんですが「惰性」というのがかなり重要な要素なんです。ある程度体重がある方が惰性が効きますし、パワーが出ます。脚力以外に使えるものがあるなら使いたい、そう思うので体重はすごく気にしていますし、ベスト体重を掴んでいきたいです!

ーースイーツ王子! 生クリームとカスタードならどっち取りますか?

 これは即答できます。生クリームでお願いします(笑)。最近「レーパンにお腹のってない?」って言われることが多いんですよね(笑)。いきなりの肉体改造はレースに支障があるのでやりませんが、徐々にお腹だけスッキリさせるように画策しています。体重は減らせないので結構難しいと思いますけど徐々に徐々に…(笑)

いざ12月、冬の大舞台へ出陣

目の前の霧は晴れた…! いざ12月の大決戦へ(撮影:島尻譲)

 9月と10月は競輪で勝てなかった分、24時間何をしていても競輪のことばかりを考えていました。気持ちをオフにすることができず、精神的に苦しかったです。そういったメンタルの部分で悪循環もありました。でも今は「お腹まわりをどうにかしたいな」とかも考える余裕も出てきましたし、少しリラックスできる時間が増えています。12月は絶対に勝ちたい地元戦とグランプリがあります。しっかりと自分の走りで勝てるように頑張っていこうと思いますので、応援よろしくお願いします!

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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