2021/11/16 (火) 18:00 19
全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、このたび晴れて45になりました佐藤慎太郎です。江戸時代ならくたばっちまっててもおかしくない歳だよね。今月は誕生月だし、最近のオレの考えなどを自由に記録していく回にする。「誕生月だし」とか気にするガラでもねーんだけどな! ガハハ!
何よりも最初に書きたいこと。ファンの皆さんへの感謝しかない。選手としての時間を重ねるにつれて、毎年毎年その気持ちは大きくなっている。オレは11月7日の誕生日に四日市競輪でレースを走っていた。
バースデーレースの結果は岩本俊介を差せずの2着。最終直線の岩本の踏み直しは本当に凄まじく、強烈だった。逃げ切った岩本がゴール後ニコニコしながら「慎太郎さん! 誕生日おめでとございます!」って。まだそんな余裕あるんかい! って感じだったよ(笑)。実際、レースを映像で振り返ったけど、岩本が本当に強かった。
あの日は顔見せの時から場内にいるお客さんが「慎太郎、誕生日おめでとう」って声をかけてくれててね。そりゃもう気合いが入り、身が引き締まる思いだった。オレとラインを組んでいる岩本に向けて「岩本! 慎太郎誕生日だぞ!」ってプレッシャーをかけている人もいたね(笑)。おかげで気風良く岩本がレースを支配してくれたよ。
金網越しに飛んでくるお客さんの声援にオレは奮い立つし、野次だってありがたい。レース外でトレーニングをしている時も、負けて悔しいときも、「もう一丁やったるか」って気になるのは応援してくれる人たちがいるから。この歳まで選手を続けていると、オレの成績はオレひとりで残しているもんじゃないって感覚がある。オレの競走得点の半分はお客さんが作ってくれたもんだよ。お客さんが車券を買ってくれて、競輪場に足を運んでくれて、声まで届けてくれる。すげえデカいパワーをもらってるんだよね。
コロナも落ち着いてきて、やっと競輪場にお客さんが戻ってきている。当り前じゃなくて、本当にありがたい。そんなことをしみじみと感じさせてもらった四日市の誕生日だった。ここは真面目に心から言わせて欲しい。いつも応援ありがとうございます。これからもよろしく頼むよ! ガハハ!
45になったオレは少なからず競輪の歴史というか、競輪のカルチャーを知っているつもり。20のときも30のときも40のときも競輪選手として走ってきているわけだから。そりゃ、そんだけの時間が流れてるんだから変化を感じる。自分の考え方も走法も戦術もアップデートするし、そもそも競輪のレーススタイルも観てくれるお客さんの雰囲気だって変わっている。その変化の中でオレが感じていることを少し書いておきたい。
ここ数年、野次について規制する動きが活発で、お客さんの声出しにも制限があると思う。オレはこの流れをどうかと思ってる。何でもかんでも「ドンマイ、ドンマイ」ってのは違うっつーか。少なくともオレは『野次が選手を育てる』って考えを持っているし、そういう時代を歩んできた。競輪場に足を運んでくれて、入場料を払ってくれて、声を出してくれる。選手に気持ちをストレートに伝えるって、競輪に限らず、プロスポーツ観戦を楽しむお客さんの特権じゃねえのか? って。
いつだったか若い頃、自分の仕事を全うできなかったレースがあった。結果だけ見れば1着だったんだけどね。「この勝ち方で大丈夫だったのか?」ってゴール直後からモヤモヤしていた。その時、「コノヤロー! 少しのブロックもせんのかい!」ってしっかりと罵声を浴びた。プロって勝つだけじゃダメなんだよなって、思い知らされたし、俄然気合いが入った。
観ているお客さんがいるからこそ、オレはプロの競輪選手として生きている。そういう叱咤激励を受け続けて、『観ている人が納得するレースをして勝つこと』にこだわる気持ちを成長させてきた。これは野次が選手を育てる、の一例だけどね。深く掘れば、まだまだいっぱいある。競輪愛から発せられる罵声まで規制されるなら、それは違うと思うって話がしたいのよ。
お客さんの声は選手にちゃんと届いている。おもしろい野次も数え切れない。発走前に「慎太郎! 〇〇は事故点たまってるから、スタートけん制ないぞ! 後ろから攻めろ!」なんてのもあって。走るオレらより詳しいんかい!って思うこともしばしば(笑)。容姿だったりプライベートなことだったりの『誹謗中傷』と『愛のあるレースに関する野次』を一括りにはできないでしょ。
これからもオレはお客さんの声を聞きたい。“ただ勝てばいい競輪”ってどうなんだ? 観てるお客さんは楽しめているか? 自分の理想とする追込選手になれているか? という問いかけは選手である以上続けていくし、45のこれからの1年間も懸命に取り組んでいく。みなさん、オレの走りで気になったことがあれば、いつでも好きに声を届けてくれよ! あと笑える面白いやつももっとくれ!
さて、お客さんへの感謝の気持ちも伝えたし、愛のある罵声も大歓迎! も伝えたし、そろそろ筆を置くつもりだったけど、45になったオレのことを最後に綴っておくかな。現時点の思いと意気込みを。良い機会だしね。
最近のオレのテーマでもあるんだけど、オレはもうオレ自身のためだけになんて走ってない。厳密にいうとオレ自身のために走ってるんだけど、『自分が勝つ姿』を応援してくれている人たちに見てもらいたい、喜んでもらいたいってのがすべてになってる。家族もそうだし、仲間もそう。ファンのみなさんもそう。自分を支えてくれる人たちにGIを獲る瞬間を見せたい。次の競輪祭も優勝だけを狙う。競輪祭で優勝して、自分を奮い立たせてくれる人たちと一緒にグランプリへ乗り込みたい。
「GIを獲る」って言葉をあと何年本気で言えるんだ? あと何年チャンスがある? 勝負できる身体でいられるのはあと何年? って自問自答の毎日だ。そのたびに時間はあまり残されていないことを実感する。気持ちは全然思春期なんだけどね(笑)。いつも言っているように『限界なんて気のせい』だし、まだまだオレは強くなれる。自分に可能性しか感じていない。でもケガの痛みが抜けるスピードも遅けりゃ、風邪っぽくなるとなかなか治らないし、回復速度は落ちてる。コントロールしがたいことってあるんだよな。身体はとくに。
オレなんか才能もなく走ってきた人間だから、がむしゃらに練習するだけだった。でもこれからの1年間はしっかりと自分の身体を理解して、分析して、取り組まねばならない。練習をすればするだけ強くなれるってもんでもなく、やればやるほどマイナスになるかもしれないなんて思いながら、ニューバージョンの佐藤慎太郎を研ぎ澄ましていくしかない。
そんなことを考えながら小倉・競輪祭が目前に迫ってきている。最高峰のGIレースを制する姿を大切な人に見せること。悠長に構えている時間も年齢というハードルの高さを計ってる時間もねえ。これを胸に刻みまくって、今年最後のGI競輪祭にいってくるぜ。よっしゃ!
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。