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伝説ヤマコウ 炎のレース展望

【ヤマコウ特別コラム】現代競輪に於いて大切なもの…度重なるルール改正の問題点

2021/09/20 (月) 12:00 28

 岐阜競輪場で10年ぶりに開催されたビッグ競輪「第37回共同通信社杯」決勝メンバーが出揃いました。

 よく目を凝らすとそこには…。そうです、今回は拳矢が決勝に乗ったので特別コラムとしてお送りいたします。

決勝に息子・拳矢氏がのったため、今回は予想ではなく特別コラムでお届け!(撮影:島尻譲)

 今回のテーマは『現代競輪に於いて大切なもの』というタイトルで考えてみたいと思います。

 共同通信社杯は103期から点数上位25人が選抜されるという特色があります。それが「若手の登竜門」と言われる所以です。しかし、推薦枠で若手が出場しても駒として使い捨てされるのが実情です。若手選手が伸び悩む原因はどこにあるのでしょうか? 私は、度重なるルール改正が今の土壌を生んでいると思います。

ルール改正の歴史

 約25年前、落車事故を減らすために事故点制度が導入されました。走行注意0.2点、重大走行注意1点、失格3点が競走得点から減点されました。この効果は絶大で、一気に横の動きが制限され追い込み選手冬の時代が始まります。

 そして、スタート牽制を失くす為、徐々に誘導タイムが上がります。私が引退した10年ほど前は、1レース5周競走で約3分かかったのが今は2分40秒台です。

 誘導タイムが上がるにつれ、今度は大ギヤで楽に回そうとする選手が現れます。それが、山崎芳仁(88期・福島)です。それまで平均3.57倍だったギヤ比が最大4.58倍まで進みます。しかし、今度は大ギヤ化による追突落車(通称うっかり落車)が多発したためギヤの規制(最大3.92倍)を行いました。

 その結果、うっかり落車は減ったもののスタート牽制は減らなかったので誘導タイムを上げ残り2周(400バンク)以前に誘導を交わしたり、差し込んだりする選手にあっせん停止を含む重罪を科す事になりました。

 こうして見ると、その時々のルール改正は「臭いものには蓋をしろ」方式で、抜本的な改革にはつながっていないことが分かります。抜本的な部分とは「車券の発売時間を短くするレース再発走を無くし、車券が台無しになる落車を防ごう」です。

 自転車は2輪走行なので、交通事故がなくならないように落車をゼロにすることは難しいと思います。ただ、再発走を無くすのは簡単です。

 強い選手(1番点数を持っている選手=1番車)は牽制があったら誘導員を追いかけるシステムを作ればいいだけの話です。点数を持っている選手はいい位置が取れる代わりに牽制があったら誘導員を追いかける義務がある。これならファンも推理しやすいのではないでしょうか? そして、誘導タイムを下げることで後ろ攻めをし易くし、レースが単純化されて若手の活躍の場が増えるでしょう。今のレースは大ギヤ化が進んで一発を狙う選手が多発しています。

先行とは? 番手とは?

 今節、46レース中31レース単騎の選手がいました。ライン戦が魅力の競輪で、これでは本末転倒です。横の捌きより縦に踏めることが重要視されて先行する選手が番手捲りをされて損をするシステムになっています。「先輩のために後輩が先行する。これが競輪だ!」というのなら新規のファンは付いてこれないと思います。

 私たちの時代は「先行してくれたなら最低限番手の仕事(ブロックや先行選手を残す事)はしますよ」という気概でレースに挑んでいました。若手も先輩が付くたびに発進では、先行に対するモチベーションが上がるとは思えません。

3日目準決勝10R。1着に山口拳矢、2着に平原康多、3着に新山響平がついた。(撮影:島尻譲)

 準決勝10R、新山響平が先行態勢に入って、嘉永泰斗(113期・熊本)-北津留翼(90期・福岡)-山田庸平(94期・佐賀)がかましに来た時、佐藤慎太郎(78期・福島)が横に動いて九州勢を分断し新山を迎え入れました。

 これが番手の仕事であり、慎太郎のおかげで新山は決勝に乗ることができました。慎太郎は決勝に乗れませんでしたが新山は「守ってくれるから今度も先行しよう」という気持ちになったと思います。

 慎太郎が得たものは大きかったと思います。若手も馬鹿ではないので、番手の仕事をする選手とそうでない選手がつく時はレースを変えているように思います。縦足も大事ですが、番手を回る選手は仕事(横)もできないと前の選手は動きません。

 縦足の価値観だけが一人歩きして、横をおざなりにする選手は長い目で見て損をしていると思います。若手選手も、中団外並走をする選手を捌く技量がないとルールが変わらない限り強くなるのは難しいと思います。これから大切なのは横の動きだと断言できます。

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山口幸二

Yamaguchi Kouji

岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。

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