2025/07/01 (火) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は久留米競輪場で開催されている中野カップレースの決勝レース展望です。
中野浩一さんの現役時の功績を称えるべく、ホームバンクだった久留米競輪場で開催されているのが【中野カップレース】です。
現役時は中野さんと幾度となく対戦してきましたが、残り1周で動き出してからのバックからの猛烈な捲りは、分かっていても止められなかったです。
中野さんは世界選手権でのプロスプリント競技で10連覇を達成しています。この実績が物語るように、スプリンターとしての実績は超一流であり、現役の選手でも中野さんになぞらえることはできません。
現在の競輪は脇本選手や新山選手、そして犬伏選手と、2周近くもがいて行ける選手が活躍を見せています。もし、こういったメンバーを相手に、全盛期の中野さんがレースに出ていたのならば、どんな走りをしていたのだろうかと考えてしまいます。
中野さんの後輩にあたる地元選手を含めて、九州地区は準決勝には12名が進んできました。ただ、決勝に勝ち上がってきたのが、北津留選手だけとなったのは残念です。
その北津留選手のカマシ先行を、ゴール前で追い込んで見せたのが、今大会唯一のSS班である郡司選手です。格的には負けられない大会となっていますが、不利な展開となった準決勝でも、しっかりと2着に入ったあたりはさすがです。
他に勝ち上がってきた7名の中では、太田選手の出来の良さが抜群です。その太田選手とラインを組んで、ゴール前差し切って見せた南選手も、タテ脚とヨコの強さを両方備えた走りを見せているだけに、目標不在の決勝でも注目の存在と言えます。
決勝の並びは①郡司選手-⑤和田真久留選手の神奈川ライン。⑧太田選手-②取鳥選手-⑦松本選手の中四国ライン。③南選手-④三谷選手の近畿ライン。そして⑥北津留選手の後ろには、学年的に同級生で、過去にもラインを組んだことのある⑨和田圭選手が付けました。
実質、太田選手の先行一車となったメンバー構成だけに、他の選手も太田選手の位置取りや仕掛けるタイミングを見るレースになってきそうです。
車番の通りに郡司選手が前を取っていったのならば、その後ろが中四国ライン。6番手、7番手は近畿ラインとなります。混成ラインの北津留選手は8番手から前を抑えにかかりますが、その時、目標の無い近畿ラインもその後ろについていくはずです。
ここで一気に先行態勢へと入るのが、太田選手だと見ています。その時にすんなりと番手を回っていけるようならば、取鳥選手には願っても無い展開となります。
取鳥選手も自力型であり、先行した際には長くいい脚を使えるだけに、太田選手の仕掛けにもついていけるはずです。
ただ、取鳥選手は横の動きが得意ではないだけに、少しでも離れてしまった時には、南選手か郡司選手に太田選手の番手を狙われる可能性もあります。
太田選手も一度戦闘態勢に入ってしまったのならば、後ろが混戦になっていたとしても、自分のレースをするだけであり、その時には逃げ切りも考えられます。
印としては◎②取鳥選手、〇⑧太田選手、△①郡司選手、×③南選手に打ちます。完全優勝を狙う北津留選手ですが、準決勝のようなカマシ捲りがハマる展開とならなければ、優勝は難しいと言えます。
それならば、中四国ラインの3番手を固めている松本選手、もしくは取鳥選手の番手を奪った、2車のラインと太田選手の組み合わせで狙った方が、結果として高配当をもたらすことになるでしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。