2025/05/25 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は青森競輪場で開催されている「全プロ記念競輪」のスーパープロピストレーサー賞展望です。
【全プロ記念競輪】の開催前日に、平原選手の現役引退が発表されました。
今年に入ってからは怪我や、度重なる落車の影響もあって、思うようなレースはできていませんでしたが、それでもSS班に在籍中の引退はとても驚きました。
ただ、その引き際は潔かったというのか、引退の理由の中に、「平原康多という商品をお見せするのは無理」とのコメントも目にしました。
競輪選手として最上級の評価であるSS班での引退は、その価値や評価を平原選手が誰よりも真摯に考えていたからだと思います。だからこそSS班に在籍したままに、引退を決めた姿はあっぱれだと思いました。
平原選手は引退後に、競輪に関わる仕事をしていきたいとも話していました。
現役時代から同地区の仲間だけでなく、他の地区の選手たちにも目を配ってきた平原選手ならば、その心理も良く分かっているはずです。解説者としても分かりやすく、競輪の魅力を伝えてくれることでしょう。
今後は競輪場において、また違った形で会う機会もあるかと思いますが、「お疲れ様」と声をかけてあげたいですね。
【全プロ記念競輪】に出場している選手たちからも、平原選手の引退を惜しむ言葉が聞かれていました。
特に関東地区の選手にとっては、神山さんに続く中心選手の引退となりました。それだけに今後は自分たちが2人に変わって、関東地区を盛り立てていくとの気持ちも生まれているはずです。
その中でも関東地区のエースと言えるのが、SS班の眞杉選手です。万能なレースぶりは、全盛期の平原選手を彷彿とさせています。【全プロ記念競輪】でも、今年の日本選手権競輪を制した吉田選手と共に、スーパープロピストレーサー賞へ名を連ねてきました。
そのスーパープロピストレーサー賞では、武藤選手と共に関東地区で3車でのライン(⑨眞杉選手-②吉田選手-④武藤選手)を形成しています。
ただ、その関東地区に匹敵するほどの勢いがあるのが、スーパープロピストレーサー賞に3名が勝ち上がってきた近畿地区です。
その並びは⑦寺崎選手-⑤脇本選手-①古性選手。そこに中部-近畿の繋がりで4番車には⑧浅井選手が入りました。混成ラインとなったのが③清水選手-⑥松谷選手となります。
自力を出せる選手が揃った近畿ラインの後ろを、浅井選手が固めたのは、関東ラインにとっては脅威と言えます。
しかも古性選手が1番車に入っただけに、スタートを取ってしまえば、前受けをした寺崎選手の突っ張り先行が濃厚となってきます。
車番的に8番手となっていそうな清水選手が抑えにかかりますが、寺崎選手は突っ張り切るでしょう。あとはどこから脇本選手が番手発進をしていくかになります。
脇本選手の優秀戦での走りは圧巻でした。前で新山選手と郡司選手がやり合って、捲りにはもってこいの展開だったとは言えども、番手を回っていた浅井選手が付いて行けない程のスピードで、上がりのタイムは10秒9を記録しています。
ここでも寺崎選手のスピードを受ける形で仕掛けていきそうです。早めに動き出したとしても、交わせるのはその後ろにいる古性選手だけとなるので、2人の前後が3連単の本線と言えるでしょう。
ただ、清水選手を突っ張り切った寺崎選手が、少しでも流していくようだと、眞杉選手の強襲に合う恐れがあります。
ここで脇本選手の番手捲りのタイミングが遅れるようだと、捲りきった眞杉選手の番手から、吉田選手が抜け出しての優勝も見えてきます。
印としては◎⑤脇本選手、〇①古性選手、△②吉田選手、×⑨眞杉選手に打ちます。清水選手と松谷選手は展開的に苦しい車券圏内の一方で、3着候補としては関東ラインの3番手にいる武藤選手をあげておきます。
26日から始まる全プロ(全日本プロ選手権自転車競技大会)では、普段の競輪とは違い、競技に臨む選手たちの姿を目にできます。
自分も現役時はケイリン種目だけでなく、学生時代に参加していた中長距離の競技に参加していました。こうした競技で優秀な成績を残すためには、高価な競技用の自転車も必要となってきます。
そこまで選手たちが力を入れるのも、この大会で優勝するか優秀な成績を残すと【寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント】の出場権を獲得できるという、選考大会ともなっているからです。
ただ、普段の競輪とは違って、全プロはどこか和気藹々とした大会ともなっています。個人的には「全プロ」の前日に、同じ地区の選手たちと、その土地ごとのご飯を食べに行くのも楽しみの1つでした。
日曜日までは競輪選手としてのプライドをかけた戦いで、月曜日からは競技選手として、少しでもタイムを縮めていく戦いが始まります。その表情の違いも感じ取りながら、「全プロ」にも注目してください。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。