アプリ限定 2025/03/15 (土) 12:00 13
今年デビューする競輪選手候補生の第127回生(男子)と第128回生(女子)の卒業式が7日、伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。当サイトでは競輪選手候補生の卒業を記念してルーキーたちの横顔を特集シリーズで更新中。Vol.6となる今回は、在所成績1位の“絶対エース”酒井亜樹のインタビューをお届けする。(取材:3月4日卒業記念レースにて/構成:netkeirin編集部)
養成所入りする前からナショナルチーム強化指定選手Bに抜擢され、超エリートとして注目を集めていた酒井亜樹。現役S級選手の酒井拳蔵は兄であり、(拳蔵の妻である)義姉はガールズケイリン110期の先輩・土屋珠里である。小学生の頃よりBMXレースに打ち込み、2021年には全日本選手権で優勝。2023年にはトラック競技に転向し、すぐさま頭角を現した。養成所では第1回、第2回、第3回の記録会で3連続ゴールデンキャップを獲得。第3回記録に至っては500mTTで35秒93のタイムを出して養成所新記録を樹立した。128回生在所1位の逸材が見据える将来とは。
ーー養成所卒業後もナショナルチームの活動はそのまま続けていきますか?
はい、ナショナルチームで自転車競技を続けていきます。自転車競技もガールズケイリンも一生懸命がんばります。
ーーそうなるとガールズケイリンの出走本数は少なくなりますか?
ナショナルチームのスケジュールもありますし、大きな国際大会に自分が選んでもらい出場できるのかもまだわからないので何とも言えないです。もしも大会に自分が出場できるとして、その時はガールズケイリンのあっせん調整はあると思います。まだ詳細はわからないですね。
ーー競技と競輪の二刀流は大変だと思いますが、どちらに比重を置いていますか?
両方を一生懸命にやりたい、という気持ちです。自転車競技を走る時は自転車競技、ガールズケイリンを走る時はガールズケイリン、どちらも集中してやっていきたいです。どちらかに比重を、とはまったく考えていないです。
ーー2月には「アジア選手権トラック2025」に出場し、女子チームスプリントで銅メダルを獲得しました。酒井選手は第1走を努めていますが、スターターとしての特性はどのように培ったのでしょうか?BMXの経験ですか?
BMXとトラック競技は機材もまったく違うので別物は別物なのですが、チームスプリントの第1走の身体の使い方にはBMXで培った経験が応用できる部分があります。BMXを走っていると割とスターターに向きの感覚があるかもしれません。またチームスプリントの第1走だけでなく、機材の形状などは違っても長く自転車に触れていることに変わりはないので、いろいろと活用できることはありますね。
ーーチームスプリントのチームメイトでもある仲澤春香選手は昨年デビューと期も近く、同い年ですし、自転車競技をスタートしたタイミングも同時期です。酒井選手にとってどのような存在なのでしょうか?
私はナショナルチームで活動していて、仲澤さんが養成所のHPDにいたので、その頃から接点はありました。脚質は正反対で、私は一瞬で速度を上げる感じのダッシュを得意としているタイプなんですけど、仲澤さんは長くずっと踏み上げて行けるタイプです。このあたりは一緒に練習をしていても、羨ましいと思っていて。それもあって仲澤さんに向けるイメージとしては「羨ましい存在」ですね。チームスプリントでは同じチームとして戦うので、その脚質の違いが強みになると思っています。
ーーこれまでのキャリアを考えてもBMXで日本一になり、トラック転向後も大きな舞台で活躍しメダルも獲得しています。養成所ではゴールデンキャップ3連発で在所成績1位、500では新記録も樹立しました。これ以上ない実績を持ってデビューを迎えると思いますが、プレッシャーや自信などがあれば教えてください。
特にありません。
ーー積み上げてきたキャリアから精神的なアドバンテージを感じたりはしないのでしょうか?
はい。まったく感じません(笑)。とにかく今もまだまだ強くなりたいですし、いつもチャレンジャーとして走っているので、実績とかはあんまり関係ないというか。良い結果が出た時とかは「うれしい」って感じるんですけど、1日か2日で完全に忘れちゃうんです。自転車に取り組んでからずっと「結果が出て嬉しい」と「嬉しさを忘れてチャレンジャーに戻る」を繰り返している感覚があります。
ーーいやはや意外でした。養成所生活はどのような意識で取り組んでいましたか?
養成所にいるあいだは脚をつけることを意識していました。競走訓練では3回に1回くらいは先行しようとか、捲りも遅いタイミングにならないようにバックを取るようにしようとか、考えを持って臨みました。工夫しながら長い距離に対応していけるように過ごせたかなと思います。
ーー話は変わりますが、ナショナルチームの先輩・太田りゆ選手が当サイトでコラムを連載していますが、酒井選手も何度か登場しています。仲が良いですよね。
はい、良くしてもらっています。りゆさんにはトラック競技へ転向した時点からお世話になっていて、競技をイチから教えてもらった感覚がありますね。本当に感謝しています。あと、遠征だったり合宿だったりの時ってりゆさんと同部屋だったんですけど、よくコラムを書いている姿を見ていました(笑)。
ーーそんな裏話が(笑)。さて、ほかにもパーソナルな質問をさせてください。映画が好きとお聞きしました。どんな映画を観ますか?
いろいろなジャンルを観るので何とも言えないです。このあいだは「ゴジラ」を観ました。でも恋愛映画が一番多いかなと思います。
ーー座右の銘はありますか?
座右の銘は「ひとつを極める」です。私の“ひとつ”は自転車です。小学生の時から自分の生活の中心には必ず自転車がありますし、これからの生活も自転車を中心に置いて、極められるように行動していきたいです。あと座右の銘ではないんですが、「大丈夫」という言葉がとても好きです。
ーー色々お話を聞かせていただきありがとうございました。最後にデビューに向けての意気込みと目標を教えてください。
ありがとうございました。自転車競技者としての目標はナショナルチームに入っている以上はオリンピックに出場したい、経験したいという目標を持っています。ガールズケイリン選手としては長期的な目で見ていて、G1を優勝できるような、グランプリを走れるようなガールズケイリンを代表するような選手になれるように頑張りたいです。
ここまで輝かしい実績を積み上げている酒井だが、「嬉しいこともすぐに忘れて挑戦者に戻る、その繰り返しです」という言葉通り、一切の驕りはない様子。そもそも大きいことを言わない性格で、終始ストイックなまでに自分のことを「挑戦者」としていた。レースの振り返りを尋ねても意気込みを尋ねても、言葉に入れる力は一定の調子で保たれており、終始柔らかく自然体。
座右の銘は「ひとつを極める」と教えてくれたが、感情を揺らさずひたすら自分の道に集中する人物像がそこにあった。酒井亜樹が五輪の舞台で、はたまたグランプリの舞台で“ひとつを極める”その瞬間を今から心待ちにしている。
■卒業記念インタビュー公開スケジュール
・3月10日(月)12時00分 北岡マリア
・3月11日(火)12時00分 椎名俊介
・3月12日(水)12時00分 北津留千羽
・3月13日(木)12時00分 岩原健馬
・3月14日(金)12時00分 半田水晶
・3月15日(土)12時00分 酒井亜樹
・3月16日(日)12時00分 “銀河系軍団”127回生・128回生データ考察特集
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします