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「サトミナにとっては一番イヤな展開に」高木真備が語るガールズグランプリ7人の走り、そして2025年期待の選手は?

2025/01/21 (火) 18:00 30

あけましておめでとうございます。本年も元ガールズケイリン選手・高木真備さんのコラムをよろしくお願いいたします。新年一発目となる今回は昨年末に行われたガールズグランプリを真備さんが徹底分析。またグランプリの振り返りや2025年の注目選手も挙げてもらいました。

高木真備(撮影:北山宏一)

石井寛子の嗅覚はさすが! 児玉碧衣は勝ちにいく走りをした

ーー真備さん、今年もよろしくお願いいたします。

 みなさま、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

ーーでは早速ですが、昨年末のガールズグランプリについてうかがいたいと思います。優勝したのは石井寛子選手でした。真備さんから見てどんなレースでしたか。

 年上の選手もいるので私が言うのはおこがましいかなとも思ったのですが…。7人全員の選手にすごいなと思う点があったと強く感じました。1人1人の良かった点を挙げていってもいいですか。

ーーぜひお願いします。

ガールズグランプリ2025を見事制覇した石井寛子(写真提供:チャリ・ロト)

 まず優勝した寛子さん。初手から誰の後ろを狙っていたのかはわかりませんが、(坂口)楓華がカマすかもしれないから、その一発にかけたのは感じました。動く可能性がある選手は他にもサトミナ(佐藤水菜)や碧衣ちゃん(児玉碧衣)、真生ちゃん(尾方真生)の番手もある中、楓華の後ろを選んだ。その嗅覚はさすがだと思いました。あとは「勝ちます」より「出場できて感謝です」というコメントを何度もおっしゃっていて、例年とは少し違うコメントだなと個人的に感じていました。最終的にはいろいろな要素が合わさっての優勝だったのかなと思います。

 碧衣ちゃんですが、最近の走りやコメントを見る限り本調子ではなかったのかなって思います。そういう時は何もしないよりかは「思い切って行こう」って考えることもあると思ったので、碧衣ちゃんが大逃げをする展開もあるのかなって予想していました。ですが碧衣ちゃんは得意のまくりで勝負しました。“良い走り”ではなく“勝ちにいく走り”をしっかりしていたように感じたので、そこは個人的に嬉しかったです。

 たかちゃん(石井貴子)は一番得意な戦法のマーク戦で、無駄な動きなく優勝を狙いにいったと思います。ラインのないガールズでは、初手でどんなに位置を狙いに行っても、誰の後ろになるかは選手自身もわかりません。結果的に今回は着に絡めませんでしたが、持ち味を生かして勝ちにいったレースに見えましたし、やり切ったレースだったのかなって思いました。

 そしてサトミナです。前を取ったのはけん制気味になったようにも見えましたし、本人がコメントでも言っていたように、いつもと違う走りに挑戦できたのかなって思います。ただ他の6人がすごくいい走りをしたから、結果的には準優勝だったのかなと感じました。でもきっと、今年はさらに強くなってグランプリの舞台に帰ってくると思います。

4番車(青)の坂口楓華はカマしたタイミングがベストだった(写真提供:チャリ・ロト)

 楓華は、勇気をもってカマしに行ったというのはもちろんすごいことなんですけど、それ以上に、カマしたタイミングがベストだったなと思いました。もうワンテンポ早い仕掛けだったら、サトミナがホーム線付近で番手か3番手に飛びついて、すぐに脚をためることができていた気がします。ただ、今回はちょうど1センターくらいでサトミナが飛びついていたので。あのタイミングでは脚がたまる前に出ていかないといけなくなるので、サトミナにとっては一番イヤな展開になったのかなって。逆にもう少し遅めのカマシだったらサトミナに踏まれて出させてもらえなかったかも。なので楓華がカマした位置はベストだったと思います。

 尾崎(睦)さんは自力も追い込みも何でもできる自在選手だと思うんですけど、グランプリに関しては位置取りに集中していたんだろうなと感じました。まくりも追い込みもできるって迷ってしまうと、変に動いて相手を引き出してしまったりすることもあると思うんです。でも尾崎さんは自分の勝てる位置をキープしていましたし、結果は確定板まででしたけど、勝ちにいく気持ちがすごく見えたので良かったなと思いました。

動けないというのは勝つためにした判断の失敗でもある(撮影:北山宏一)

 (尾方)真生ちゃんは、今回“本気で獲りにいった”と思うんです。その前の年は「先行したい」っていう気持ちの方が大きかったのかなって感じたんですけど、今回は違うなって。本気で獲りにいったからこそ、動きたいところで動けなかったという新しい壁に出合ったのかなって思いました。「動けなくて悔しかった」という真生ちゃんのコメントを読んだんですけど、動けばいいっていう問題ではないと私は思います。動けないというのは、一見何もしていないようですけど、勝つためにした判断の失敗でもあると思うんです。動くことを目標にするのではなく、「勝つための先行」、「勝つためのまくり」を磨いていければ、この先もっと強くなるのかなと思いました。

ーー真備さんならではの視点ですね。

 優勝は1人なので今年勝ったのは寛子さんでしたが、7人全員、それぞれの走りはすごく良かったなって思いました。

「本番で試さないと成功できない」成功までの失敗は必要なこと

ーーでは「KEIRINグランプリ」についてもうかがいたいと思います。真備さんは本命が古性優作選手、対抗が清水裕友選手でしたよね。的中おめでとうございます。

 ありがとうございます。netkeirinの読者の方からもたくさんメッセージをいただきました!(笑)。当たって嬉しかったのはもちろんですが、読者の方にも貢献できていたのなら、なお嬉しく思います。

ーーレースは北井佑季選手を脇本雄太選手が叩く展開でした。

一瞬の判断ミスをしてしまった北井佑季選手の2025年の走りに注目(撮影:北山宏一)

 個人的には北井選手は経験の差が出てしまったのかなって思いました。先行したい気持ちはあったはずなんですけど、絶対に流しちゃいけないポイントで一瞬の判断ミスをしてしまったのかな、って。逆にそこを見逃さなかった脇本選手はオリンピアンでグランプリ優勝実績もあるし、こういう舞台を何度も何度も経験しているので。今回のグランプリは大きい舞台で何回も連係している脇本選手と古性選手がレースを支配していたように思います。北井選手は今回が初出場でしたが、2回目、3回目と出場を重ねていけば、もっと落ち着いて、今度は自分がレースを支配するような今回とは違った走りができるんじゃないかな、と期待しています。北井選手が今年1年、どんな走りをしていくのか、今年もグランプリに出場できるのか、注目したいと思っています。

ーーその北井選手ですが、新年一発目の立川記念で失格をしてしまい、ほろ苦いスタートとなりました。

 師匠が高木隆弘さんなので練習では「ヨコ」もやっていると思います。私は男子のレースを走ったことがないので、動きの面での経験談は語れませんが、ガールズでも男子でも言えることは「本番で試さないと成功できない」ということなのかなと。そして成功するまでの過程で失敗というのはどうしても起こってしまうとも思います。ファンの車券が無駄になるのはダメなことですし、失格してしまった事実は変わりません。北井選手に対してファンから厳しい声が多く上がっているのも目にしています。私も車券を買うようになってわかったことも多々あります。でもやってしまった失敗は、レースでしか返せないと思うので、さらに進化して、いつか優勝という形でのファンに返すところを見たいなと思っていますし、その日がくるまで応援したいです。

新しい風を吹かせてくれる可能性があるのは仲澤春香!

ーー男子では北井選手に注目ということですが、ガールズで今年の活躍が楽しみな選手はいますか。

近いうちにGIに出場できる可能性を秘めているスーパールーキーの仲澤春香選手(撮影:北山宏一)

 新しい風を吹かせてくれる可能性があるのは仲澤春香選手かなと思っています。ガールズケイリンの先輩たちに揉まれたり、ナショナルチームで世界と戦っていくことで、さらなる飛躍を遂げるのではないでしょうか。また仲澤選手のような若い選手がグランプリメンバーに入っていくとガールズケイリン全体のレベルアップにもつながっていくのかなって感じます。あと、伊藤優里選手は対談でご一緒したこともあって注目しているのですが、最近は師匠の浅井康太選手とすごくいい練習ができているみたいですね。対談したころは「悩んでいるのかな」って感じましたが、今は師匠と練習ができて、楽しく走れているように見えます。レーススタイル的にも長い目で見ていきたい選手だと思うのですが、近いうちにGIに出場できる可能性を秘めていると思いますし、期待していきたいと思います。

動物の力すごいなと改めて感じた

今年も動物の力を借りて多くの方を笑顔に!(撮影:北山宏一)

ーー最後は真備さんご自身について聞かせてください。年末年始はなにか出来事などありましたか。

 施設の仕事をしている時にちょっと嬉しいことがあったんです。大晦日は施設の夜勤でした。外出するのがあまり好きではなくて初詣も一度も行ったことがない入居者の方がいるんですけど、その方に「ペット用の御守りがあるみたいだから買ってきてよ」っておつかいを頼む感じでお願いしたら、最初は「イヤだぁ」って言っていたんですけど、結局1人で初詣に出かけて買ってきてくれました。「今年は去年よりも良い一年にしたい」と言っていたので、それで頑張ってくれたみたいです。それがすごく嬉しかったのと、動物の力はすごいなと改めて感じました。

ーー心温まるお正月を迎えられたのですね。

 はい。今年も動物の力を借りて多くの方を笑顔にできればいいなと思っていますし、動物たちも幸せにしてあげたいです。今年のわんにゃんフェスティバルは1月26日の松阪記念最終日からスタートします。いろいろな活動を引き続き行っていくつもりですので、改めてみなさま、今年も1年間よろしくお願いいたします!



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高木真備

Takagi Makibi

元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。

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