アプリ限定 2024/12/31 (火) 12:00 31
静岡競輪場の大阪・関西万博協賛「KEIRINグランプリ2024(GP)」「ガールズグランプリ2024(GP)」「ヤンググランプリ2024(GII)」に寺内大吉記念杯(FI)が12月28〜30日に開催された。2024年が、終わった。2回目のグランプリ制覇を果たした古性優作(33歳・大阪=100期)の年間獲得賞金額は3億8千万円を超えた。その数字がふさわしい人物だ。
とにかくまず28日の「ヤンググランプリ2024」ーー。
勝負所で前に前に、と攻め上げた太田海也(25歳・岡山=121期)がボルテージを上げると、呼応したように中野慎詞(25歳・岩手=121期)が攻め上げて。逃げる太田の後ろに入った中野が残り半周から仕掛けてサイドバイサイド。
意地。戦うことしか、ない。シンジとカイヤの生き様が燃えたレースだった。
戦うことでしか自分を証明できない、という口の中が血の味しかないバトル。纐纈洸翔(22歳・愛知=121期)が優勝したわけだが、こちらもドラマ。そのコース取りのドラマ性は師匠・鰐渕正利(54歳・愛知=65期)と、10年前に岸和田でヤンググランプリを勝った兄弟子・近藤龍徳(33歳・愛知=101期)の笑顔を彷彿させた。
29日の「ガールズグランプリ2024」は石井寛子(38歳・東京=104期)が制した。ヒロコは、現人神となった。「自分の力はゼロ。応援してくれる人たちが作ってくれているだけ」。人間の世界から、飛び立っているようなことを話していた。
自分が勝てるとしたらファンの力ーー。
正直、力関係を考えれば、ヒロコの優勝可能性は、大きくはなかったと思う。しかし、それを成し遂げた。支えてくれる人たちが作りあげた優勝があった。
競輪の究極地点を、ヒロコは見せてくれた。『自分』だけじゃない。目がくらむような時間が過ぎていく。人間がなしうる、作りあげる、美しい世界が広がっていく。
2024年は、終わる。「KEIRINグランプリ2024」年の打鐘の音とともに、その一年は終わる。今年は、脇本雄太(35歳・福井=94期)が踏み上げた時に終わったと言っていいだろう。グランプリを支配したのは脇本と古性の2人。
2人とも“輪史最強”を謳われる存在になっているが、容易にそこにたどり着いたわけではない。この美しい連係。レースそのものは単調に見えるかもしれないが。脇本の仕掛けと、番手に古性がいる圧倒的な迫力が、すべてを支配していた。
せめてもの抵抗で近畿ワンツーを許さなかった清水裕友(30歳・山口=105期)の2着の意味については、清水がこれから示していくと思う。2025年。ヒロトが何を見せるか…が今回のグランプリの意味をまた重くする。動き自体は少なかったわけだが、ヒロトの戦いは人間臭かった。
結果を残せなかった他の6人についても、そうだ。苦しみしか味わわなかった男達が、キバをむく。打鐘の音を遠くで聴きながら、今年も一年、いろんなものを競輪が与えてくれたと、しみじみ感じた。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。