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白熱のKEIRINグランプリを終えて2024年が幕を閉じ、新年を迎えた競輪界。2025年のガールズケイリンはどうなる? 期待の注目選手は!? 日ごろ選手を間近で取材する敏腕競輪記者3名が熱く語る(文中敬称略)。(取材日:2024年12月6日)
デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) 2025年もガールズケイリンは佐藤水菜の一強は揺るがないと思いますね。
日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) うまいし、長い距離を踏めるし、スピードもあるし、心臓も強い。
東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) サトミナはさらにレベルアップすると思いますよ。本人が「世界には自分が及ばない選手が何人もいる」と言っていますから。
松井 国際大会メインのスケジュールになるから、GIに全部出てくるとは限らないよね。
松本 出られるGIは限られると思います。
松井 今年は太田りゆが結構やりそう。競輪祭で唯一サトミナをヒヤリとさせたのが太田だったし。
前田 競輪祭での、前受けからの突っぱり先行には覚悟を感じましたね。
松井 もしあれが男子のようなライン戦だったら、太田はサトミナに勝てていたと思うよ。
前田 元ナショナルチームの太田と梅川風子がいよいよガールズケイリンに本格復帰。彼女たちは、ガールズに新風を吹き込む役割があります。
松本 太田は養成所時代からナショナルチームにいて、ずっと伊豆を拠点に活動してきました。去年の夏にパリ五輪に出場して、秋からは自分で練習環境を整えたりスケジューリングをしたり。今年は今まで走れなかった開催にも行きますからね。中2〜3日で走ったりもするだろうし、モーニングからミッドナイトまで参加すると思います。
松井 太田りゆの第2章が楽しみだよね。
前田 あの勝負根性を、ガールズケイリンで見せて欲しい。ビジュアルが目立つからお客さんも呼べますし。
松本 梅川風子は、ガールズケイリンで戦って、ナショナルに参加して、また戻ってきたケースなので、すぐに対応できるんじゃないかな。デビューしたときは、児玉碧衣をやっつけて大者食いの印象が強かった。競輪祭で勝ったり大舞台にも強いので、GIを照準にしたら獲れると思います。
前田 太田と2人、バキバキなところを見たいです。
松本 賞金レースも太田りゆがリードしていきそうですが、児玉碧衣はどうでしょう?
松井 児玉は、去年の後半立て直しきれなかった。彼女もいろんなものを手に入れてきたから、ここから「打倒サトミナ」だけをモチベーションに、もう一度強くなれるかな。姉弟子の小林優香はやる気だよね。12月の静岡で柳原真緒に圧勝して、脚はかなり戻してきてるし、復活してくると思うよ。
松井 ガールズケイリンは、追い込みや位置で戦うタイプの選手は、これから難しくなるだろうね。食らいついて食らいついて、2着でまとめている人は、やっぱり1着を量産する人には賞金で敵わない。
松本 決勝2着が多いマーク型や追い込み型の選手は、グランプリの権利を獲ることが厳しくなりますからね。
松井 そうなんだよね。
松本 そのあたりの選手は、もう勝つしかない。ガールズケイリンはオール単騎でタテ脚メインのレースだから。
前田 男子の話題でも触れていますけど、追い込み型選手が受難なのは、ガールズケイリンも同じかもしれないですね。
松本 今年のグランプリは平塚競輪場で開催されます。なので、僕は地元の尾崎睦に注目したいですね。
前田 グランプリ出場は高いハードルになるかもしれないけど、尾崎を応援したいですね。
松本 また、ひとつ大きな変化として、今年からガールズケイリンでGI戦が4つ行われます。
松井 そうするとグランプリ出場権は、GI覇者の枠が4つ、賞金上位の枠が3つになるのかな。
松本 秋に世界選手権があって、例年通り今年も世界選手権の金メダルがグランプリの選考に入るようなら、金メダリストはグランプリに出場できる可能性があります。そうなると、賞金枠は2つしか残りませんね。
前田 能力はまだ未知数ですが、今は養成所の候補生で来年デビュー予定の酒井亜樹に注目したいです。彼女が世界選手権で金メダルを獲らないとは言い切れない。大阪の酒井拳蔵の妹なんですよ。
松本 4つのGI戦は、まず4月に岐阜で「オールガールズクラシック」。6月に岸和田で「パールカップ」、8月に宇都宮で「女子オールスター競輪」。そして11月に小倉で「競輪祭女子王座戦」が行われます。
前田 宇都宮の500バンクは石井寛子が大得意。
松井 石井は2022年の宇都宮のガールズケイリンコレクションで尾方真生を差して勝ったのが印象に残っているな。
松本 オールスターは2023年までコレクション(ドリームレース、アルテミス賞)として争われた。2024年は男子オールスターの前半3日間に組み込まれて、勝ち上がりのトーナメントで行われた。2025年からは女子だけの開催になるし、楽しみですね。
前田 出場選手は42人ですよね。
松本 そうだね。ファン投票からはドリームレースを含めて20人選出されるのかな。その他に競走得点の選抜枠がある。出場選手の選抜方法は、年々よりよいものに変わっていくと思うけど、僕は42人全員をファン投票で選んでもいいんじゃないかと思うんです。オールスターだから出場できる選手もいるでしょうし。
松井 ファンがメンバーを選べるのは、オールスターだけだからね。
前田 宇都宮なら荒牧聖未。
松本 栃木の代表でずっと頑張っている選手だもんね。
前田 2012年デビューだから、キャリアは13年目ぐらいになる。地元のGIを走ってもらいたい。
松本 荒牧は自己アピールがうまい選手ではないけど、レースは堅実。オールスターではファン投票でドリームレースに入れるといいね。
松井 やっぱり地元は特別だろうしね。
松本 「GIがホームバンクで開催されるなら出場したい」っていう選手の意識の高まりは、普段の取材でも強く感じます。7人単発レースのガールズケイリンコレクションに出るのは厳しくても、3日間のトーナメントになれば出場枠が広がります。「私でも頑張れば出られるんじゃないか」って思えますから。
前田 松本さんが「ガールズのGIを作れ」と強く主張し続けてきた功績じゃないですか(笑)!
松本 僕のことはいいから(笑)。
松井 とにかく、GI戦が女子のレベルアップにつながることは間違いないだろうね。
前田 2025年、ブレイクが期待されるガールズ選手は誰ですか?
松本 126期の仲澤春香でしょう。去年はデビューしてから競輪祭女子王座戦の出場権利に届くところまで来たよね。もし競輪祭に出られていたら、サトミナとの初対戦を見たかったな。
前田 ナショナルチームにも入って、将来が楽しみな逸材です。
松井 彼女って、何回でも踏めちゃうんだよね。ナショナルチームの選手って、1回行って、強いときはそのままブッ千切る。でも、ちょっと妨害されたり一度ひるんだりしてバックを踏むと、割と淡泊な戦いになってしまう傾向がある。男子も含めてそんなイメージがあるけど、彼女は違うんだよ。
松本 しぶといですよね。
松井 「3コーナーの外で浮かされちゃった、もうダメだ」っていう状況でも、もう1回4コーナーから踏んで突き抜けてくる。女子では、ちょっと見たことないよね。
松本 いい意味での諦めの悪さというか、根性型の選手ですね。2028年のロス五輪に軸足を置いた場合は、国内のレースを走る機会が少なくなってしまうのかな。そうなると、基本はGIで見ることになると思うけど。
松井 今年サトミナと対戦するとしたら、GIの決勝だよね。話題になるよ。
松本 仲澤はすでに坂口楓華や梅川風子といったガールズの看板レーサーをやっつけているので、来年はもう1つ上のランクの選手たちをどう倒していくか。
松井 もうその上って太田りゆとサトミナくらい?
前田 児玉碧衣とまだ戦ってないですね。
松本 あとはテクニックで走る石井寛子とか。石井に真後ろに付かれたときに、仲澤は押し切れるのかどうか。
松井 仲澤はボート競技出身なんだよね。
松本 はい。ボート出身者は男子は森山智徳や太田海也がいて、ガールズケイリンでは林真奈美が先駆者ですね。
前田 仲澤は何回か取材しているけど、天然の明るさというか、ユニークさがあるんですよね。
松本 そうなんだ。
前田 ちょっと古いタイプの、昭和のお笑いみたいなポーズを取ったりして。レース以外にも掘り下げていくと、もっと魅力を発見できると思います。
松本 キャラクターの部分も知ってもらえたら、お客さんにとって推したい選手になるよね。これから自然と注目度が上がっていくでしょう。
前田 松本さんが仲澤について原稿を書きに行く(笑)。
松井 124期の熊谷芽緯も注目したいね。
前田 競輪祭女子王座戦での頑張りは、若手に勇気を与えたんじゃないでしょうか。
松本 レースを盛り上げたのは彼女だったと思います。熊谷は1年かけてGIレースの出走権を獲るところから始まったから。
前田 先行であれだけインパクトある走りができる。
松本 レースもブレないしね。
松井 どんどん強くなって化けそうな感じがするよね。
前田 見た目は全然スポーツ選手に見えないんだけど。
松本 キャラクターが柔らかいからね。
松井 ガールズってトップクラスじゃなくても、すごいテクニシャンが結構いるんだよね。東京の石井貴子とか、中嶋里美とか。例えば先行なら、ペース配分がうまくて4コーナーからぐぐっと踏み直して逃げ切ったり。熊谷も、そういうことが割とできるタイプ。先行の緩急を操ってレースを支配できる選手は珍しい。あのスタイルは貴重だと思う。
松本 今年、熊谷は先行で行けるところまで行って欲しいです。
前田 やっぱりガールズケイリンは、ヨコの競りがない分、先行選手に華があることが一番。結果以上のものを伝えられるのが、ガールズケイリンの先行だと思うんです。120期の刈込奈那も、126期の伊藤優里もそれに挑んでいる。その姿をファンは見ているんですよね。
松本 122期は畠山ひすい、124期は熊谷芽緯、126期は伊藤優里。各期に1人ずつぐらい、「逃げて捲られ逃げて捲られ」をしている選手がいる。彼女たちが捲られなくなって、4コーナーから追い込まれるぐらいになって、今度はゴール前でちょっと差されるぐらいになって。そんなふうに経験を積んでいくと、あるとき急に「あれ、逃げ切っちゃったよ」となる。逃げた選手が強くなっていく姿は、ファンも応援しがいがあると思うんですよね。
松井 ラインがないガールズケイリンだから、逃げるのって厳しいけど、そういう一本筋の通ったレースをする選手が増えたら、ガールズケイリンはもっと面白くなっていくよね。
松本 126期の伊藤は、逃げ続けられるメンタルもありますよね。
前田 先行にもいろんなパターンや技術があって。ドーンと踏んでいく以外のことも学んでいけば、どんどん強くなると思いますよ。加瀬加奈子や奥井迪みたいな偉人が、まだ逃げ回っているんだし。
松本 逃げ回っていると言うより、逃げまくっている(笑)。
前田 先行選手はヘコたれてしまう成績になりがちだけど、ヘコたれずに挑み続けて欲しい。
松井 引退した高木真備なんて、最初の頃は逃げて捲られてボロボロになってたよね。いつも検車場で倒れてたイメージ。
松本 それが、だんだん踏める距離が伸びていって。
前田 最後はグランプリを勝つまでになりましたからね。新人選手たちは、諦めずに逃げて戦って強くなって欲しいです。
netkeirin取材スタッフ
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