2024/11/23 (土) 11:00 6
GI開催特別コラム「山田裕仁の一発逆転!波乱注意報」。KEIRINグランプリを三度制した帝王・山田裕仁が、開催前半〜中盤までの選手の調子をチェックし、展開から"買えるヨーロッパ(468)"を紹介。元選手ならではの視点から、狙い目の2レースをお届けします。▶山田裕仁の見解と買い目はこちら
ヨーロッパ(468)とは?
競輪では各レースにおける「能力的にやや見劣る選手」「競走得点の低い選手」が、4番、6番、8番に入ることが多いことから、ひとくくりにしてこのように呼ばれています。とはいえ、展開やデキ次第では上位への食い込みが十分に可能。その場合には高配当も期待できます。そんなヨーロッパの中から、とくに好走&激走が期待できそうな選手と推奨理由について解説します。
【予想レース①】
小倉4R 競輪祭(GI)S級選抜
①中本匠栄(97期=熊本・37歳)
②福島武士(96期=香川・39歳)
③和田圭(92期=宮城・38歳)
④阿竹智史(90期=徳島・42歳)
⑤佐々木眞也(117期=神奈川・30歳)
⑥酒井雄多(109期=福島・28歳)
⑦園田匠(87期=福岡・43歳)
⑧山賀雅仁(87期=千葉・42歳)
⑨嘉永泰斗(113期=熊本・26歳)
【初手・並び予想】
←⑨①⑦(九州)④②(四国)⑤⑧(南関東)⑥③(北日本)
【注目のヨーロッパ】
④阿竹智史
⑧山賀雅仁
準決勝デイの高配当狙い、まずは第4レースの選抜戦から。四分戦となったここは、九州ラインの先頭である⑨嘉永泰と、番手を回る①中本匠から売れそうだ。ここまで6着、5着、4着と冴えない結果が続く⑨嘉永泰だが、地元の⑦園田匠が3番手につくのもあって、気持ちの入った走りをみせてくれる--と考える人が多そう。しかし、相手関係もいくぶん楽にはなるとはいえ、そうそう順当には決まらないと思われる。
理由のひとつは、単純に⑨嘉永泰のデキがいまひとつであるということ。調子がいい時期には手のつけられないほどの強さをみせる選手で、前に走った平塚F1では準優勝しているものの、本当にいい頃と比べるとまだまだ。⑥酒井雄も主導権争いに加わってくるはずで、その動きにデキのいい⑤佐々木眞も乗ってくるならば、展開的にも楽ではない。その仕掛けは、おのずと早くなりそうだ。
この流れで絶好の展開をモノにできそうなのが、番手に②福島武がつく④阿竹智である。車番に恵まれたことで、ここは初手で九州勢の直後4番手につけて、仕掛けるタイミングを待つレースができる。前が主導権を争ってもがき合う展開にでもなればしめたもので、勝負どころで抜けられるコースを探し、最短コースを通って突っ込んでくる。とはいえ、④阿竹智は1着よりも2〜3着で狙ったほうがよさそう。3連単は「①⑤⑧⑨→④」から流すフォーカスが面白い。
⑨嘉永泰が突っ張り、⑥酒井雄が無理せずに引く展開だと、そこで⑤佐々木眞が一気にカマシてくる可能性もありそうだ。調子がいい⑤佐々木眞のダッシュは強烈で、⑨嘉永泰を叩いて出切れてしまうと、今度は⑤佐々木眞の番手を回る⑧山賀雅が絶好の展開に。ここが差しての⑧→⑤は、スジ決着でも悪くない配当になるはず。⑧→①④といったスジ違いからの3連単ならば、さらなる高配当も望める。
【予想レース②】
小倉10R 競輪祭(GI)S級準決勝
①荒井崇博(82期=長崎・46歳)
②新山響平(107期=青森・31歳)
③脇本雄太(94期=福井・35歳)
④坂井洋(115期=栃木・30歳)
⑤浅井康太(90期=三重・40歳)
⑥山田庸平(94期=佐賀・37歳)
⑦窓場千加頼(100期=京都・33歳)
⑧永澤剛(91期=青森・39歳)
⑨佐々木悠葵(115期=群馬・29歳)
【初手・並び予想】
←②⑧(北日本)①(単騎)⑨④(関東)⑦③⑤(中近)⑥(単騎)
【注目のヨーロッパ】
④坂井洋
⑥山田庸平
⑧永澤剛
競輪祭の準決勝は、全レースが大混戦。なかでも難解なのがこの第10レースで、ラインが3つに単騎が2名という、いかにも波乱含みの一戦となった。九州勢の①荒井崇と⑥山田庸が連係を選ばなかったことで、展開の幅が広がってさらに難しくなったといえる。以下は通常の予想とは異なる、「ヨーロッパ絡みで高配当が出るならば」という視点からのものとなるので、その点はくれぐれもご了承いただきたい。
人気の中心は、⑦窓場千が先頭を任された中部近畿ライン。③脇本雄が番手で3番手を⑤浅井康が固めるのだから、総合力の高さは言うまでもない。しかし、準決勝まで勝ち上がってきたとはいえ、⑦窓場千のデキについては疑問符がつく。宇都宮・共同通信社杯(GII)以降は3つのシリーズを病気欠場しており、競輪祭でのここまでの走りについても、内容がいいとは感じないのだ。
それとは対照的にデキがいいのが、前受けから突っ張りそうな②新山響や、初手中団から巧みに立ち回る⑨佐々木悠。3車という“数の利"を生かすために、中近勢はどこかで北日本勢を乗り越えて「出切る」必要があるが、いまの②新山響を斬るのは容易ではない。それがわかっている⑦窓場千は、②新山響が突っ張って前を主張した場合、無理せず①荒井崇の後ろあたりに降りるケースもありそうだ。
←②⑧(北日本)①(単騎)⑦③⑤(中近)⑨④(関東)⑥(単騎)
←②⑧(北日本)①(単騎)⑥(単騎)⑦③⑤(中近)⑨④(関東)
この場合に考えられるのは、上記のような隊列。ここで、後方に置かれるわけにはいかないーーと、関東ライン先頭の⑨佐々木悠がすかさず動く。単騎の⑥山田庸が関東勢の後ろにいる場合は、これに連動。3車で一気に前を叩きにいくはずだ。当然ながら②新山響も譲らないが、⑦窓場千を突っ張った直後だけに楽ではない。②新山響と⑨佐々木悠が前で踏み合うカタチとなって、勝負どころにもつれ込む。
こうなると厳しいのが後方に置かれる中近勢で、番手の③脇本雄が自力に切り替えたとしても、果たして間に合うかどうか。また、前で踏み合っている②新山響と⑨佐々木悠も楽ではないので、それぞれの番手である④坂井洋と⑧永澤剛のほうに展開が向きそうだ。なかでも注目は、動きのよさが非常に目立つ④坂井洋。⑨佐々木悠が動いてさえくれれば、あとは自力に切り替えても好勝負に持ち込める。
関東勢に⑥山田庸が連動した場合は、⑨④⑥からの④→⑥があり得る。また、②⑧①⑥からの上位食い込みも考えられるので、⑥山田庸を2〜3着で狙うというのも面白いだろう。ヨーロッパの期待度でいえば④坂井洋がもっとも高く、こちらは1着で狙いたいところ。⑧永澤剛も好調で差し目も十分にあると思うが、②新山響のデキのよさを考えると、②=⑧は折り返しのほうがよさそうである。
中近ライン3車の評価を大幅に割り引けるので、どのヨーロッパから入っても配当妙味は文句なし。個人的には、④坂井洋の1着から流す3連単にもっとも食指が動かされる。3連単の買い目を雑に出すならば「④→②⑥⑧⑨→①②③⑥⑧⑨(20点)」あたりで、あとは直前のオッズ次第。波乱決着を前提に投網を投げるようなイメージで、ぜひ超大物を仕留めたいものだ。
山田裕仁
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校第61期卒。KEIRINグランプリ97年、2002年、2003年を制覇するなど、競輪界を代表する選手として圧倒的な存在感を示す。2002年には年間獲得賞金額2憶4434万8500円を記録し、最高記録を達成。2018年に三谷竜生選手に破られるまで、長らく最高記録を保持した。年間賞金王2回、通算成績2110戦612勝。netkeirinでは当コラムのほかに、グレードレースを総括する「山田裕仁のスゴいレース回顧」も担当。