2025/11/23 (日) 09:00 3
GI開催特別コラム「山田裕仁の一発逆転!波乱注意報」。KEIRINグランプリを三度制した帝王・山田裕仁が、開催前半〜中盤までの選手の調子をチェックし、展開から"買えるヨーロッパ(468)"を紹介。元選手ならではの視点から、狙い目の2レースをお届けします。▶山田裕仁の見解と買い目はこちら
ヨーロッパ(468)とは?
競輪では各レースにおける「能力的にやや見劣る選手」「競走得点の低い選手」が、4番、6番、8番に入ることが多いことから、ひとくくりにしてこのように呼ばれています。とはいえ、展開やデキ次第では上位への食い込みが十分に可能。その場合には高配当も期待できます。そんなヨーロッパの中から、とくに好走&激走が期待できそうな選手と推奨理由について解説します。
【予想レース①】
小倉5R 朝日新聞社杯競輪祭(GI)S級選抜
①青野将大(117期=神奈川・31歳)
②三谷竜生(101期=奈良・38歳)
③林大悟(109期=福岡・30歳)
④柳詰正宏(97期=福岡・38歳)
⑤坂井洋(115期=栃木・31歳)
⑥中本匠栄(97期=熊本・38歳)
⑦岩本俊介(94期=千葉・41歳)
⑧山本伸一(101期=奈良・42歳)
⑨雨谷一樹(96期=栃木・35歳)
【初手・並び予想】
←⑤⑨(関東)①⑦(南関東)②⑧(近畿)③④⑥(九州)
【注目のヨーロッパ】
④柳詰正宏
ここは、勝ち上がりを逃したS級S班の⑦岩本俊が、負け戦でもあり“格”から人気に推されることだろう。バック回数が抜けて多い①青野将の番手を回るのだから、なおさらだ。ただしここは、関東ライン先頭の⑤坂井洋や近畿ラインの前を任された②三谷竜など、相手も揃っている。前を任せる①青野将のデキがそこまでいいとも思えず、展開ひとつで波乱もある…というのが、個人的な見解だ。
初手で前受けを狙ってくるのは、車番に恵まれた①青野将、もしくはどちらもスタートが速い関東ラインだろう。より可能性が高いのは関東ラインで、⑤坂井洋は前受けからレースを組み立てる。車番に恵まれず後ろ攻めとなりそうなのは九州勢で、その先頭である③林大悟は、青板周回の後半から動き出すはず。先頭の⑤坂井洋は突っ張らず、赤板過ぎに③林大悟が前を斬って、先頭に立つ。
続いて②三谷竜が前を斬って、③林大悟は3番手に。次の「順番」は①青野将か⑤坂井洋だが、ここで前を斬ると「逃げたくないのに逃げる」カタチになりかねないだけに、間髪を入れず動けるかどうかは微妙なところだ。すぐに前を斬りにいかずペースが緩むならば、唯一の3車という“数の利”を生かしたい③林大悟が先に動いて、先手を奪いにいくケースが十分に考えられる。
地元の意地をみせるべく③林大悟が早めに駆ければ、その番手を回る④柳詰正に、絶好の展開が巡ってくる。そして④柳詰正は、今年8月に小倉バンクでGIIIを勝っている選手だ。二次予選で敗れて負け戦に回ったが、モチベーションの高さは失われていないはずだ。とはいえ、この展開だと早めに仕掛けた③林大悟が最後まで粘りきるのは、相手が相手だけに難しそうである。
③→④は押さえるとしてもかなり薄めで、一方通行で問題なし。ライン3番手である⑥中本匠との④→⑥や、捲ってくる南関東勢を相手に取った④=①⑦から流す買い目が、ここは本線となる。資金に余裕があるならば、②三谷竜や⑤坂井洋が1〜2着の組み合わせを押さえるのも手だが、点数が一気に増えてしまう。「④→⑥=①②③⑤⑦」や「④=①⑦-①②③⑤⑥⑦」だけで勝負したほうがよさそうな印象だ。
【予想レース②】
小倉8R 朝日新聞社杯競輪祭(GI)S級特選
①深谷知広(96期=静岡・35歳)
②武藤龍生(98期=埼玉・34歳)
③岩津裕介(87期=岡山・43歳)
④小林泰正(113期=群馬・31歳)
⑤松谷秀幸(96期=神奈川・43歳)
⑥西田優大(123期=広島・28歳)
⑦神山拓弥(91期=栃木・38歳)
⑧鈴木竜士(107期=東京・31歳)
⑨守澤太志(96期=秋田・40歳)
【初手・並び予想】
←①⑤⑨(混成)⑧②(関東)⑥③(中国)④⑦(関東)
【注目のヨーロッパ】
⑧鈴木竜士
④小林泰正
先に取りあげた第5レースと、ちょっと似ているメンバー構成。4日目の二次予選で勝ち上がりを逃した①深谷知と、その番手を回る⑤松谷秀が、圧倒的な支持を集めると予測される。車番に恵まれたことや、⑨守澤太が⑤松谷秀の後ろにつけて、唯一の3車ラインとなったのも大きい。3日目に落車したダメージが残っており、①深谷知のデキは正直よくないが、それでも負け戦ならば…と多くのファンが考えるだろう。
しかし、ここはそれなりに相手が揃っているし、賞金によるKEIRINグランプリ出場が厳しくなった①深谷知が、モチベーションの高さを維持できるかどうかも気になるところ。このメンバー構成だと、①深谷知は前受けからいったん引いての捲りで勝負してくる可能性が高いが、いまのデキやメンタルだと、捲り不発に終わるケースが大アリで、過信は禁物である。
①深谷知が捲りに構えるならば、主導権を奪う可能性が高いのは⑥西田優。初手は車番通りに並び、その後に④小林泰→⑥西田優→⑧鈴木竜の順番で前を斬ってから、⑥西田優が仕掛ける展開を予測する。いくらデキが悪いといえども、「①深谷知を後方に置く」のは1着に近づくための必要条件。積極的なレースを仕掛けそうな⑥西田優や⑧鈴木竜は、この共通認識のもとに立ち回るはずだ。
とはいえ、主導権を奪いそうな⑥西田優がこの相手関係で最後まで粘りきれるかというと、それは厳しい。展開が向くのは、その直後の3番手を狙う⑧鈴木竜や④小林泰で、別線での勝負を選んだとはいえどちらも関東勢。別線を選んだ以上はガチンコ勝負だが、それでも互いの邪魔をするような走りは仕掛けてこないだろう。とくに面白そうなのが近況好調な⑧鈴木竜で、思いきって逃げるケースもなくはない。
勝負どころを「⑥③⑧②④⑦」で回ってきて、3番手から仕掛けた⑧鈴木竜が捲りきるような決着を想定。スジの⑧=②が本線となるが、ここから流す3連単でも、悪くない配当が狙えるはずである。スジ違いの⑧=③や⑧=④から流すフォーカスであれば、組み合わせ次第ではかなりの高配当まで狙えそう。いずれにせよ、①深谷知や⑤松谷秀を「3着でしか買わない」カタチで勝負したい。
山田裕仁
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校第61期卒。KEIRINグランプリ97年、2002年、2003年を制覇するなど、競輪界を代表する選手として圧倒的な存在感を示す。2002年には年間獲得賞金額2憶4434万8500円を記録し、最高記録を達成。2018年に三谷竜生選手に破られるまで、長らく最高記録を保持した。年間賞金王2回、通算成績2110戦612勝。netkeirinでは当コラムのほかに、グレードレースを総括する「山田裕仁のスゴいレース回顧」も担当。
