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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の大勝負】「もうやるしかない、それだけ」背水の陣で今年最後のGI・競輪祭へ向かう

2024/10/31 (木) 18:00 33

松浦悠士(写真:チャリ・ロト提供)

 netkeirinをご覧のみなさん、こんにちは松浦悠士です。今回のコラムは追加で走った熊本記念と寛仁親王牌の振り返りを書きたいと思います。

デビューの地・熊本で感じたお客さんの熱、新生バンクの特徴

 熊本記念は水曜日が前検日だったんですが、僕には月曜日の昼過ぎくらいに連絡があり、迷わず受けることを決めました。レースの間隔も空いていたし、今年はケガで本数をあまり走れていなかったので、走れるなら走りたいと考えました。ですが、岐阜記念の後、落車の影響はまだまだ残っているように感じていましたし、体がひどくならないことを第一優先にした練習を重ねて、状態を戻していく日々でした。

 熊本競輪場ですが、僕にとってはデビューした場所であり初勝利したバンクです。宿舎に関しては「こんな感じだったなぁ」と懐かしくなりましたが、以前走った時とは走路もスタンドも全然違うので、そこまで昔を思い出す感じではなかったですね(笑)。ただ、お客さんのパワーがめちゃくちゃすごかったです。強い“熱”を感じました!

 さて、レースの振り返りですが初日は単騎での戦いでした。スタートを出てから、道中の雰囲気で脇本さんが突っ張りを考えているように感じて、その勘を頼りに脇本さんラインの後ろの位置を選びました。その直感通り、突っ張りに行く気配ではありましたが…。

 結果的に僕は後手になってしまい、思うようなレースはできなかったですね。要所で判断ができ、その判断に対してしっかりと動けたのは良かった点だと思います。ですが、みんなが積極的に動いてくる初日特選だけに“ただ展開を突いただけ”というレースになってしまいました。

 岐阜記念は優勝という結果は得られましたが、それは感触が良い中での優勝かといえばそうではありません。熊本の初日ではレースにおける状態面も確認したかったのですが、なかなかそうもできず…。新しい走路もややクセがあり、そのあたりも気になりました。熊本の新しい400バンクですが、コーナーは33に近い感じで、直線が長いバンクでした。慣れるまではちょっと難しいように感じましたね。

新しいバンクにつき、選手たちは走りながら特徴を捉えて攻略していく(写真:チャリ・ロト提供)

深谷さんが強かった決勝レース

 二次予選以降は太我が全部やってくれました。駆ける展開の中ではやっぱり太我はすごく強いです。準決勝も展開が向いたとはいえ、郡司君でさえも追い上げさせない強さは頼もしかったですね。諸々のコンディションが違うので単純比較はできませんが、僕自身も岐阜の時よりは踏んだ感触が良かった気もしました。

準決勝は町田太我と連係して“広島ワンツー”で観衆を沸かせた(写真:チャリ・ロト提供)

 決勝戦は最終ホームで坂井君が来ていて、そこからかなりのスピードで僕の近くまで来られたので、僕も車間を詰めていかなくてはいけない判断でした。その後に嘉永君にも対応したので、深谷さんに気付くのも遅れてしまいました。流れの中で対応するのが難しかったですね。

 太我は連日とても強かったですが、決勝に関しては二次予選や準決勝に比べて踏んでいる距離も長くなっていました。その分、最後は失速してしまいましたが、僕の目線では“明らかにタレている”という感じでもありませんでした。そのあたりの兼ね合いで、僕も終始冷静に走れていたわけではなく、勝負所の判断は難しくなっていました。

坂井洋(橙・7番車)、嘉永泰斗(黄・5番車)らのアタックをけん制して勝機を探った(写真:チャリ・ロト)

 ただ、これは深谷さんの仕掛けのタイミングが良かったという一言に尽きます。「深谷さんが強かった」としか言えないです。でも僕にとっても次走の親王牌に繋がるようなシリーズにはなったので、意識もすぐにGIへと向かわせることができました。

4角過ぎから踏み込んだが外から伸びた深谷知広にわずかに先着を許し2着となった(写真:チャリ・ロト)

改めて感じるGI戦におけるアドバンテージの重要性

 そして迎えた寛仁親王牌。身体の仕上がり的には「悪くないぞ」と思いながらシリーズに入ったのですが、最終日が終わって「今日の感じが一番良かったな…」と感じました。それを考えれば、初日から3日目までは自分が思うよりも仕上がっていなかったのかもしれません。岐阜や熊本に比べると、だいぶ上向いている感じではあったんですが…。最終日の感触が一段階良くなったことを感じて、「この状態で初日を迎えられたらな…」と思いました。

 それでは初日からレースを振り返っていこうと思います。裕友に任せた初日の理事長杯は基本的な作戦として「関東の後ろから進める」でした。裕友の目線になれば眞杉君の上を行ければ一番良かったと思いますが、追走が難しかったし、菊池君の駆け方が上手だったと思います。裕友が仕掛けにくい感じになっていましたね。

 僕は後ろの河端さんのところが絡まれていることに気付けなかったし、「余裕を持った追走をしなくては」と課題を感じたレースでした。追走の仕方や周りの見方はもう少しレベルを求めて行きたいと思います。

関東ラインの後ろでレースを進め、2着清水裕友に続き確定板を堅守した(写真:チャリ・ロト)

 それでも裕友のおかげでローズカップに進むことができました。やっぱりGIの特別レースに進めるとすごくアドバンテージになると痛感します。仮に自分の状態が万全だったとしても、予選からでは何が起こるかわからないですし、準決勝が確定していることで精神的にはかなり楽になります。今後もGIを戦う上では大きなポイントになることを心しておきたいです。

 そのローズカップですが、裕友が前に出てからのペースを体感して「ちょっと速いかな?」と思いました。それでもいつもの裕友なら、(その後に行かれたとしても)飛び付いてどうにかするので、そのイメージは持っていたんですけどね。レース後に裕友は「ホームから上がらんかった」と言っていました。

 僕が思う裕友のイメージは眞杉君が来た時くらいのタイミングで2段階くらいグーとスピードを上げていける印象です。自分も初日よりもバンクに重さを感じていたので、そのあたりが原因かなと考えました。弥彦のバンクがどうのではなく、寒い季節による重たさがあったのかなと想像しています。

“賭けて”臨んでいる分の悔しさはあった

強い雨が降る中、繰り広げられた準決勝の死闘(撮影:北山宏一)

 準決勝は犬伏君と連係し、走り的には“ドーンと一発”という感じで意思統一をしていました。でも仕掛けるタイミングや仕掛け方などは犬伏君のイメージ通りに進められていなかったように思います。仕掛けていった後、合わされながらも加速していき、前を乗り越えたと思えました。そして3コーナーを一緒に上っていきましたが、その場面は佐々木悠葵君がうまかったです。前に踏まれながらさばかれてしまったので、切り替えていくのが遅くなりました。

 そして最後に悔しかったのは“脚”ですね。古性君が切り替えて来ましたが、位置関係的には僕の方が上にいました。直線では下る勢いを使えるわけで、自分の方が有利な位置でした。それでいながら、三谷将太さんや渡部幸訓さんにも踏み負けました。正直、この辺りが現状の実力なのだと思います。寛仁親王牌に賭ける思いでシリーズを走っていたので、最後の直線で踏み負けたことは本当に悔しいし、同時に、現状の自分の弱さを感じざるを得ませんでした。

最終日の感触を大切にしていく

最終日の特別優秀で白星を挙げた(撮影:北山宏一)

 そして最終日ですが、ここでも裕友との連係でした。「負け戦で裕友と」っていうのは、もう最近では全然なかったですね。レースはスタートでいい形になりましたし、浅井さんが斬ってくれたことで僕たちに展開が向いていきました。裕友は納得していない感じでしたが、僕の中では裕友の強さを存分に感じるレースでした。僕自身も体がうまく使えるようになって好感触でしたし、少し調整したこともプラスに働きました。

 調整したポイントはハンドルの握り方とか乗る位置です。これらを少しだけ変えて試行錯誤していました。ハンドルを握る位置を1ミリとか2ミリ変えるだけでも、頭の角度や背中の角度を変えるだけでも、ハンドルの握り方を変えるだけでも感触は変化していきます。僕は特に違いを感じやすいタイプの選手でもあります。

 そういった試行錯誤を通じて、ここ最近1番の手応えを感じられたレースだったと思いますし、弥彦最終日の好感触のイメージはしっかりと頭に入れて今後も走りたいです。これを次に使えないと意味がない! 今よりもさらに体が使えるようになったり、どう乗りたいのかを追求したりする中で、また変化を必要とすると思います。ただ、最終日に感じた良いイメージは大事にしていきたいですね。

最終日に魅せた貫禄の中国ゴールデンコンビ(撮影:北山宏一)

開き直りの精神で!もうベストを尽くしてやるだけ

 残りのGIは競輪祭だけ。気持ち的に開き直っているので、特にどうこうはないです。自分がグランプリ出場から遠い位置にいることはわかっています。京王閣(※)、四日市もしっかりと走り、最後の戦いの舞台・競輪祭に向かうっていうだけです(※京王閣記念の前にコラム執筆)。もちろん何ひとつ諦めずに目指して行くだけ、というメンタルです。落車の影響はずっとありますが、日に日に良くなり影響が少なくなってきているのも事実です。

 今、ファンの方に『応援してもらっている』ということをすごく感じています。「グランプリに出て」と言ってくださる方もたくさんいらっしゃいます。本当に嬉しいことです。「グランプリに出なきゃ!」と考え過ぎた8月や9月は結果も良くなかったですし、実際の走りにも焦りが出てしまっていました。そのあたりは反省して気持ちを入れ替えています。今はいい意味で開き直れています。何が起きるかわからないのが競輪です。もうベストを尽くしてやるしかない、それだけです。

 精一杯自分にできることをやって勝負していきます。応援よろしくお願いします!

焦りも不安もなく、決戦に向けてベストを尽くすのみ(撮影:北山宏一)

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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