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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の優勝報告】獲るしかない!グランプリをあきらめる気持ちは一切なし

2024/09/30 (月) 18:00 37

岐阜記念「長良川鵜飼カップ(GIII)」を制した松浦悠士(写真提供:チャリ・ロト)

 netkeirinをご覧のみなさん、こんにちは松浦悠士です。今回のコラムは共同通信社杯と岐阜記念の振り返りを書きたいと思います。まだオールスターで落車した時の痛みがある中での競走になっていますが、岐阜記念ではなんとか優勝することができました。まだまだ万全には遠いですが、日が経つごとに落車の影響は確実に薄れてきています。今年も残り3か月。グランプリ出場はまったく諦めていません。残り2つのGIを獲るために、しっかりと準備していきたいと思います。

かなり厳しく感じた自力での戦い

 まずは共同通信社杯ですが、落車の痛みが残っている状態での参戦になりました。以前の怪我は日常生活に痛みを感じることが多く、自転車に乗るとあまり気にならないといったタイプの怪我でしたが、今回の怪我は逆でした。普段の生活は大丈夫だったんですが、自転車に乗ると痛みが気になるタイプで、乗車フォームを作るのにも痛みが出ました。それでも十分に回復傾向には思えましたし、欠場の選択はせずに走りたい気持ちを優先してシリーズ入りしました。

共同通信社杯は前検日から険しい表情をのぞかせた(撮影:北山宏一)

 一次予選と二次予選Bは自分で戦うレースでした。1走目は練習とのギャップをかなり感じましたし、レースが終わって体にダメージを受けていました。当然不安に思う結果ではありますが、ダメージと言っても悪いものばかりではなく、体に良質な刺激も入ったので、プラスマイナスで考えればプラスに働いた面もあったように思います。

 2走目に関しては誤算もありましたし、駆け方も失敗しましたね…。二次予選Bは並びが出たときに「この並びなら坂井君はカマしてこないだろう」と読んだので、自分で駆けつつ、「もしもカマして来たら飛び付こう」と考えて臨みました。いざレースではあっさり後位の中団に入られることに…。あんなにもあっさりと中団に入られるとは思っていませんでしたし、これがかなり誤算でした。

 捲りに来る想定で駆け方的には「じわじわ上げていく」イメージで踏みましたが、あまり上がらなかったのが正直なところです。振り返れば、「じわじわ」ではなく、サッとスピードを上げるべきだったと反省しています。ただ、コンディション的に実走での自力戦にかなり厳しさを感じていたので、「まあ、そうなるよな…」という思いが強かったです。

懸命に苦しいシリーズをもがくも厳しい展開を迎えた(撮影:北山宏一)

番手戦には手応えアリ

 追い込み戦だった3日目と最終日。3日目は2度目の連係となる久田君が先行してくれて1着を獲ることができました。結果としては1着ですが、踏んでいても感触が全然良くなくて、本調子にはほど遠いことを再認識することになりました。ただ、前を走る選手が仕掛けどころを逃さずに仕掛けてくれれば十分勝負になる手応えもありましたし、追走自体には余力も感じながら走れていたので、その点を把握できたことは良かったです。

 そして最終日ですが、踏んだ感触はそこまで悪くなく、3日目よりも状態が上がっていました。ただ、レースが難しかったです。初手から競りに来られたのは記憶にないくらいに久しぶりなことです。「ちゃんと競りたかった」という気持ちが一番で、競りにもならなかったのが不完全燃焼であり、ダメでした。

太田海也の番手勝負は不完全燃焼の形で流れた(撮影:北山宏一)

 外に行ったのならそのまま外で待っておくべきだったと振り返っていて、入れ替えるタイミングも遅かったと思います。ただ、外を追い上げてしまうと海也が仕掛けられなくなるので、悩みながらも引きました。そして一回引き切って追い上げて行こうというタイミングで海也が仕掛けていきました。このあたりの判断はかなり消化不良を起こしてしまい、自分に納得できない内容になってしまいました。踏んだ感触は良かっただけに、しっかり勝負したかったです。

 4走を終えて「やっぱり自力だとまだ早かった」と総括しましたが、3日目と最終日に番手戦を走れたことで、追い込み戦なら行けるという手応えは掴むことができました。その分、自力が戻せていないことも浮き彫りになったわけですが、実戦で状態確認が進むことはそれだけでプラスです。最終日が終わってから体のコンディションも良くなっていくような感覚もありましたし、岐阜記念には共同に行く前よりも戻していけている実感を持ってシリーズ入りできました。

うまくいかない時にも状況把握に努め、次への糧にしていく(撮影:北山宏一)

物足りなさを感じる中でも戦えていた

 岐阜記念は初日特選で単騎戦。状態は「もうひとつ」という感じでしたね。レースは仕掛けた坂井君にスイッチするような形でしたが、最終2コーナーで坂井君が強烈なブロックを受け、僕もその影響をもろに受けてしまいました。煽りを食らう前にスピードをもらいながら外を仕掛けるべきレースでした。

 坂井君がひとりで来たことに気づいてから追いつくまでの時間や加速感にも物足りなさを感じましたし、やっぱり早めに追いつく必要性がありますね。早めに追いつき、瓜生君が持ってくるタイミングよりも前のタイミングで仕掛けるのが理想の走りです。それに「付いてから」とか「スイッチしてから」とか、坂井君の仕掛けを待っているのも良くなかったポイントです。

 二次予選と準決勝は太我との連係でした。二次予選はやりやすい形でレースをさせてもらったし、太我の強さを感じることができました。ただ、準決勝は相手も考えてくるので、内に詰まる形のレースに…。太我にうまくアドバイスできなかった面もあり、その点に反省があります。

 それでも前々に耐えながら踏んでくれたので、僕の脚的にも余裕があり、事故レースにはなってしまいましたが、なんとか2着で決勝に勝ち上がることができました。レース中もレース後もケガが癒えてきている実感がありましたし、「時間が経てば経つほど良くなるんだな」と気持ちは明るくなりました。

ケガが治癒に向かっている実感は表情にも(写真提供:チャリ・ロト)

ホッとしたけど“まだまだ”

 決勝はプラン的には神奈川勢の3番手を狙っていました。「村田君はカマして来るだろうな」と思っていて、レースも想定していた流れになりました。ただ、青野君が波を作ったタイミングと村田君のカマしてきたタイミングが僕の位置では結構嫌な感じでした。“カマシにしっかりスイッチして”というイメージで走っていましたが、村田君のスピードも良く、ホームでスイッチすることができなかったです。

 3コーナーが見えたときは「届かないかな」と感じました。ただバックが追い風でスピードに乗って踏むことができました。後から振り返っての話ですが、ホームで村田君にスイッチできなかったのが功を奏したというか、プラン通りにホームでスイッチできていたら、最後は深谷さんに行かれていたかもしれなかったです。結果的にあの仕掛けになったから優勝できたということもあるかもしれません。

最終的には深谷知広とのS級S班ゴール勝負となり、松浦悠士に軍配(写真提供:チャリ・ロト)

 優勝という結果にはちょっとホッとした部分はあります。でも自分の感触に向き合えば、物足りなさも感じていますし、「どうなのかな?」と首を傾げる部分がまだまだあります。早くそこを戻さないと…といった感じですね。乗車フォームもまだまだですし、痛みだってあります。ただ、岐阜記念はその点に焦りも出なかったのが大きいです。それが優勝に繋がったポイントなのかもしれません。次からも岐阜の感覚を大事にしてレースを走りたいと思います。

記者会見では安堵する様子を浮かべた(写真提供:チャリ・ロト)

現状を考えれば「もう獲るしかない!」

 グランプリのことを考えたら、現状が物足りなかろうが、ベストを尽くしていくしかありません。『休んで来年から』という考えは僕には1ミリもないです。なので、グランプリに出るには残る2つのGI「寛仁親王牌」か「競輪祭」のどちらかを獲るしかないと考えています。結局2着、3着に入ったとしても、出場を確定させるには相手次第になってしまいますからね。

 1か月前に入院しながら書いていた前回コラムの時と比べれば、治療などもできていて、状態はかなり良くなっています。完全の状態に戻すことを考えれば時間は全然足りないです。でも体を早く治してベストを尽くす! 「グランプリを確定させるためには獲るしかない」という気持ちで臨みます。精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします!

GIを獲りグランプリへ行く一心(写真提供:チャリ・ロト)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(提供:チャリ・ロト)

ーーnetkeirinのコラムで平原選手は韓国に、清水選手はアメリカに旅行したとありました。松浦選手もどこかに行かれたりするのでしょうか?

 僕は海外に行くことはないですね。国内なら毎年どこかしらには行っています。最近は各地でトークショーがあるので、旅行がてらトークショーみたいな感じもありますね。印象に残っているのは「サテライト石狩」に行った時に、札幌市内観光やエスコンフィールドに連れていっていただきました。試合は見ていなくて球場を見ただけなんですけど、あれは良かったですね。

ーー選手は宿舎でスピードチャンネルが視聴できると聞きました。自分が走るレースの解説者による展望や予想も見ますか?見られるとして、自分が立てている作戦とかぶったりして困ったりすることはないのですか?

 全部を見ているわけではありませんが、見るには見ますね。僕に本命をつけてくれてるレースなんかは解説の方の展望や作戦を聞いて「それいいじゃん!」と思うこともあります。実際のレースで展望の通りにレースを組み立てることもありますよ。困ったりすることはないですね。

 本命がついていない時なら1着を目指している僕の作戦と解説の方の予想がかぶることってないですし。それに、わざわざ負けるだろうと思われている作戦で走ることは僕はないので大丈夫です(笑)。宿舎では展望よりもダイジェストを見ますかね。部屋でスピードチャンネルが映る時はマストで見ています。展望はそこまでマストで見る感じではありません。

ーー発走前にオッズを見て、投票状況が自分の予測と大きく違うことはありますか?(人気になっていると思ったらそうでもない・人気にならないと思ったら人気集中してたなど)また、そのギャップによって負けん気が出たり、焦りが出たり、心が動くことはあるものでしょうか?

 自分の走るレースではオッズの予測は一切していないですね。他の選手のレースで「これ何倍つくんだろうな」と考えたりはしますけど、自分のレースでオッズどうこうっていうのはゼロなんですよ。でもオッズを見て1.2倍とか1.3倍とかになっているときに、「そんなに堅くないレースだよな」と思うレースはあります(笑)。あと基本的にオッズどうのこうので心が動いてレースに臨むことはないんですが、自分から売れてない時に気持ちが入るかもしれませんね。「よし、見とけよ!」みたいな気持ちが湧いてくることはあります!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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