2024/10/03 (木) 08:00 5
昨年に引き続き売り上げが伸びてきている。それに伴い選手の賞金も上がっている。こんな話を先日、とある競輪場でチャレンジのベテラン選手と語り合っていた。「オレたち、暗黒の10年を過ごし我慢してきたカイがありました!」としみじみ語ってくれた。「競輪が好きだし、この仕事しかない!」としがみついてきたとのこと。
その選手は「これだけ賞金が上がってくれたらモチベーションも上がっていますよ」と屈託のない笑顔で話してくれたが、「点数を取れなければ代謝制度に掛かってしまうし、下は下で“サバイバル”をやっているんですよ」とのことだ。その眼光はキラキラ輝き、まだまだやるぞ! と語っているように見えた。
さて、熊本競輪場といえば、かつて500バンクが“滑走路”と呼ばれるほどの長い直線を誇り、逃げ選手に幾多の悔し涙と苦杯を飲ませてきたバンクだ。それが8年の歳月を経て、400バンクに生まれ変わった。とはいえ、直線は60.3メートル。“滑走路”の名残はしっかりと残している。末脚がなければ逃げ切るのは厳しく、まくりや追い込みには絶好のバンクだ。
今回はS班の深谷知広、脇本雄太、山口拳矢に松浦悠士が追加参戦。ここに郡司浩平が加わり、優勝争いはまさに激戦必至だ。しかし、迎え撃つ地元勢も黙ってるわけがねーよ。新しくなった熊本競輪場で初の記念! 誰よりも「獲りたい」という思いは強いはず。“肥後もっこす魂”を見せつけるには絶好の舞台だ。地元の嘉永泰斗を中心に、九州勢がS班たちにどう立ち向かっていくのか、注目せざるを得ない。
妄想枠になるかは微妙だが、やっぱり注目したいのは“肥後もっこすの中の肥後もっこす”(?)の中川誠一郎だよ。地元記念となれば、否が応でもスイッチオンは間違いねーべ。全盛期こそ過ぎたかもしれねーが、まだまだ自力で戦えるだけの力を持っている。地元ならば5割増し、いや、それ以上のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。中川をサポートする若手が現れたら、さらに面白い展開になるべね。
そして、このバンクならベテラン小堺浩二にも注目だ。シャープな差し脚に混戦でまくりも飛び出し、ライン違いの波乱もあろう。さらには、上位陣と対戦になったときの谷口遼平だ。人気薄だったら狙ってみるのも面白れえし、一発逆転で高配当って存在だね。
妄想はオープニング1Rを狙ってみる。まずは並びの整理から。地元の①東矢圭吾-⑨松岡貴久に⑤坂本亮馬の九州トリオ、⑦神田龍-②小堺浩二で中部コンビ、関東は④矢野昌彦-③石川裕二、中国コンビで⑧富武大-⑥片山智晴の四分戦。初手の並びは東矢がスタートを決めて前受けから。枠なりで小堺が九州を追い、神田がこの後で矢野、富と続く(⇐①⑨⑤・⑦②・④③・⑧⑥)。
勝負どころで富が押さえ、矢野が出る。そこを神田が叩き、東矢が仕掛けて初手の順になるってわけだ。本線は東矢に乗り、差し切る松岡。東矢の残り⑨-①に坂本まで突き抜けの⑨-⑤、神田に乗り強襲する小堺との⑨-②までになるべか!
続いて妄想だが、初手の並びで富が切り、矢野が押さえ、これに神田が乗っていく展開ならどうだべ。最終ホームは(⇐④③・⑦②・⑧⑥・①⑨⑤)の形になる。そうなれば神田がまくって、差し脚シャープな小堺が差し切っての②-⑦、石川が切り替えての②-③に、富が流れ込み②-⑧。富が絡めば高配当になっちまうわけだ。
ただし、2車単だと破壊力はねーし、3連単で小堺のアタマ『②-⑦③⑧-全』で妄想〆にしとくべ。
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。