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前田睦生の感情移入

【いわき平オールスターファン投票】平原康多、児玉碧衣の1位と皿屋豊の20位に心打つ

2021/06/22 (火) 12:00 17

平原康多の物語はより複雑に熱くなっていく

みんな、もどかしい平原が好き

 8月10〜15日にいわき平競輪場で開催される「第64回オールスター競輪(GI)」のファン投票の結果が21日、発表された。男子は平原康多(39歳・埼玉=87期)が2017年以来2回目、ガールズは児玉碧衣(26歳・福岡=108期)がなんと5年連続5回目の1位に輝いた。

 東京五輪準備のため、今年の出走がなかった脇本雄太(32歳・福井=94期)も3位、新田祐大(35歳・福島=90期)も6位でドリームレースに選ばれた。1位かな…と推測していた松浦悠士(30歳・広島=98期)は2位で、平原とは299票差だった。

 昨年の平塚KEIRINグランプリで脇本と新たな物語をつくった平原。勝てなかったが、それがまた平原っぽかったのだ…。投票するファンの多くは、“選ぶ”というよりはもう、平原の名前を見てチェックしてしまう体なのだろう。

 高松宮記念杯は練習中の落車で欠場から、かわいい後輩の宿口陽一(37歳・埼玉=91期)の優勝、翌日はファン投票1位発表。いいのか悪いのか、山あり谷ありの平原が、なんとも好きなのだ。

児玉は女王としてふさわし過ぎる1位

「児玉じゃなくて、アオイと呼んで」

 児玉の1位は輝きを増す。結果を出し続けることの難しさ、そこに加えて、一つひとつのレースに対する意義がある。“ただ強いから”の投票ではない。ファンが児玉のレースに対して、当コラムのタイトルのように『感情移入』するようになった。
勝ってうれしい、負けて悔しい、でも負けてもこんな意味がある…とファンが思うようになった。

 2位は高木真備(26歳・東京=106期)。児玉の後塵(こうじん)を拝している。
いつぞや児玉が「マキビさんはフォロワーが多いから! 」とファン投票1位は難しいと嘆いていたことがある。笑っての話だが、絶対にその分は頑張って埋めないといけないと露わにしていた。

 高木も目覚ましい進歩を遂げている。現状では「1位を目指したい」と口にすることは控えていると思う。意識的に。児玉への敬意を持っているからこそ。しかし! しかしだ…。

ファンの心を突き刺せ

意味不明のポーズを取る高木真備

 児玉に立ち向かう、その姿勢にファンは視線を送る。高木だけでなく、“みんなに”だ。
一時期は小林優香(27歳・福岡=106期)が頂点にいて、そこに勝負をかけていった。ガールズケイリンが定着できたのは、そういったむき出しの闘争があったから。

 高木にはまず「来年もう一度ファン投票1位を目指します」と言葉にできるくらいの戦いを、今年のガールズドリームレースでは見せてほしい。口に出して挑戦することが、女王への本当の敬意。その高木の姿を見て、他の選手たちもやるべきことが見えてくると思う。

 また6位に選出された荒川ひかり(26歳・茨城=110期)。
昨年もガールズドリームレースに選ばれたが、直前欠場の規定で出場できなかった。開催を前にして、近隣に体調不良者が出て自分がコロナにかかっているか分からない、という事態に直面し、欠場したという。今年は昨年の分までファンのために力を出し尽くすだろう。

選手に人生を重ねるファンがいる

皿屋豊は私服だと今でも公務員に見える

 皿屋豊(38歳・三重=111期)が20位に選ばれていた。ドリーム、オリオン賞というわけではないが、重い意味を感じた。15年間、伊勢市役所で公務員として働き、安定した生活を投げうって勝負の世界に飛び込んだ。GIにも出場するようになり、戦う相手はスーパーエリートも多い。そこに立ち向かう姿にファンは感銘を受けたのだろう。

 皿屋はすでに38歳。「自分には時間がないので」と1日24時間を競輪に捧げ、歯を食いしばって頑張っている。
競輪にはいろんなファンがいるだろうが、日々、コツコツと働き、そんなに日の目を見ることもないファンもいると思う。しみじみ競輪を楽しみ、愛し、選手を見ている。

 皿屋の投票用番号を書き込んでいるファンの姿が浮かんでくる。
「皿屋、頑張れ。皿屋、オレたちのために」「わたしたちの分まで」と…。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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