2024/04/23 (火) 12:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は西武園競輪場で開催されている「ゴールド・ウイング賞予想(GIII)」の決勝レース展望です。
【ゴールド・ウイング賞】は関東で7名、その中でも地元埼玉の5名が決勝へと進んできました。
その5名の中で中心的存在と言えるのが平原選手です。腰の痛みを抱えながらのレースが続いていますが、今大会は以前に使用していたフレームに戻したのが、現状の走りとマッチしている印象を受けました。
自分も現役の頃は究極のフレームを探すかの如く、100台ほどは制作したかと思います。ただ、フレーム作りで難しいのは、その時の体調で僅かに感覚が違ってくるだけでなく、季節によっては自転車の進み具合がガラリと変わってもきます。
暑い夏は空気を切り裂いていけるような堅めのフレームを。逆に寒さで空気が重たくなる冬は、柔らかめのフレームを使ってきました。日によって寒の戻りも来るこの時期は、まだ柔らかいフレームを持って来れば良かったかなと思うこともあります。
この後には【日本選手権競輪】も控えていますが、目標とする大会を見計らって、新しいフレームで臨む選手もいます。ベストなフレーム探しは競輪選手にとって、永遠のテーマなのかもしれません。
決勝に進んできた関東の7名ですが、ここは埼玉の5名(⑧黒沢選手-④森田選手-①平原選手-⑦武藤選手-⑥一戸選手)と、準決勝でも連携した栃木の2名(③眞杉選手-⑨坂井選手)で別線となりました。混成ラインとなった②深谷選手-⑤稲川選手ですが、過去に連係した実績もあるだけに、どんな走りを見せてくれるか注目です。
ただ、1番車が平原選手であり、ラインの先頭を任された黒沢選手は、3.85倍と軽いギアを使っているだけに、踏み出しのスピードも他の選手とは違っています。すんなりと埼玉ラインがスタートを取れたのならば、ラインの長さを最大限に生かせる、突っ張り先行には願ってもない展開となります。
以下、車番通りに並んでいくようなら、6番手と7番手が深谷選手-稲川選手の混成ライン。8番手となった眞杉選手は、坂井選手と打鐘の前に黒沢選手を抑えに行きます。
ここで黒沢選手に突っ張られた場合ですが、眞杉選手はさすがに埼玉ラインに割り込むことはしないでしょう。それでも、後方まで下げてしまうと巻き返しは難しくなるので、深谷選手のところに降りているのではないかと思います。
この展開となれば、埼玉ラインの三段ロケットは発射のタイミングを計るだけとなります。今大会好調の黒沢選手はスタートからガンガン踏んでいくでしょうし、そこから森田選手が番手捲りに打って出て、ゴール前では平原選手が、その森田選手を捉えるはずです。
ただ、眞杉選手が後方から立て直す選択をした場合には、サラ脚で6番手を回っている深谷選手の捲り追い込みが脅威となります。
今回と同じように5車で結束した【東日本発祥倉茂記念杯】では、6番手から捲っていった清水選手が、数的不利を感じさせない走りで優勝しています。ただ、大宮のバンクとは違って、西武園のバンクは傾斜が無い上に直線も短く、捲りが出づらい傾向があります。
そのバンクの特徴を掴んでいるのが、地元埼玉の5名です。【東日本発祥倉茂記念杯】の二の轍は踏まない走りを見せてくれたのならば、◎平原選手を頭にして、2着に〇森田選手と△武藤選手へと流していく、3連単決着が濃厚となります。勿論、×深谷選手の捲り一発を想定した車券も購入しておくべきでしょう。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。