2024/04/03 (水) 12:00 36
川崎競輪の「開設75周年記念 桜花賞・海老澤清杯(GIII)」が4月4〜7日に行われる。S班が5人、佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)、古性優作(33歳・大阪=100期)、新山響平(30歳・青森=107期)、山口拳矢(28歳・岐阜=117期)、眞杉匠(25歳・栃木=113期)という豪華あっせんだ。
そんな5人を中心にした遠征勢を、地元の郡司浩平(33歳・神奈川=99期)が、昨年までとは違うパンツで迎え撃つ。競輪選手にとって、パンツの色は重い意味を持つ。とりわけS班の赤いパンツは価値が違う。
郡司としては2月岐阜競輪「全日本選抜競輪(GI)」で来年のS班返り咲きをすでに決めているものの、今年は赤いパンツから陥落した身。重みは痛いほど分かっている。かといってここは地元川崎だ。S班勢が背負う重責と同じものを感じ、ふさわしい戦いと結果を求めていく。黒地のパンツは、赤く燃え上がる。
父であり、師匠である郡司盛夫(引退=50期)さんのインタビュー記事に、浩平に蹴りを入れた話が書いてある。デビューを目前に控えた浩平が、グループの打ち上げの後にさらに飲みに出ようとした時だったそうだ。
インタビューの時の盛夫さんの風貌だと、穏やかで優しく見えるが、当時はまだバリバリの選手時代。迫力のある蹴りだったんじゃないか、とヒヤっとしたものだ。それだけの思いを持って、大事なデビューに控えさせようとした父、師匠とはどれほどの存在なのか。
浩平がこれまでの戦いぶりで証明していると思う。生半可な気持ちで選手になったわけじゃない。父がいたからこそ、の戦いぶりで、今の活躍を見せている。明るくて、笑顔を多く見せてくれる浩平だが、覚悟ある走り、を見つめてほしい。
北井佑季(34歳・神奈川=119期)の今年の活躍は目覚ましい。頂点へ…。Jリーガーから転向してきて、「自分には残された時間は短い」と悲壮なまでの決意で挑んでいる。律儀なもので、北井からすれば郡司は年齢でいえば一つ下。同い年の深谷知広(34歳・静岡=96期)にしても、また他の選手にしても「さん」をつけて呼ぶ。
業界の先輩、ということで当然といえば当然かもしれないが、関係性が深まれば、そこは緩くなりがちだ。だが、そこを緩めない。
まさに、覚悟。自分の立ち位置をあやふやにせず、成し遂げるところまでいかないと、何もない。今の自分は何者でもない、と思えないとできないことだ。今年、北井は新しい段階に進めるはず。「グンちゃん」。そう呼ぶ日が、呼んでいい日が必ず来る。それくらいの深まりを、2人は見せている。
神奈川の記念で、S班5人を相手に、どんな結果を残せるか。南関結束で、どれだけのドラマを作り上げられるか。今回はいない深谷がうらやむほどのものを…。
「と、ともピー、って呼んでよ…」。
2人の関係をより深めていくことが“南関時代”につながっていく。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。