バック本数40”は驚異的

　岡山の先行レーサー・野見泰要(41歳・岡山＝101期)が昨年12月〜今年3月の4ヶ月間でバック本数40という衝撃の数字にたどり着いた。バックを取るとは、残り半周の地点を先頭で通過しているということで、そのレースの主導権を握っている。風との戦いもあり、過酷なもの…。

　7車立てになり、開催参加のチャンスも増え、という状況はあっても、とてつもない数字。競輪には「先行できるのは1人」という言葉があって、どのレースでも、先行している選手への評価がある。先行したくてもできないケースも多い。9車立てで3分戦だと、基本的にラインの先頭の3人の内の1人が先行する。7車立てでは2分戦も多く、主導権は取りやすくは…なる。

　とはいえ…だ。先頭誘導員の追い抜きの時に書いたが、毎回同じ形で抑えに来てくれたり、突っ張る形を取ってくれたり…はない。どのレースも相手を、ある意味で邪魔しようといろんな手を打ってくる。風や雨、バンクコンディションもある。そうした流動的な動きの中で、バック本数を40とすることは、野見の体、気持ちの強さ、そして技術の高さを裏付けるものだ。すごい…、すさまじい。

社長だった

　競走に参加している数だけでもすごい。野見は補充も受けているので、欠場があったシリーズを支えているともいえる。特に先行タイプなので、ファンとすればレースの推理に直結する。開催運営サイドも助かっていると思う。

　鉄工所の社長だったが、競輪選手を志し、卒業記念の新人紹介の時にプロポーズした偉人というか、もはや変人(ごめんなさい)。ぶっ飛んでいる人生を送っていて、目が離せない。

　卒業記念の時の取材では「野見泰要」をそのまま音読みすると「のみたいよう」「飲みたいよう」になるので、社会人経験もあるので、これは酒好きだと思って「のみたいよう」ですよね、と聞きにいったら「ボク、のうみ、なんです」という返事だったことを思い出す。“のうみひろもと”なんです。

ガールズケイリンのかたち

　ガールズケイリンが2012年7月にスタートし、10年を越えた今、「どういうルールなの？」「枠組みなの？」という声が届いている。改めて、簡単な説明を載せたい。

　男子と違い、ラインは組まずに、個の戦いになっている。ブロックなどのヨコの動きも制限され、タテで、というのが基本だ。国際大会のルールに準拠したもので、これはついては、ガールズケイリンで戦っていれば世界につながる、という狙いも含まれている。大きく言えば『ガールズケイリンで成績を残していくことが五輪につながる』という意味だ。向き不向きもあるので、その道を選ぶかは選手の判断。

　また、ライン戦ではない、というのは、落車をしないためという狙いがある。男子の競輪はこれまでに練熟された部分があり、継承されてきたもので激しいヨコの動きが成立している。女性がいきなりこの走りに挑戦して…はリスクがある。男女の差はあまりないかもしれないが、しかし有り体に言えば、女性が大ケガをすることに対する世の中の批判、心配の目は大きい。

　加えて言えば“ラインのない競輪”がファンに普及するか、その印象を見たい狙いもあったかと思う。男子の競輪が、「ラインって何？の段階で初心者が辞める」と言われがちな部分があり、そこを考える材料として、というものだ。当方としては、言われがち、でとどまるものであり、ラインの戦いを感じ、覚え、競輪を好きになる人の方が多いと思う。

　世の常で、「ラインなどなくせ」の声は一部に残り続けるもの。しかしそれは判断材料ではないだろう。

個の戦いの中で

　そうした個の戦いの中で、ガールズケイリン選手も、先行、まくり、追い込み、マークといった戦い方を分けている。7人の構成の中で、自分がどう戦っていけるか、がある。級班が分かれていないので、実力差の大きなレース構成が多い。

　力のある選手は先行やまくりで勝負し、力で明らかに劣る選手は強くて自分で動く選手の後ろを狙うことがパターン。もしくは、先行でどこまでやれるか、と風を切ることもある。

　現在は接触も多く見られ、落車も少なくない。ガールズケイリンがこれからどうなっていくべきか、を考えながら、改善しないといけない点は早急に手をつけてほしい。

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