2024/02/19 (月) 12:00 47
2024年のGI第1弾「第39回読売新聞社杯全日本選抜競輪」は郡司浩平(33歳・神奈川=99期)が制した。4年守ったS班の座から陥落した一年のわけだが、すぐに来年のS班返り咲きを決めた。もちろん、その力は誰もが認めるもので、当然の結果といっていい。
しかし、簡単なことではない。
決勝は北井佑季(34歳・神奈川=119期)の獅子奮迅の立ち回りがあって、ともいえるが、余裕っぷりは強烈だった。清水裕友(29歳・山口=105期)がまくり切る勢いに見えたが、近くに来ても慌てていなかった。
昨年の小倉競輪「競輪祭(GI)」準決の走りで、そのレースでS班陥落が決まることにはなったものの、後悔はないはず。郡司とラインを組んでいるのなら、が今年に入ってから、郡司自身と他の選手との間でより強いものになっている。ラインのために頑張れるからこそ、ラインが生きる。率直に、素晴らしい優勝だったと思う。
競輪祭準決の走りを終え…とはいえ悔しさはあったと思う。かつて、富山記念(何年かも分からないほど前)の二次予選で逃げて沈み、敗退となった時、敢闘門から検車場に引き上げて来る通路で、見たことのないような険しい顔をしていた。
自分への悔しさ。その顔を見た大ベテランの記者が「郡司は強くなる」と断言したことも思い出される。苦しい時に頑張れるのが郡司の強さを支えていると思う。
全日本選抜準決では、松井宏佑(31歳・神奈川=113期)の番手を古性優作(33歳・大阪=100期)に奪われた。久しぶりに郡司の怖い顔があった。それもあって決勝のよりソツのない走りにつながったと思うし、またさらに進化すると感じた。笑顔が光るグンちゃんだが、本質は怒りの男だと思っている。
他人を怒ることとは違い、自分に対して怒ることができるのは、一種の能力だと思う。体の中に力をためて、それを発揮する。『自分を叱咤して』という言葉もあるように、自らに鞭を打って頑張れるかは重要だ。時には一緒になって怒って、怒りを感じて叱咤激励してくれる人もいるわけだが、本当にこういう人は大事だと思う。
今の時代、ご時世、誰かを怒るとパワハラ、嫌われる、とやらないことが正義の風潮だ。これに逆らうことを推奨するものではない。ただ、自分自身に怒れる力を備えることは、率直にいいことだと思う。
“1000の座右の銘を持つ男”と言われている筆者なので、「反省スレドモ後悔セズ」というものも持っている。1000個あるのでいつもどれかを忘れがちなのだが、郡司の姿を見て久しぶりにこの座右の銘を思い出した。
そして、この座右の銘の先には「反省も後悔もしない」という無敵格言もあるのだが、これが正しいのかは分かっていない。今度、グンちゃんに聞いてみよう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。