2021/05/13 (木) 18:00 22
前回のコラムで、“ダービー王”への気持ちの強さを改めて記した平原選手でしたが、迎えた初日は3着入線後、落車のアクシデント…。ダメージで体調悪化していくばかりでしたが、なんとか決勝へ。
そして挑んだ決勝、関東ラインは封じられる展開に。でも、あの時もし簡単に引いていたら…? 特別な大会、日本選手権競輪を振り返ります。
netkeirinをご覧の皆さん、平原康多です。今回は9日に終わった日本選手権競輪(ダービー)のことについて話します。
レースの事を書く前に、フレームについて。このダービーには、半年前に作ったフレームで臨みました。出来上がった当時はその自転車を乗りこなせる力がなかった。スピード系のフレームで重い。それを踏みこなせなかった。要するに使いこなせる体、力がなかったんです。それが急にピンときて練習で乗ったら、使いこなせるようになっていた。100%ではないけど、それに近い感覚があった。それだけ体が仕上がっていたんだと思います。
初日の特選は東京の鈴木君と連係。自分が前で戦い、打鐘(残り1周半、600m)で先行態勢に入りました。流れの中でって感じですかね。結果は3着でした。ただ、ゴールしてから小松崎君(福島)と接触して落車してしまいました。ケガは全身の擦過傷。落車当日はそれほどの痛みもなかったのですが、日に日に体調が悪くなっていきました。特に胃腸の具合が悪くて。後半3日間はご飯も食べられない状態で、ゼリーで栄養補給をしていました。それでも嘔吐したりして。おまけにまとまな睡眠も取れませんでした。そんな状態の中で決勝へ、最低限のことはできたかなと思っています。
決勝は前に眞杉君(栃木)、後ろに武藤君(埼玉)と関東3人で連係。5番手からレースを進めました。8番手の郡司君(神奈川)が眞杉君に蓋(並走)をしてきましたが、これは想定内だったんです。郡司君が自分達より後ろだったら、きっとそうしてくるだろうと。なぜなら今年1月の立川記念決勝でも郡司君は、3番手で鈴木庸君(新潟)の横で同じようなことをしましたから。並走を苦にしない鈴木君が相手でもしてくるんですから、眞杉君ならほぼそういう組み立てをしてくるだろうと。
郡司君が早く前に出れば話は別ですが、あれだけ動かないと、難しい。あそこですぐに引けば、という声も聞こえてきましたが、引いてしまったらそれこそ郡司君の思うつぼ、まくりごろになってしまいます。それに1度でも簡単に引いたりしたら、次から組み立てが難しくなるんです。相手もそれがわかるから戦いづらい面が出てきます。眞杉君が郡司君をどかせれば良かったんですが、郡司君の技術、全てにおいて上手でしたね。自力選手としての凄さ、トータルの実力を感じました。もちろん、眞杉君は先行するつもりだったし、それができなくて相当、悔しかったんじゃないですかね。
結果的に自分は6着。悔しいけど、郡司君や勝った松浦君が強かったということ。競輪は横の技術もなければ縦にも踏ませて貰えないというのが、トップクラスのレースなのかもしれないですね。
平原康多
Hirahara Kota
埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。
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