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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の2023年】苦しく厳しい1年だった「最後は勝って終わりたい」

2023/12/26 (火) 18:00 50

 みなさん、こんにちは松浦悠士です。僕は今「KEIRINグランプリ2023」を前に、しっかりと戦うための準備に励んでいます。今月のコラムは「競輪祭」を振り返りながら、2023年の総括とKEIRINグランプリへの意気込みを書きたいと思います。

競輪祭は決勝3着、松浦悠士は5走すべて確定板の活躍ぶり(撮影:北山宏一)

戦える感覚を得たシリーズ初日

 競輪祭は初日から相手も強く、どうにか3着という厳しいスタートになりました。でもレースではしっかりと動けましたし、手応えがありましたね。直線でも粘り強く踏み続けられましたし、松井君に先着させなかったあたりに、自分の状態が戻っている実感がありました。好調というか“戦える感触”を1走目で確認できたのが良かったです。競輪祭初日は誕生日だったんですが、同県の吉岡詩織がクリップバンドをプレゼントしてくれました。吉岡、ありがとう!

 2走目の一次予選2では雄吾と久々の連係でした。この連係で雄吾の成長をハッキリと体感することができ、そういう面でも嬉しいレースになりました。先頭の雄吾は仕掛け的に難しいところがあったと思います。長い距離を踏まなくてはならない展開になりましたし、スピードも上げていかなくてはならないレースでしたから。でも雄吾は気持ちの強さで良い先行をしてくれました。

 雄吾は脚質的にバチーン!とスピードを一気に上げるのが得意な選手ですが、このレースに関しては「後半に伸ばしていく感覚」で駆けていましたね。長距離を踏んで行くことに対して落ち着いていて、前半で力を入れ過ぎずの無理ない走りができていました。後ろを走っていて「雄吾は駆け方の幅が広がっているな」と頼もしく感じました。雄吾がレースを作ってくれて、自分が1着、久保田君も3着。ライン上位独占は気持ちも上がります。

レース後に呼吸を整える取鳥雄吾を労う笑顔の松浦悠士(撮影:北山宏一)

 また、このレースは面白かったこともありました。それは3着の久保田についてです。このレースの最終局面で僕自身、かなり激しい消耗を感じて苦しかったので、3番手の久保田もかなり苦しかったに違いないぞ…!と後ろを振り返り確認したところ、余裕しゃくしゃくの涼しい顔でした(笑)。「あれ?ラクなのかな?」とさえ感じさせる表情が頼もしかったですね。2走を終えて状態も申し分なく、ダイヤモンドレースに進むことができました。

“日本の競輪”という枠におさまって欲しくない選手

 3走目のダイヤモンドレースは2着でしたが、とにかく自転車が進まず、重いバンクコンディションに感じるほどでした…。でもこれは僕だけではなく、対戦相手も皆、まるでいつものパフォーマンスではなかったので、僕自身の体の状態云々ではなかったように振り返っています。

 考えられるのは新山君の強烈な踏み出しの影響です。勝負所で新山君が一気にスピードアップしたとき、後ろを走っている選手のほとんどが脚を削られてしまったと見ています。タフなレースでしたが、ハイレベルなレースで得られる学びもあったので、インプットして次に繋げていけたらと思いました。

 そして、準決勝。GIで最も失敗できないのがこの準決勝です。僕は玉野記念ぶりに海也と連係しました。「ただ自分が勝利すればいい」ではなく、海也と一緒に決勝へ勝ち上がりたかったので、レース前に自分の思いを海也に伝えました。海也はもっと自信を爆発させて欲しい選手です。「オレは日本で今一番お前が強いと思っとるし、そういう強者のレースをして欲しい」みたいな言葉をかけました。

ナショナルチームのホープ・太田海也(撮影:北山宏一)

 個人的な感情でもあるんですが、海也は世界ナンバーワンを目指している選手です。“日本の競輪”におさまって欲しくないんですよね。海也の先行の仕方を見ているとしっかりとレース全体を考えていることはよくわかります。でも、考えた結果として、“うまくまとめている”ところがあるんです。

 海也は高いポテンシャルが備わっている選手ですから「前半からタイムを出して押し切ってやる!」くらいに考えて『強引に力でねじ伏せるレース』ができる選手。ダイナミックな考え方で走ってこそ結果が出るような気がします。

 そんなやりとりをしてから入ったレースですが、海也はGI準決勝という張り詰めた舞台で迷いなく大きいレースをしてくれました。海也の走りを受けて、最終バック付近では「ワンツー決める! 次は自分が仕事する番!」と気合が入りました。僕の言葉を受け取ったことをレースで示してくれた海也の気持ちと能力に絶対に応えたく、燃えました!

 捲ってくる新山君を止めにいき、内から攻め込んでくる慎太郎さんにも当たりにいきました。「何としてもワンツー」の思いは集中力に繋がりましたし、北日本ラインとの攻防も「新山君がこう来て、慎太郎さんはこう来るはず!」と“先読み”できた感があります。視界に入ってくる前に心の準備をしながら対応することができました。海也と決められた瞬間は嬉しくて、少々大きいアクションで喜んでしまいました。

ワンツーで決勝進出を果たした中国ライン(撮影:北山宏一)

レース後インタビューでは充実の表情(撮影:北山宏一)

 そんな最高の流れで迎えた決勝ですが、僕も海也も優勝することはできませんでした。レースを振り返れば、僕らに優勝のチャンスはあったと思います。海也とは「ワンテンポだけ仕掛けが遅かった」と反省しています。GI決勝戦ともなれば勝利を意識するレベルも上がるし、一瞬だけ慎重になってしまうこともあります。それが最終的な着に繋がるんですよね。

 たらればですが、準決勝のように「自分のタイミングで迷いなく行く」が決勝でもできたのなら、海也にタイトルの可能性はあったようにも思います。結果論にはなりますが、脇本さんが仕掛けたあたりのタイミングで躊躇なく踏むことができれば、ゴール線では面白い勝負になったかも。初めてGI決勝を戦った海也が、このレースを糧にして、さらに強くなることを期待しています。

太田海也4着、松浦悠士3着で決勝を走り終えた(北山宏一)

 競輪祭は優勝こそできませんでしたが、自分の状態が戻ってきていることにも充実感がありましたし、前を走る後輩選手とラインとして機能する連係ができたように思います。将来のGI戦線に繋がるシリーズになったので、良い部分を糧にして頑張っていこうと思いました。

グランプリ前の別府記念で大反省「ご心配をおかけしました」

 競輪祭を終えて、グランプリ前に最後のシリーズとなった別府記念。今年後半は(怪我の影響で)体の調子をパーセンテージでコメントすることが多かったですが、別府は100%に近い仕上がりの良さを感じることができていました。予選、準決勝と自信を持った走りができ、グランプリを前に優勝してさらに弾みをつけたいところでした。

競輪祭からさらに調子を上げて臨んだ別府記念(北山宏一)

 ですが、最後の最後の決勝レースで大反省しなくてはならない結果に…。応援してくれるみなさん、車券を買ってくれたみなさんに心配と迷惑をかける落車棄権。本当に申し訳なかったです。自力で戦った決勝ですが、全然仕掛けられず、ラインを組んでいる選手にも迷惑をかけてしまう内容でした。

「自力」とコメントを出したのなら、しっかりと自力を出して戦う姿を見せなくてはいけないと常々思っています。でも100%のデキと考えていた状態だったのですが、「良いポジションで走っているとき」や「脚をためられる状況」でなければ、自力で戦うにはまだまだのデキでした。行くべきところで行けずレースプランを全うできませんでした。何とかしたくて活路を見出そうと必死にやったのですが、落車…。

 冷静に振り返ると自分の描いたプラン・意思とは別にレースが進んでいるのに、行き当たりばったりで無理な走りをしていたら「そりゃコケるよな」と思います。今年1年、怪我に苦しみ、落車しないことの大切さを痛感していたのに、危ない選択をしてしまいました。

 幸いなことに擦過傷で済み、すぐに思い切り練習もできています。予選、準決勝と感じた自信が帳消しになるわけではありませんが、グランプリ前のレースの締めくくりは最後の最後で大反省でした。

決勝は仕掛けたいタイミングで行けず、苦しい展開に(写真提供:チャリ・ロト)

2023年は苦しい1年だったけど、選手としての目標は高くなった

 今年1年を振り返ってみるとGIIは2つ優勝できたものの、「悔しくて苦しい1年」というのが率直な感想です。毎年ダービーで結果を出したいと考えていますが、万全の状態では出場できませんでしたし、オールスターの落車とその後の長期欠場はメンタル的にもキツかったです。

「怪我」は競輪選手をやっている以上は仕方ない部分がありますが、1年間を安定して走るためには落車や怪我に関してもっと気をつけなくては、と痛感する年でした。大抵の落車は自分にも原因があるので、それらを潰せるように背筋を伸ばしています。

 また、いざレースになると(別府記念の決勝もそうですが)「落車したくない気持ち」よりも「優勝したい」とか「3着以内に入りたい」を優先してしまうのが選手です。この点も本能的なものではありますが、一度見つめ直してみようと思っています。

 それと、今月12月に入ってからの話ですが、「この先あと10年はSSでいたい」と新しい目標を抱いています。今33歳なので、単純計算して43歳までですね。現SSの慎太郎さんがその道を走っていますし、「できる」ということを示し続けています。慎太郎さんを見ていて、「1年1年に意識を向けるのも大切と思うと同時に、遠い先を見据えて“今”を選択する意識も必要」だと考えるようになったんですよね。

怪我多き苦難の年に大目標を抱く(撮影:北山宏一)

今年の年末、最後は勝って終わりたい

 そんなことを考えながら日々は過ぎ、いよいよグランプリです。今年ラストの連載の締めは意気込みを書いて終わろうと思います。今年の対戦メンバーも本当に強い選手ばかりで、レースだって読みにくいです。昨年も単騎は3人でしたが、今年の3人はまたタイプが違いますし、どんな展開が待っているのかわかりません。でも今年は心強い味方・裕友がいます。

 昨年と比較すればメンタル面での安心感がケタ違いですし、落ち着いた中でしっかりとした準備ができています。去年は孤独の中で不安を口にしていましたが、今年は正直「レースが楽しみ」とまで言える心境です。裕友も5回目、僕も5回目の出場となり、ラインで合わせれば10度目の優勝チャンス。そろそろ獲らなくては! と気合が入っています。

 今年、自分にチャンスがないとはまったく思ってないです。年間を通して苦しい1年だった分、年末最後のレースで勝利を挙げ、笑顔で終われるように走ってきます! みなさんの熱い応援をよろしくお願いします!

中国ゴールデンコンビで年末の立川へ(撮影:北山宏一)

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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