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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士のレース回顧】“不安感と高揚感” 競輪祭へ向かう2つの気持ち

2023/11/20 (月) 18:00 37

 みなさん、こんにちは松浦悠士です。今回は玉野競輪で開催された防府記念「周防国府杯争奪戦(GIII)」を振り返りながら、現在の調子や競輪祭への意気込みについても書きたいと思います。

清水裕友の6連覇で幕を閉じた周防国府杯争奪戦、松浦悠士がシリーズを振り返る(撮影:北山宏一)

走って気がつくことの多さ

 それではシリーズ初日から順に振り返ります。防府記念前は練習でも上向きの状態でしたし、初日には新フレームを投入しました。試行錯誤する中では問題ないように思っていたのですが、レースで踏み込んだ感触が自分の求めているものではありませんでした…。使ってみないとわからないものです…。

 僕はラインの3番手で、踏み出しの時に(前が)見えにくかったこともあり、離れてしまいました。ただ、いつものフレームなら巻き返して追いつくことができたように思います。体の状態もまったく言い訳にならないというか、初日に関しては「調子いいぞ」とさえ感じていました。うまく連係できなかった原因は把握できましたし、体の状態も確認できたので、反省点と課題は持ち帰り、切り替えて2日目に臨みました。

 2日目は犬伏君がいいタイミングで仕掛けてくれて、カカリもすごく良かったです。自分のペースの範囲内で進んでいたので、僕にも余裕がありました。ですが、ゴール前で犬伏君を捉えようとしたとき、力強い踏み直しを感じました。結果は僕の1着ですが、なんとかギリギリ差せた感覚でしたね。全力で加速しなければ抜けなかったと思います。

 犬伏君とはいつも一緒に練習をしているわけではないのであくまでも想像の域ですが、練習で出している本来の力をレースでもしっかり出せるようになっているように思います。練習の強さと本番の強さが一致してきたというか。犬伏君はすでにGIでも頭角を現していますが、“競走本番”がどんどん強くなっています。初日と2日目の着はまったく違うものの、“走ることで得られる情報”の大切さを改めて感じました。

自己評価“最低”の準決勝

 前回のコラムで「シリーズが進むにつれて体へのダメージが蓄積される状態」と書きましたが、玉野3日目を迎えた時、そこまで痛みや疲労感はありませんでした。僕は玉野競輪の環境が好きで、これは過ごしやすさの影響なのかなと思いました。

バンクに隣接するホテルが宿舎になっている玉野競輪(撮影:北山宏一)

 2日目のレースで「まずまず動ける」といった手応えもあったので、3日目は「仕掛けるべきタイミングで動いていくレースをしよう」と前向きな気持ちでレースに臨みました。

 でも自己評価としては最悪のレースをしてしまいました。内容が何もない0点の走りです。地元の選手に自力を任された以上は結果がどうであれ、仕掛けないといけません。僕のした走りは後ろの選手にチャンスがない走り。レース前の気持ちと実際のレースにギャップがあり、納得できませんでした。レースは「前を取ったラインが突っ張るだろう」と考えていましたし、事前に想定していた形で進んでいたのに…。

 この準決勝は体の状態に不安がなくなってきたと思い込み、「これなら大丈夫だ」と過信していた感があります。走っている間バンクが重く、余裕がまったくなかったです。近畿ラインのカカリも良く、結局自分の行くべきタイミングで仕掛けることができませんでした。

結果3着で勝ち上がるも苦いレースになった準決勝(写真提供:チャリ・ロト)

 このレースでまだまだ本調子はほど遠いと痛感し、とてもショックを受けました。何よりも「結果がダメでも後悔のないように自分で動いていこう」というポリシーに反してしまった自分にガッカリです。裕友や雄吾も決勝に勝ち上がっていたので、最終日に向けて前を見なくてはいけない状況でしたが、反省すべきレースでした。

レース後、会見場での表情は沈んでいた(写真提供:チャリ・ロト)

それぞれの役目がある競輪のライン

 決勝のラインは中四国4車で結束しました。みんな思いがあるので、各自の気持ちを話しながら並びを決めました。番手の雄吾は競輪のことを信頼して語り合える仲ですし、期待している同地区の選手です。僕は「番手としてしっかり走って欲しい」と声をかけました。

 雄吾としてはプレッシャーだったと思いますが、日頃の姿を知っている分、頑張り切って欲しかったんですよね。僕は「デキる選手」に対してつい厳しく言ってしまうことがあるんですが、取鳥雄吾はまさにその筆頭です(笑)。雄吾は雄吾にチャンスがある位置で優勝を懸けて走るのが正解だと思いました。

番手を回った取鳥雄吾(写真提供:チャリ・ロト)

 それに6連覇の偉業が懸かっている裕友もいます。中四国ラインで結束し、それぞれにチャンスがある並びになっていたと思います。世話になっている犬伏君、番手の雄吾、6連覇の懸かる裕友。それぞれの選手との関係性が背景にあるので、僕の4番手も納得の位置でした。

 実際のレースでは高久保さんの走りが想定していなかったもので苦しくなりました。高久保さんが押さえに来たとき「2車やし、そこまで踏まんだろう」と予測しました。でも隙あらば前を叩くという覚悟を感じる踏み方でしたし、雄吾の位置で並走が続きました。これで犬伏君もハイピッチで長い距離を踏まなくてはならない状況になりましたね。でも犬伏君は譲らない強い気持ちを示してくれましたし、番手の雄吾もしっかり高久保さんに対応。それぞれの位置にいる選手が的確に自分の仕事を全うしていました。

高久保雄介(4番車)に取鳥雄吾(6番車)が応戦、激しい攻防を凌いだ(撮影:北山宏一)

 その後、雄吾はかなりキツい中で、古性君が来るタイミングで同時に出て行きました。雄吾の頑張りに応えるように裕友もブロックで応戦。僕の位置はそれぞれの役割を邪魔しないように内を締めて直線勝負に懸ける競走でした。

清水裕友(1番車)は捲ってきた古性優作(7番車)を止めに行った(撮影:北山宏一)

 でも裕友がブロックに行った時に、僕からの目線では前に踏み出したように見えて、一瞬踏み込み過ぎてしまったんですよね。もう少し踏んでしまっていたら裕友の邪魔をすることになっていました。仕事をしている裕友が前に踏んでいないのに僕が踏むことは連係している以上はあり得ません。最後までそれぞれの選手がそれぞれの位置で「ラインのために」を貫いて走れた決勝戦だったように思います。

 最終順位は僕が3着で、雄吾が2着、裕友は6連覇達成の優勝となりました。犬伏君、雄吾、裕友と僕でラインの強みを出せた結果は嬉しかったです。競輪は単騎なのか別線なのかラインなのかで勝負に行くタイミングが変わります。そのあたりの選手の動き(気持ち)は改めてお客さんにも楽しんで欲しい部分だと思いましたね。(車券推理の強力な材料にもなりますよ!)

レース後に犬伏湧也の頑張りを労った(撮影:北山宏一)

裕友、6連覇おめでとう

 地元記念6連覇なんてなかなかできることじゃありません。今までもこれからも、もうプレッシャーは裕友だけのものだろうなと思います。改めて祝福の言葉を書きたいです。裕友6連覇おめでとう! 僕は地元記念がグランプリと重なるので、連覇を狙いたくてもスケジュール的に走れないこともあります。そういう意味では裕友の偉業は本当にうらやましいです。次回7連覇とは言わず、その先もその次も。いっそのこと10連覇くらいを目指して欲しい気持ちです(笑)。

6連覇達成を喜ぶ同地区の面々(写真提供:チャリ・ロト)

 この6連覇を受けて、宮記念杯連覇中の古性君が「オレは宮記念杯を6連覇してやる」と言っていました。それなら僕だって3連覇中のサマーナイトフェスティバル6連覇を目指します!負けてられない!

競輪祭を前に抱える二種類の気持ち

 ここまで書いてきたとおり、防府記念では体の調子が悪くないと思えたり、どこかが特別痛んだりということもなく、回復傾向にはあると思います。ただ、3日目に感じたアップ時とレース時の大きなズレは気になるところです。決勝戦でも疲労の蓄積は感じていて、シリーズを戦う上で「ダメージとの付き合い方」には悩まされそうです。

 ましてや競輪祭は6日間開催(5走)の長丁場です。4日制の開催でも初日・2日目・3日目・最終日と下降線を辿る状況の中、競輪祭のプログラムには不安しかありません。特に僕は本来なら長丁場開催を得意としているところもあるので、不安のまま開催に入る現状に厳しさを感じています。

 でも最近は親王牌で崩れていることに気がついた走行フォームがだいぶ改善できました。練習する中で「上積みもありそうだな」と感じています。脚力は完全に戻らなくとも体の使い方など気になる課題は潰すことができています。

 不安感と高揚感の両方がありますが、今はやっぱり「競輪祭決勝に乗りたい」としか考えられないです。優勝争いがしたいし、同地区の仲間が一緒に勝ち上がれるなら、(自分も含めて)ラインから優勝者を出すような役割も担いたいです。とにかく決勝戦に乗ることを第一に頑張りたい一心です。精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします。

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:北山宏一)

ーーライン4車の場合の「4番手の役割」はどんなものになるでしょうか?

 セオリーはなく、ケースバイケースなので一概には言えませんが、今回の防府決勝で言えば、雄吾が出て行ったタイミングで僕は「3番手」になりますよね。そうなるとブロックなど外へ意識を持っていく役目が裕友になるので、僕は「内を締めること」が役割でした。

 でも前の選手が横に振るのか縦に踏むのかを見極めて、取っていくコースが変わります。番手だからこう、3番手だからこうみたいな大まかなセオリーはありますけど、結構ラインを組む選手の特性やレース状況で臨機応変です。

ーー賞金やタイトルには関係のないレースで「ファンのためのエキシビジョンレース」みたいなものがあったら出場しますか? それとも“ガチ”ではないレースだとやる気は起きませんか?

 プロとして走る以上、賞金は欲しいですね。でも僕自身、「おもしろい企画レース」をやって欲しいと思っている側の人間です(笑)。だからもちろん出場します。レースグレードに関係ないところで「40歳以上限定」とか「25歳以下限定」などの年齢縛りや「兄弟対決」といった血縁縛り、「地区内対抗競輪(県別の三分戦とか)」などは考えたことがあります。山口VS岡山VS広島の三分戦とか間違いなく走りたいです(笑)

ーー私は教師をしております。若い生徒たちとの付き合い方に苦労することが多いのですが、松浦選手は弟子や若い選手とどのような付き合い方をしますか? “こわい先生”ですか?

 質問者さんは学校の先生なんですね。僕は学生の頃「退屈なことを楽しくしてくれる先生」がいいなと思っていました。授業中にオンオフがあって、「学ぶ」と「楽しむ」がうまく溶け合う授業をする先生が好きでしたね。競輪選手になった今でもメニューを組むとき「苦しい練習をどうにか楽しくできないかな」みたいに考えています。

 それにしても「若い生徒たちとの付き合い方」って難しそうです。共通の話題とかあればいいんでしょうけど、先生と生徒だと世代が大きく違うし。先生はとにかく忙しいと聞くので、共通の話題を見つける時間も作れないと思いますし。大変そうですね。

 さて、僕の話ですが、人によっては“こわい先生”と思います。僕は割とすぐに厳しいことを言っちゃうんですよ。「強くなりたい!」ってやる気のある選手には特にズバッとした物言いです。たまに言い方を気をつけなくてはと反省することもあります。

 僕が言うことが正解とも限らないし、その選手にとって不正解のアドバイスを伝えてしまう可能性もゼロではありません。アドバイスをして嫌な顔をされたこともありますよ。難しいですけど、受け取るか受け取らないかは本人次第なので、何かを聞かれたら自分の言うべきことを伝えようというスタンスでいます。

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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