アプリ限定 2024/01/01 (月) 18:00 45
白熱のKEIRINグランプリを終え、激戦の2023年が幕を閉じた。新年を迎え、2024年にブレイクする選手は誰なのか!? また昨年11月の「競輪祭女子王座戦」決勝で話題となったガールズケイリンの戦術について記者たちはどう考えているのか? 日ごろ選手を間近で取材する敏腕競輪記者がホンネで激論を交わした(文中敬称略)。(取材日:2023年12月1日)
デイリースポーツ 松本直記者(以下松本) 2024年の競輪界で期待の若手、奇跡のカムバック選手、この選手が熱い、など注目選手はいますか?
東京スポーツ 前田睦生記者(以下前田) パッと名前を出すことは難しいのですが、とにかく1人は関東の誰かですね。関東は眞杉匠がいて、吉田拓矢も戻ってきて。森田優弥とか小林泰正なんかにチャンスがあるかもしれない。
松本 カムバックという意味では、吉田は即カムバックの可能性がありますよね、GIで。
日刊スポーツ 松井律記者(以下松井) (あっせん停止期間中に参加した)地区プロでめちゃくちゃ強かったらしい。
松本 佐世保記念で復帰。2月の全日本選抜からG1にも復帰できる。ただ3月のウィナーズカップは選考期間の欠場が影響して出場は厳しい。地元取手でのビッグレースだったし、本人は絶対出たかったはずですよね。
松井 そうだね。
松本 春先はFIやGIII回りになっちゃうけど、やっぱりみんなの想いは吉田拓矢に(GIを)1本獲ってもらいたい、ということ。
松井 ダービーの決勝を眞杉-ヨシタクで並んだら、5割ぐらいは獲れるんじゃないの。
松本 8割でしょ。
松井 いや、一応ワッキー(脇本雄太)も新山響平もいると思えば。
前田 でも、3番手が平原康多だったら?
松本 3番手から?
前田 いわき平ですよ。
松井 まあね。でもやっぱりカムバックということなら、吉田拓矢かなと。
前田 3人の共通見解ですね。
松井 そこに平原の再復活。それから森田優弥が苦労を乗り越え本格化する。関東はいろんな可能性があるよね。
松本 吉田はウィナーズカップに出られたらよかったんだけど。地元の取手だし。そこが舞台かなと思ったけど、失格の裁定が思ったより厳しかった。
前田 厳しかったですね。このルールは罰則と規定を変えないと、ファンが泣くだけ。選手はもちろんだけど。
松井 はっきり明文化されたルールの大切さは理解できる。だけど僕が重要だと思うのは、あのレースで多くのファンがヨシタクがどういう走りをすると予想していたのか、ということ。もしヨシタクがあのレースで行かなかったら。自分が残るような先行をして、その上を別線に行かれたりしたら。彼は任務を遂行したわけだよ、ファンも求めている走りを。だからちょっと後味は悪かったよね。ヨシタクに赤旗上がったこと、みんなわからなかったもんね。
前田 あの時の裁定は完全に正しいんですよね。でも... 競輪にそぐわない部分もあったように思います。
松井 まあとにかく、2024年は吉田拓矢の復帰に期待ということです。
松本 若手はどうですか。
松井 松井宏佑は今年ハネると思うよ。去年の「競輪祭(GI)」の悔しさったらないでしょ。その直後に、深谷知広と脇本雄太が欠場だから伊東記念を走るっていうことにも彼の成長を感じたし。そういうリーダー的な自覚にね。競輪祭の準決勝で、あれだけ郡司浩平に仕事をしてもらえる選手になった。松井には今年、1本ぐらい獲って欲しいなと思う。
松本 111期以降で、GIタイトルが手の届くところまで来ている選手ですね。あと、去年期待されていたのは嘉永泰斗。2023年の終盤は、地元の熊本記念や競輪祭などで落車が続いてしまったけど。でも、今年の夏に熊本競輪場が復活の予定ですから。
前田 熊本競輪場の再開が、ひとつの起爆剤になりますよね。
松井 でも、嘉永の後ろを固めてくれる選手が誰かっていう点が...。例えば四国だったら、犬伏湧也の後ろに付けられる選手はいるんだけど。
前田 九州じゃ、今だと荒井崇博くらいでしょうか。嘉永は、足があって、山田英明みたいに自力もある、そういう「ただの追い込みじゃない」クラスが付いて連動する、といった印象ですね。嘉永は動きが激しいし、いろんな動きをするから。
松井 お互いを生かせるパートナーが必要だよね。
前田 中本匠栄になって欲しいけど、中本も怪我があったりして。伊藤旭なんかは才能ありますよね。
松井 山田庸平は?
前田 もちろんバッチリだと思います!
松井 そういった面々が嘉永と連動してくると、九州の戦力にもっと厚みが出てくるよね。今はどうしても、嘉永1人で頑張っている印象だから。
松本 熊本競輪が復活したら、その最初のシリーズは熊本を引っ張っていく嘉永が顔として呼ばれるはず。
松井 これから熊本競輪は絶対大きいレースもやるだろうから、その時に嘉永が優勝候補の筆頭になるような選手になってくれればいいね。 他の地区に比べて、九州はまだ少し層に厚みがないように思える。
前田 脇を固める若手が松本秀之介とか伊藤旭あたり。松岡辰泰は年上で足もあるけど「じゃあ脇本・古性に挑戦」っていったら、まだちょっと足りないところがある。
松本 そして、今年のGI戦で期待されるのはやっぱり犬伏湧也ですか。
前田 そうですね。去年がブレイクだと思うと、今年は獲らないとダメぐらいの期待値ですね。
松井 逆にもう、結果を出すことが必然になってる。 あと僕がブレイクして欲しいのは、町田太我。
前田 持っているものは本当に素晴らしい。
松井 町田と取鳥雄吾の先行は大好物だから、この2人はGIの決勝に乗って欲しいな。戦法的にタイトルを獲るまでは難しいかもしれないけど、コンスタントに準決勝、決勝に乗れる選手になって欲しい。
前田 四国は松本貴治もいます。
松本 そうだね。
前田 競輪記者界では、オイシイところは全部「松本」が持っていく、というのがこの1、2年で確立されていますので(笑)。
松本 それはさあ、オチありきじゃん!
前田 松本(貴治)が競輪界の中四国で美味しいところ持って行ってもいい! 実際、全くもってその位置いるでしょ?
松本 まあね、オールスターで犬伏の後ろを回っているし。
松井 それに町田や取鳥、清水裕友の後ろだって回れるんだぜ。
前田 松本貴治はマジメな顔をしているから、オイシイところを持っていくようなキャラじゃないけれど。競輪記者界の松本は...。
松本 うるさいよ!(笑)
松本 ガールズの話題に移りましょう!
前田 去年の「競輪祭女子王座戦(GI)」は梅川風子が優勝。ガールズケイリンの原理すべてを活かして勝ち切りましたね。
松本 去年ガールズケイリンのGIが新設されて、ガールズに関しては「勝ち上がりでいい着を取った選手にいい枠を与えていきますよ」っていうルール。それを梅川がモノにしましたね。枠(車番)を活かしきった勝利かなと。
前田 そうですね。男子でもチャレンジ戦などで「枠でこうなるだろう」って決め打ちになるようなレースが発生しますけど。女子王座戦の決勝では、それを打開できなかった他の選手たちに物足りなさを感じました。
松本 吉川美穂が動いた時に、誰か一緒に連動して動いたり、何かあっても面白かったと思う。
松井 もともと男子の競輪も、ラインがなかった時代は強い自力に強い追い込みが付くことがあった。今、ガールズがそういう構図になっている。強い自力選手の後ろで併走になっていることが少なくない。
前田 そうですね。
松井 女子王座戦で言えば、1番強い佐藤水菜が1番車で、梅川が2番車に入った時点で、あの展開は予想出来たよね。で、佐藤の11秒7のまくりを梅川が11秒6で差した。他のメンバーは打つ手がなかったね。
前田 SNSを中心に「あれはどうなんだ」みたいな意見が上がっていましたけど。構成上起こりうるレースだったし、それを梅川がものにしただけ。他の選手が手を打てば、そんなレースにはならなかった。
松本 そう思います。
前田 だからSNSで騒ぎになること自体が、よくわからない。レースだけを見ると、そういう構成は普通に起こりうると思います。
松本 これは僕の考えであり希望なんですが、ガールズは戦法に対するコメントはいらないかな、と思うんですよね。やっぱり枠なりに強い人に付きたい人もいるし、遠かったら自分で動かなきゃいけないとか、枠が出てから考えることもあると思うから。レースでの自力とか自在とか、そういうコメントはいらない時期に来てるんじゃないのかなと。
松井 実際、コメントになってないコメントも多いからね。「流れ見て」ってなんだよって。「取れた位置から」とか1番車の選手が言ってると、ちょっとね。正直なところ。
松本 そういうのをなくすためにも、コメントはなしでいいんじゃないのかな、とここ数年思っています。
前田 どちらかと言うと、記者側で解決できる問題かもしれないですね。コメントって、もともと記者がファンのために有効な情報を求める中で生まれてきたものだから。
松井 たださ、もうファンもわかってるじゃん。例えば児玉碧衣がいて、自力で勝てるわけないっていう(競走得点)49点とかの選手たちは、みんな児玉の後ろを取りに行きたい、少なくとも児玉の3番手までにいたい。もしくは児玉の前で駆けてくれる人の後ろにいたいって。それしか確定板に入るチャンスはないっていう時は、誰もが1着は目指してないんだよね。だから、児玉の頭固定だとしても2、3着が誰になるかを予想するためのコメントじゃないと意味がない。
前田 はい。
松井 女子はルール上「児玉のマーク狙います」っていうコメントはできない。だけど明らかにそういうレースをしている選手はいるわけで。難しいけど、「最後に動く強い自力選手の後ろにいたい」とか、色々言いようはあると思うんだよね。その辺も、なんか「取れた位置から」とか「流れ見て」とか濁しているけど。せめて「前々」の方がまだいいよね。
前田 「流れ見て」とか「取れた位置から」っていうのは、選手間の力差がありすぎてコメントの出しようもない、ということ。そういう状況に追い込まれるようなレース構成になっていると、戦いようがないじゃないですか。それこそ松本さんが「メイウェザーと戦いなさい」って命じられた時に「頑張ります」さえ言えないでしょ。レースの戦力バランスが崩れすぎると、コメントが機能しないんですよね。
松本 女子王座戦で思ったのは、やっぱりガールズケイリンは枠がすごく重要だということ。例えばミッドナイトでは、競走得点の高い選手を1枠から入れていますけど、逆をやってみるのもアリなのかな。
松井 それは見たいね。一度、試験的に行われたのは覚えている。初日は(点数が)上から順に内枠に入って、2日目は逆になって。
松本 そうなれば、点数がない選手でも何か策を見出だせる。枠が良ければ戦い方が見つかるはずだから。ミッドナイトは競走得点の上位順に内枠に入ることが浸透しているから、逆にモーニングはミッドの逆パターンで「競走得点の低い選手から内枠に入れる」っていうのはどうでしょう? 試験的にやってみてもいいんじゃないかな。
松井 でも見る側は勝手だからさ、サトミナが強すぎちゃうと負けるところを見たくなったり、「誰か逆転しねえかな、それで穴取りたい」って思うわけだよ。「サトミナの130円じゃ、ちょっと俺の資金じゃ買えないよ」っていう時に、波乱の要素も予想できるレースにしないと。ミッドナイトで、期末になってきて代謝かかってるとか、ちょっと点数やばいっていう選手が6番車、7番車で強い人が1番車から4番車を固めてしまったら打つ手がないし、そういう選手の「取れた位置から」は仕方がないよね。
前田 男子も7車立てで「この車番でやれることはない」というレースはあるし、それが本当に競輪なの? という疑問はあります。
松井 ただ「取れた位置から」を便利な言葉として使ってる選手がいるのも確か。手の内を明かしたくないから、点数もあって1番車や2番車なのに「取れた位置から」はフェアじゃない。「前々」「なるべく前の方から」ぐらいは言って欲しいよね。
前田 ガールズケイリンの現状と改良案については、松本マネージャーを座談長として世界各国から著名人を集めて意見を伺ってはいかがでしょうか。
松本 なにそれ(笑)。
松井 力の差があって単調になりがちだからこそ「買いやすい」という点もあって。そこが大口の売り上げを支えているという現実も、ガールズケイリンの特徴なんだよね。なんでもかんでも、みんなにチャンスがあるようにしちゃうと、ファンは大きく張れなくなるよね。ギャンブルとしては。
前田 私はガールズ初期の頃から思っていたのが、競走得点50点未満などの開催を何個か作っておくべきではないか、と。そうすれば代謝で精神的に追い込まれている選手にも、戦うチャンスが生まれてくる。そんなふうに思っていたら、GIとかができたことで...。
松井 勝手に裏開催が生まれてきた。
前田 これで、自然にこなれてくるのではないかな。
松井 そういえば、ガールズに4つめのGIが新設されるね。
前田 「女子オールスター競輪」ですね。男子のオールスター競輪とは別の日程で、8月に開催されます。今年はFIIで、2025年からGIになります。
松本 25年以降は、8月は男子と女子でそれぞれGIが行われることになるんだね。女子のトップクラスの戦いがより激しくなれば、ガールズケイリンはさらに盛り上がる。
前田 同時に、ガールズの点数下位の選手たちのモチベーションが高まれば、ガールズケイリン界の未来は明るいと思います。
netkeirin取材スタッフ
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netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。