2023/10/27 (金) 12:00 56
京王閣競輪場で10月28〜31日にわたり「開設74周年記念 ゴールドカップレース(GIII)」が開催される。
関東勢が平原康多(41歳・埼玉=87期)、眞杉匠(24歳・栃木=113期)、吉田有希(22歳・茨城=119期)、そして昨年大会で物議を醸す優勝を遂げてしまった宿口陽一(39歳・埼玉=91期)に、追加参戦の坂井洋(29歳・栃木=115期)や地元東京軍団と豪華な布陣で挑む。
北日本は新田祐大(37歳・福島=90期)と佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)のSSコンビに小松崎大地(41歳・福島=99期)の名前がある。「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」の決勝…駆けて、散った。
GI決勝7回目の挑戦も実らなかった。「タイトルを獲る、と心の中に叩き込んでいる」と決意は固い。無論、まだこれからもあきらめるわけもない。決勝で一緒だった渡部幸訓(40歳・福島=89期)は「小松崎さんが勝ってくれれば」と漏らしたもの。北日本をこれだけ長く、しっかりと引っ張ってきた小松崎に、ふさわしい栄誉を…。多くの人が願っている。
自力でつかめれば一番だが、北日本の誰かが前にいて、も望まれる構成。今回は新田の番手で結果を残すことが重要。課題になっている部分だが、弥彦に置き忘れたものを、取りに行く再スタートとしてほしい。
平原は11年連続14回目のKEIRINグランプリ出場に向けて「競輪祭(GI)」を獲るのみ、となった。弥彦での少しずつながら確かな復調を見れば、可能性は大いに残している。本人以上に周りが騒ぐわけだが、いや本人は全く騒いでいないが…今回の戦いがつながるものになれば…。期待するのみだ。
その意志表示をしたいのは宿口だろう。小田原GIIIの優勝から、今回どう戦うがつながっている。昨年は「自分のラインの仕事ができなかった」。平原の内を踏む形での優勝に笑顔はなかった。
眞杉としてはグランプリに向けて、「オールスター競輪(GI)」を勝った後の再飛躍が求められる。来年はS班として、他を圧倒していかないといけない。ラインを引き込みつつ、自身の結果も重要だ。吉田に元気が戻っているので、前を任せるケースもあるだろう。ヨコも苦にしないのが眞杉の良さでもある。
最終日の3Rに123期で争われる「競輪ルーキーシリーズ2023プラス」に牧田悠生(23歳・新潟=123期)の名前がある。4回の受験失敗を経て、やっと5回目を実らせ競輪選手になった。競輪選手養成所時代は目立った成績ではない。
それでも同期の中で一番乗りの9連勝で1・2班に特別昇班を果たした。苦労を経て、この進撃。9連勝の時、小田原でのガッツポーズに込められた思いはどれほどだっただろうか。
美しく力強いガッツポーズで、当方の目にも涙がにじんできた。私にも特別な思いがある。
向日町競輪「平安賞」前のコラムで「キュウトクはある意味で私の命の恩人で」と書いた。キュウトクは山田久徳(36歳・京都=93期)。2010年8月から東スポの動画企画は始まった。選手の直撃インタビューは、何ができるか、本当にやれるのか、不安しかないものだった。
実際には選手の方々がみな協力的で、時に楽しく明るく、もちろん戦いの場としての緊張感をファンに直接伝えるものとして、自分なりに価値を感じていた。ただ、その裏ではいろんな非難があり(本当によく聞こえてきたものです)、また会社的にも収益も部分、効率の面で必要性を問われる時もあった。
一人で抱え込んでしまい、「やめてしまった方がいいのかな」「やめてしまえば、楽だ」と何度も何度も思ってきた。私が「取材状況の都合で難しいです」と答えてしまえば、なくすことができた。
そんな時に活躍を始めたキュウトクにカメラマンと一緒に直撃した時、「えっ、僕の所に来てくれたんですか。ずっと見てたんですよ、東スポのYouTube。やっと来てくれましたね」と笑ってくれた。インタビューを撮り終えて記者席に戻る時、カメラマンが「よかったな」と声をかけてくれた。
6月福井のルーキーシリーズで牧田を取材した時にも「前田さんですよね。前田さんが取材する動画とかをずっと見ていたんです。まさか今、自分が取材されているなんて」と言われ、苦しい4年間の浪人時代の話などを聞き、この仕事の大事さを改めて思い知った。
一つひとつの取材の重みをかみしめながら、生きていきたい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。
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