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前田睦生の感情移入

【平安賞】佐藤慎太郎とお坊さん、そして、あの電撃引退から1年…

2023/08/30 (水) 12:00 35

佐藤慎太郎は“競輪伝道師”

お寺帰りのシンタロウ

 8月31日〜9月3日の日程で向日町競輪場で開設73周年記念「平安賞(GIII)」が開催される。当初あっせんのあったS班の脇本雄太(34歳・福井=94期)と松浦悠士(32歳・広島=98期)が西武園競輪での落車で大ケガを負ったことで欠場。佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)が追加でS班1人の責務を担う。

 そんなシンタロウだが、スタートけん制の重注による罰則規定でいわゆる“お寺行き”からの参戦になる。暑い京都の黄檗山での修業はどうだったのか。お寺から帰って後のSNSでは、誤字を見つけると「このたわけ!」と警策を振り回していたが、修行を経て、より一層元気になっているようだ。

 もうずっと前からシンタロウには“競輪伝道師”と呼ばせていただき、いろんなことを教わってきた。今でも、競輪について、を聞く時には一番にこの人の所に行く。お寺ではお坊さんからいろんな話を聞いたのかもしれないが、現在の競輪界においてはシンタロウこそが最高の導師だ。

 私はただ昔から頭を丸めているだけの“ボウズ”だが、仕事に出始めた時、先輩記者から“大僧正”というあだ名をいただいた。恐れ多くて、他の先輩にいただいた“タコちゃん”の方が落ち着いたものだ。

 今回もこれからもシンタロウ導師からいろんな教えを請いたいと思う。

あれから1年

村上義弘さんからみんな多くのことを学んだ

 向日町記念、伝統の平安賞には何度も取材に来させてもらっている。全国の記念開催の中で、独特の緊張感を持つシリーズだ。京都勢の怖いほどの思いが、常に満ちていた。もちろんそれは“魂の人”村上義弘さん(引退=73期)がいたからだ。

 熱狂と感動と悲壮と…。ありとあらゆる情景が向日町バンクに映し出されてきた。ファンの声もひと際高い。昨年、村上さんが直前に欠場となり、そのことを聞きながらのシリーズとなった。みんなの顔、声色から何か背中の寒くなるような感じがあった。

 あの欠場の時点で、引退、を感じた仲間も多かったようだ。認めたくはないけど…。その時、は考えたくないけど…。

 最終日、決勝が終わった後に村上さんと親しい方に「元気に復帰してくれるといいですね」と、去り際に声をかけたら、その方は声が詰まり、返事がなかった。返事ができなかった様子だった。帰りの新幹線ではとにかく、何も考えない、と無になっていたことを思い出す…。

山田久徳の優勝を待とう

祝杯を上げさせてくれ!キュウトク!

 山田久徳(36歳・京都=93期)が、現在の京都を背負っている。村上博幸(44歳・京都=86期)はもうしばらく前から「京都は若手が育っていないのが…」と嘆いていたもの。山田、いやヒサノリ、いやキュウトクも若くはないが、キュウトクが京都のトップとして近畿の中でも存在感を示すことが、次の世代へのメッセージになる。

 村上さんからすれば、目に入れても痛くないキュウトクだ。平安賞を勝つことは、大きな意味を持つ恩返しになる。

 中川誠一郎(44歳・熊本=85期)も西武園から元気を取り戻しているので復活Vも見たいところだが、今回はとにかくキュウトクに期待したい。キュウトクは実はある意味で私の命の恩人で、今回ばかりはひたすら祈らせてもらいたい。

ガールズ124期の企画レース

出るか!? ベアーポーズ!

 最終日の6Rでは124期の選手による「競輪ルーキーシリーズ2023プラス」が行われる。卒業記念レースのチャンピオン・松井優佳(24歳・大阪)や、在所1位の竹野百香(21歳・三重)といった、これからのレーサーがどんな走りを見せるのか。

 本デビュー後、すぐに戦えているという印象を受けるのは松井だが、他の選手も攻める走りを見せているので、みんなこれから成長していくばかりだろう。福井のルーキーシリーズを取材した時に、優勝した熊谷芽緯(19歳・岩手)が披露してくれたのがベアーポーズ。このポーズを広めていくためにも、さらなる激熱な走りを見たい。

 また29日に最終日を行った松戸記念は、決勝で川越勇星(26歳・神奈川=111期)が果敢に主導権を握り、深谷知広(33歳・静岡=96期)が番手まくりで優勝。人間が懸命に思いをぶつける姿は、限りなく美しかった。深谷もとてもうれしかっただろうと思う。

 そして、勇星のこれからが始まったぞ!


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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