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不屈の男・金子貴志の奮闘記 〜40代の挑戦〜

【金子貴志が見たセカンドキャリア】輝く瞳で“第二の人生”歩む一丸安貴さん『やりたいこと』貫く覚悟に刺激受けた

2023/07/20 (木) 19:00 24

 netkeirinをご覧の皆さん、こんにちは。金子貴志です。連日うだるような暑さですが、お体には十分お気をつけくださいね。

一丸安貴さんの“ぐっすり堂”へ

 今回は選手のセカンドキャリアについて書いていきます。
 先日、約30年に渡る現役生活を終えた一丸安貴さんは今、一宮市に頭揉みほぐし専門店「ぐっすり堂」を開業しています。

1月に引退した一丸安貴さんが開業した「ぐっすり堂」(本人提供)

 以前、引退する前に電話をもらった時に「何かやることは決まっているんですか?」と聞くと、「頭のマッサージをする店をやってみたい」と言っていました。それが現実となりました。

 開業するにあたり、一丸さんはホームページの作成からポスティングまで“自分でやること”にこだわったのだそうです。周囲の人からは「外注したら?」というアドバイスもあったそうですが、自ら調べて手作りすることを選びました。

 チラシはすでに7000枚ほど自分の足で歩いて配ったそうです。それもマーケティングの一環と考えていて、面白いのだと話していました。楽をする方法があったとしても “しつこいまでにやり抜く“ところが一丸さんらしいなと、それを聞いて思いました。

 お店のコンセプトもしっかり練られています。ただ頭の揉みほぐしをするのではなく、施術前の1時間はお客さんにゆっくり寛いでもらうため、コーヒーを振る舞いながら会話してリラックスしてもらうそうです。

 お客さんひとりにかける時間は普通のマッサージ店の倍くらいなのに、価格設定は変わりません。これにも周りからはいろいろな意見があったそうですが『お客様と話す時間がないと本当の癒しは提供できない』というのが一丸さんのポリシーでした。

イメージ

極上のリラックス空間で“ぐっすり”…

 私もずっと行ってみたいと思っていたのですが、なかなかタイミングが合わず…。先日、やっと施術を受けることができました。一丸さんとの再会に話が弾み、あっという間に時間が過ぎて「そろそろ(施術を)始めようか」と言われてしまいました(笑)。

 施術が始まると、いつもの明るい一丸さんではなく、真剣な一丸さんになっていました。開業当初は頭を揉みほぐすコースだけだったのですが、お客さんからの「お試しのショートコースも欲しい」「全身マッサージしてほしい」という要望を受けて、今ではさまざまなコースが選べるようになっています。

 私は全身60分コースをお願いしたのですが… いつの間にか眠ってしまったようです。会話で気持ちがほぐれたあと、静かな空間で施術を受けてリラックスしたのだと思います。気がつけばマッサージは終わっていました。首のコリがとれて、頭がすっきりして視界が広がったような感覚になりました。

一丸さんの“経営者の顔”を見た

 そのあと食事に誘ってもらい、同期の小川将人君と3人で久しぶりに出かけました。そこではお酒の力も手伝い、一丸さんが“商売”について熱く語ってくれました。

一丸さん(左)と同期・小川将人選手(右)と3人で久しぶりの食事へ(本人提供)

 順調な“第二の人生”を歩みだしたように見えた一丸さんですが、「少し商売を甘く見ていたかも」と思う節があったそうです。一丸さんは競輪選手を引退した後、『やりたいこと』をやるか『向いていること』をやるか悩んでいました。結果、やりたかった「頭の揉みほぐし」を選びました。最初は“自分が求めるものを皆も求めているに違いない”と思って事業を始めたそうですが、そうではないと気づかされたと話していました。

 競輪には着があるので、評価の軸がはっきりしています。プロセスは人それぞれですが、1着を取れば結果が評価される世界です。しかし商売は自分がいいと思っていても、お客さんのニーズと違えば評価されず結果が出ません。一丸さんも、自分の信念はぶらさずに持ちながら、周囲の意見に耳を傾けて現実を受け入れなければいけないところに競輪とは違った難しさがあると言っていました。

 それと同時に、周りの人たちの助けに感謝していました。お店をオープンしてから、お客さんを集めるのには皆苦労するものです。一丸さんのお店にはファンの方や現役選手、以前からの知り合いがお客さんとして足を運んでくれているそうで、選手時代に築いた人脈に助けられていると話していました。それは一丸さんの人柄があってのものだと思います。

マッサージ店主に転身した一丸安貴さん(本人提供)

 事業がなかなかうまくいかない時、お客さんとして来た経営者の方から「不安で夜も眠れないのが経営者の宿命なんだよ」と聞かされた時は、凄く重みを感じたといいます。成功していて華やかに見えても、事業が大きくなれば背負うものも大きくなるのが経営者です。競輪選手にも不安で寝られないことはありますし、僕もそういう夜がありました。経営者が背負うものとはまったく違いますが、それを乗り越えると“経験値”になる部分は、もしかしたら共通しているのかもしれませんね。

“やりたいこと”を貫く覚悟

 それでも『やりたいことを仕事にした』一丸さんの目はキラキラと輝いていました。うまくいかないことも多く不安はあるけれど、好きなことを選んだからこそ前向きに頑張れると言っていて、まだまだ野望もあるようです。自分が経験して良かったマッサージを多くの人に広めたいという思いで、ブレずに前に進んでいっている姿はかっこいいですね。

 今は毎日来てくれるお客さんもいて、感謝してもらえることもやりがいにつながっているそうです。一丸さんの“第二の人生”が充実しているとわかって僕も嬉しかったです。

 私も選手になって29年目。最近は腰痛に悩まされ方向性がぶれそうになったこともありましたが、競輪選手は僕がなりたくてなった職業です。これからもコツコツと自分らしく頑張っていこうと思っています。

(撮影:北山宏一)

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金子貴志

Kaneko Takashi

愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。

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