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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の宮記念杯回顧】“最恐ライン”にも怯まずに勝負できたけど「そうだった、番手は古性優作だったんだ」

2023/06/30 (金) 18:00 48

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。今月も出場レースの振り返りを書きたいと思いますが、その前にオールスター競輪のファン投票について書かせてください。投票結果は3位で僕はドリームレースに出場できることが決まりました。

 今年は到底納得できない不甲斐ないレースもありましたし、成績も不安定です。そんな中、去年と変わらない票数を届けていただいたこと本当にうれしかったです。ありがとうございました。レースでは精一杯頑張ります。ぜひ応援よろしくお願いします。

温かいファンの存在に“日々感謝”(撮影:北山宏一)

自分らしく走れた! だからこそ余計に悔しい

 前回のコラム公開後すぐ、僕は富山の全プロ記念競輪と競技大会に出場しました。宇都宮記念よりも状態を上げて入れたので、自信を持ってレースを走ることができました。初日もSPR賞も迷わずに“やりたい走り”ができましたし、アグレッシヴに自分らしく動けました。この2日間のメンタルとレース判断には今でも納得しています。ただ、自分らしく勝負できたにも関わらず1着が獲れなかったので、悔しさも倍増しです。

北日本ラインを乗り越え、近畿ラインにも激しく抵抗した(撮影:北山宏一)

 シリーズが終わり「このままじゃダメだ、しっかりと大垣記念で結果を出すぞ」と気合を入れて帰路につきましたが「休みを入れないとベストパフォーマンスは難しいかも…」と感じるほど疲労感が大きかったです。結局この疲労は大垣記念までに取り除くことができず…。調整不十分のまま開催に入ることになりました。

時間差で訪れる落車の影響

 本来ならうまく回復させられる日程だったと思います。でも、落車の痛みが和らいでも睡眠の質が悪いままだったり、落車で痛めたわけではない部位に痛みを感じたり、回復力自体が低下していたのだと思います。痛めた部分を無意識にかばっていたのか、もともと痛んでいたところの反対側が痛みました。落車の影響は時間差で表れるものもあります。それを忘れず、体のケアは今一度シビアにやらなくてはと思いました。

 僕は疲労があっても脚の筋肉がしっかり張っていれば“良い疲労”と考えています。でも前検日には筋肉の張りも不足していましたし、「これは悪い疲労だ…、初日までに間に合うのか…?」と不安になりました。多少はマシになって初日レースを走れたので、何とか1着でシリーズをスタートできましたが、2日目はいつもなら踏み直せるところで踏み直せず。力の出し切れなさに違和感を覚え、「ヤバいな…」と感じていました。

時間差で出てくる痛みと疲労に苦しんだ(撮影:北山宏一)

ショックで心が切り替えられなかった

 そして3日目の準決勝。僕は連係した犬伏君から離れてしまいました。状態の悪さに加えて、踏み出す際の呼吸が合わなかったことも一因です。でも理由はどうであれ、決して離れてはいけないのがライン。過去に犬伏君のダッシュ力を体感しながら「いつか離れてしまう日が来るのかもしれないな」と考えたことがあります。でもこんなに早く来てしまうなんて…というのが正直な気持ちでした。

 レース後は本当にショックでした。いつもならたとえGIシリーズで勝ち上がりを逃したとしても翌日までには気持ちを切り替えて臨んでいます。でも、この大垣記念の準決勝のショックは最終日まで引きずりました。レースでは思い切りよく仕掛けることはできず、悔いの残るレースをしてしまいました。シリーズを終えた時には「本当に情けない」という言葉しか浮かんでこなかったです。

「気持ちがレースに反映してしまい情けない」と悔しさを滲ませた(撮影:北山宏一)

やってしまったことは取り返せない

 大垣終了後、宮記念杯に向かう日々の中で、しっかりと自分の悔しさと向き合いました。過去に離れた事実は取り返せないですし、僕を信頼してくれたお客さんのお金だって取り返せません。絶対に悔しさをバネに成長しないといけないですし、徹底的に準備しました。「今までだって悔しさは何度も味わってきたはず。それを糧にしてきたはず」と悔しさと向き合い、メンタルを整えました。

 開催前には「宮記念杯で犬伏君と連係したい、早くリベンジの場が欲しい」と強気も戻り、「絶対に車券に貢献する!」、「何が何でも決勝に乗る!」と闘争心も湧き起こってきました。その結果、宮記念杯は全体を通して思い切り行動を起こせたシリーズになりました。やってしまったことは取り返せないけど、次にどうするかは自分次第だと改めて実感できました。

宮記念杯は好運に守られていた

 宮記念杯が幕を開け、1走目も2走目もややバンクを重たく感じたものの、強い対戦メンバーを相手に臨機応変にアクションを起こせましたし、ここで白虎賞の切符を掴めたのは大きかったと思います。

自分の感情と向き合い強い気持ちでシリーズ入りした(撮影:北山宏一)

 そして白虎賞では早くもリベンジの機会が訪れ、犬伏君との連係が叶いました。やはり凄いダッシュの持ち主ですから余裕などはまったくありませんでしたが、走りながら「大丈夫そうだ!」という気持ちは感じることができました。体の状態も良いことを確認できたので、失った自信を少しだけ取り戻せるレースができました。

 1走目2着、3走目3着で白虎賞に上がれたのも「運がよかった」と思いますが、宮記念杯を振り返ると本当に不思議なほど運に守られていた感じがあります。冷静にコラムを書いている今、「宮記念杯は運が良かったの一言に尽きるシリーズでした!おしまい!」と書きたくなるほどです(笑)。準決勝から決勝の流れでは本当に勝負における「好運」の重要性を感じました。

敗退を確信してからの生き返り

 白虎賞に続いて準決勝も脇本さんと走りました。脇本さんとの対戦は意識をすればするほどレースがダメになることはわかり切っているので、自分の走りのみに全神経を注ぎました。脇本さんを後方に置いたとしても、勝負所で嘉永君と位置がかぶっては話になりませんし、そこは脚を消費してでも嘉永君よりも前に位置していようと決めていました。

 嘉永君よりも前で勝負所を戦おうと踏んでいたので、脚力を消費し、最終的には脇本さんに抜かれてしまいました。本当に強さを感じましたし、脇本さんとのレースは難しいです。そして僕は自分が4着で敗退したと考えて落ち込んでいました。

脚力消費覚悟で挑んだ準決勝、3着到達は写真判定に(撮影:北山宏一)

 そんな中「写真判定」とアナウンスが入ったので「え? まさかチャンスある? …ないか」という感じで結果を待ちました。結果的に東口さんと同着で3着に残り、東日本の準決勝次第で命運が分かれることに。あんなにレース観戦で他力本願の気持ちになったことなど過去にありません。びくびく震えながら慎太郎さんを見つめていました(笑)。

 慎太郎さんが2着になり、僕は4着敗退と思っていたところから生き返りました。この巡り合わせには興奮しましたし、夜までソワソワしまいました(笑)。勝ち上れた嬉しさとともに「絶対に決勝は中途半端なことはしない」と固く誓いました。

勝機はあったが近畿ラインが鉄壁だった

 そして決勝、気のせいかな? というレベルでしたが、発走機へ向かう前の脇本さんや古性君の雰囲気がどこかいつもと違う気がしました。また、脇本さんのスタートの“出て行き方”もいつもよりあっさり出て行く感じで、そこに違和感を覚えました。南関ラインも北日本ラインもスタートでは出て行かなかったので、近畿の後ろでレースを進めてみようかなと考えました。

 新山君が押さえようとした時、誘導と脇本さんの車間的にも突っ張りがあるように見え、「突っ張りがないにせよ、ある程度は距離を踏む覚悟だろう」と予測が立てられたので、2角捲りに勝機があると考えました。打鐘では2角捲りだけに集中して準備していました。(※脇本さんが長く踏む予測を立てるのなら4角あたりで失速することを願い、脚を最終局面までためる選択もありますが、その選択は山田さんのチャンスがなくなるため除外)

近畿ラインの後ろで決意を固め、迷いなく2角に勝負所を定めた (撮影:北山宏一)

 狙っていた最終2角。僕にも山田さんにも勝機がある最適なタイミングで仕掛けられたと思います。ただ、ホーム付近の脇本さんの加速が凄まじく、車間も開いてしまいましたし、何と言っても古性君の完璧なブロックをもらってしまいました。

 自分のタイミングに集中し切っていたので、古性君からブロックをもらう直前、「ああ、そうだった、番手は古性優作だったんだ」みたいな気持ちになりました(笑)。細かいところまで神経を注いでレースをしていたのに、番手が古性君ということを忘れるくらいでした。

スピード良く近畿ラインに襲いかかるシーン、この後すぐ古性選手のブロックを受けた(撮影:北山宏一)

 運にも助けられて勝ち上がれたシリーズでしたが、決勝では納得の行く勝負はできました。総括すれば「鉄壁の近畿ラインに力負けしたレース」としか言えません。でも一番強力なラインを相手にして、臆することなく挑戦できたことは今後にも活きてくると思います。負けは負けでも光が見えた感覚がありました。

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:北山宏一)

ーー松浦選手はサングラスを開催ごとに変えているイメージがあるのですが、こだわっているポイントはありますか?

 こだわりは特にないですかね(笑)。やや暗さが気になる時はクリアレンズにするとか多少の工夫をする程度です。「最近これの時は1着が獲れていないからお休みしてもらうか」とか気分によって変えることもありますね(笑)。

ーー神山雄一郎選手が900勝の偉業を成し遂げました。松浦選手の思う神山選手の凄さとは?

 どんな時でも自分を高めようとする探求心が本当にすごいと思います。神山さんはセッティングを追及している姿が印象的です。競輪選手は年齢の壁にぶつかり「やりたいレースができないこと」ってあると思います。

 あんなにも長い時間トップに君臨していた神山さんはそんな時にどんな心境なんだろう? と想像したことがあります。でも僕には想像できませんでした。でも神山さんが日々競輪を探求して“すごく強いレース”をしている時に、あれこれ深く想像しながら「すげえ〜」と見入っています。間違いなく尊敬する選手です。

ーー競輪選手を目指すきっかけになった選手はいますか?

 目指すきっかけになった選手はいないんですが、選手を目指し始めた時に憧れた選手は小嶋敬二さんです。全然レーススタイルが違いますけど(笑)。理由は捲りのスピード。いつかあんなスピード全開の鋭い捲りを打ってみたいです。競輪を知らなかった時に小嶋さんのレースを見て心奪われたことを思い出します。

狙いにいく! サマーナイトフェスティバルの“3連覇”

 それでは今月はそろそろ終わりにします。収穫のあった宮記念杯が終わり、優勝争いできる感覚を再確認できましたので、これから出稽古なども取り入れながら精一杯仕上げたいです。

 先日、早速小松島に出稽古に行き、本番よりも数段強いと噂の「練習時の犬伏君」の番手を主張して合同練習をしてきました。「練習時の犬伏君」の噂は本当で、普通に千切れました(笑)。やばかったです! 実践で離れることはないように、今後も一緒に切磋琢磨していきたいと思います。ここに来てだいぶ調子が上がってきましたし、3連覇のかかるサマーナイトの優勝をガッチリ狙っていきます!

サマーナイトに3連覇に向けて迷いなく突き進むだけ(撮影:北山宏一)

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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