2023/06/18 (日) 12:00 7
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は岸和田競輪場で開催されている高松宮記念杯競輪の決勝レース展望です。
これまでは4日制で行われてきた【高松宮記念杯競輪】は、今年の開催から6日間での開催となりました。
6日制ならではの難しさと言えるのが、大会の後半になるにつれての疲労です。自分が選手だった頃は、6日制でも決勝を含めて4走だけで済んでいましたが、5走となった今では休養に充てられる時間も少なくなります。
その中でも6日制の調整を分かっていると思えたのが、決勝に勝ち上がってきたS級S班の選手たちの走りでした。
特にここまで4連勝をあげている脇本選手の走りは桁違いだと言えます。同じ近畿の古性選手は一次予選1での落車こそありましたが、落車から一日空けた日程となったのも良かったのか、そこから3連勝と強いレースを見せています。
この2人(脇本選手-古性選手)の3番手を稲川選手が固める近畿ラインは、決勝でも人気の中心となるでしょう。ただ、準決勝までのレースと同様に、この決勝でも脇本選手は後方からの捲りが濃厚ですが、そこに波乱の目が潜んでいます。
近畿ライン(脇本選手-古性選手-稲川選手)以外の決勝の並びは、松井選手-郡司選手の南関東ライン、新山選手-佐藤選手の北日本ライン。そして、松浦選手と山田選手は西日本ラインでの連係となりました。
決勝メンバーで先行してきそうなのが、松井選手と新山選手です。特に新山選手は決勝に向けて調子を上げてきた感があります。準決勝でも打鐘前から全開の走りで、2周以上はもがいているにもかかわらず、2着に残してみせた走りは圧巻でした。
車番的に前受けをするというか、させられるのは脇本選手となるでしょう。そうなれば後ろが松井選手(南関東ライン)、そして新山選手(北日本ライン)となります。
後方となった松浦選手(西日本ライン)がインを切って、その上から新山選手も切っていった場合、先行するのは松井選手となります。松井選手もスピードはありますが、その上を新山選手は捲っていったのならば、さすがの脇本選手と言えども、捕らえ切れない可能性が出てきます。
また、新山選手は後ろに佐藤選手がいるだけに、スタートで牽制が入るようならば、思い切って前受けをする手もあります。
その場合、後続を引き付けるだけ引き付けてからの先行となりますが、岸和田バンクは時計も出るだけに、前でかかった選手がいた場合、後方に置かれた選手が捲るのは困難となります。しかも新山選手のスピードと持続力ならば、このメンバーが相手でも、先行逃げ切りは充分可能なはずです。
松井選手が先行した場合、番手から早めに捲ってきそうなのが郡司選手です。今大会は結果(1着、1着、5着、1着)こそ残していますが、いい時と比べると、若干切れが落ちている印象を受けました。なので勝ちきれるまではどうかなという気もしています。
レース巧者の松浦選手は先行したラインの3番手を狙っていくはずです。ラインを組んだ山田選手も今大会の出来がいいだけに、上手く松浦選手が立ち回れるようならば、その間隙を縫いながら、直線勝負に持ち込めるようだと高配当も期待できます。
決勝の車券で厚く買うべきは、脇本選手=古性選手からの3連単となります。それでも【日本選手権競輪】のように、後方のまま捲れない可能性も頭に入れて、3連単では新山選手を頭に入れて、2着以下の相手を広めに買っておくこともオススメします。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。