2023/03/12 (日) 15:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は松山競輪場で開催されている金亀杯争覇戦の決勝レース展望です。
【金亀杯争覇戦】は脇本選手が欠場となったものの、追加参戦となった松浦選手が初日の特選では、清水選手の先行に乗って見事に優勝しています。
中四国勢はその勢いに乗ったかのように、二次予選でも好成績を残して、準決勝にも多くの選手が進んできました。ただ、決勝メンバーに名を連ねたのは松本選手だけとなっています。
準決勝では7番手からの発進となった松浦選手でしたが、山田選手の牽制にあったとは言えども、直線で伸びきれなかった走りからすると、まだいい頃の体調には戻り切っていないのかもしれません。
一方でしっかりと決勝に進んできた、同じSS班の郡司選手や守澤選手の走りを見ていると、状態面の良さもさることながら、他の選手との経験の違いが、勝負どころの仕掛けなどに出ている印象がありました。
この2人の他にいい走りをしているなと思えたのが、準決勝で松浦選手の捲りを封じ込むような先行を見せていた伊藤選手、そして守澤選手との連係がはまっている感もある渡邉選手です。
決勝の並びですが、神奈川の4人は郡司選手を先頭に、福田選手-松谷選手-東選手の並びとなりました。準決勝と同じ並びとなったのは九州ラインの伊藤選手-山田選手と、北日本ラインの渡邉選手-守澤選手。地元の松本選手は単騎での競走となります。
この並びで誰が先行するかですが、松山バンクは捲りづらいバンクであり、今大会も先行したラインから優勝する選手が出ていました。
決勝でもラインの先頭を任された選手の調子がいいだけに、それぞれがどのタイミングで動き出すかが重要となってきます。
前受けをするのは車番や長さからしても神奈川ラインとなりそうです。そこで中段に構えた伊藤選手が抑え先行に入ったところを、後ろから渡邉選手が叩いていく展開となりそうです。
ただ、初手で後方に置かれたとしても、ラインの中から優勝する選手を出したいと考えている郡司選手は、準決勝のように早めに動いていくはずです。
こうなると渡邉選手との突っ張り合いとなりますが、SS班としての意地もあるでしょうし、この展開となれば郡司選手に軍配が上がると思います。
神奈川ラインが4車で出切ってしまったのならば、郡司選手の優勝が見えてきます。ただ、早めに踏んでいったばかりにゴール前で交わされた準決勝と同様に、決勝も番手となった福田選手が、ここでも差し切る可能性は充分にありそうです。
一方、郡司選手より先に渡邉選手が先行体制に入るようだと、番手の守澤選手が有利となってきます。同じように神奈川ラインと九州ラインがやりあって、ラインが短くなるようだと、九州ラインの捲りごろとなるだけに、伊藤選手の番手を回る山田選手にチャンスが巡ってきます。
神奈川ラインと九州ラインともに、長くなった神奈川ラインの番手に飛びつく作戦もあります。いずれにせよ、どのラインが先行するのかが、勝負の鍵となりそうです。【金亀杯争覇戦】は今年最初のナイター開催となりましたが、日が暮れてからもそれほど寒くはなっていないようであり、決勝も従来のバンクコンディションと同様に、「先行ライン有利」の鉄則は変わらないはずです。
唯一の地元となった松本選手は、目標がないだけに苦戦を強いられるかと思いますが、上手く間隙を縫いながら、地元のファンの前でいいレースを見せてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。