2023/01/18 (水) 12:00 27
1月19〜22日の4日間、大宮競輪の「東日本発祥74周年倉茂記念杯(GIII)」が開催される。年頭の立川記念を新田祐大(36歳・福島=90期)が、続く和歌山記念を脇本雄太(33歳・福井=94期)が優勝した。どちらの決勝も激しい戦いで、勝った新田と脇本の強さが輝くものだった。
新田としては、『ヨコ』の意識を高めることで荒ぶる強さに拍車をかけた。脇本は変わらぬ、『タテ』専門の衝撃的な強さをアピールした。では、
平原康多(40歳・埼玉=87期)の強さとは何だろう。
当然、若いころは『タテ』。先行も多かったし、レースの流れを支配してラインで戦うものだった。その内に、巨体を生かした『ヨコ』の動きも武器に、何でもできる“輪史最強オールラウンダー”と呼ばれるようになった。
いつどこを走っても「◎」の男。当大会に関してはラインの力も武器に、実に9回の優勝を重ねている。
平原の強さを支えているのは向上心だ。とにかく現状に満足せず、あらゆるものを取り入れ、試し、挑戦し、より強くなることを目指す。終わりのない道を、自転車好きという性格が進ませている。今年の戦いは、脇本が生み出すスピード戦争の中でどう戦うか。
今回、脇本はおらず、関東の若手自力との連係が多ければ、なかなかそれを試していく時間はない。そもそもが、人気に応えないといけないという立場。もどかしいものもあるかと思うが、10回目の大会制覇を見据え、その中で何らかの進化を目指す。
スター、エース、などと呼ばれてきたが、多くの失敗や困難、落車に失格を喫してきた根性の、叩き上げのレーサー。平原の物語を追い続けるファンは多い。
“主役の座を譲って脇役になりたい”の願いは据え置きだ。
S班は郡司浩平(32歳・神奈川=99期)と北日本の佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)、新山響平(29歳・青森=107期)のコンビで4人。郡司は立川記念決勝で新田の飛び付きを喰らった。遺恨を感じる性格ではないが、やられたままでは生きていけないのがこの世界だ。すぐに今回はないだろうが(500バンクだし)、鬼の郡司と化す時が来るかもしれない。
新山とて、持ち味は『タテ』だが飛び付きも辞さない戦いになっていく。『ヨコ』不要は脇本と中川誠一郎(43歳・熊本=85期)くらいなものだろう。脇本は勝ち続けないといけないが、中川は「あっ、セイちゃん出た!」とたまに(頻度は高い方がいいが)ファンを沸かすのが任務になっている。
シンタロウの一年は立川記念の決勝を見て、変わらないと感じた。追い込み選手としてのトップレーサーとして、自力全盛の時間をたくましく生き抜き、何度でも主役の座を奪っていくだろう。
吉田有希(21歳・茨城=119期)は昨年の「ヤンググランプリ2022」を走り、まくって2着。かわした菊池岳仁(23歳・長野=117期)とのワンツーで歓喜を迎えた。この時点で次の最低限の目標はまず「ヤンググランプリ2023」に設定され、その上に、もしかしたらもうひとつ上へ…がある。明確は道を一つひとつ、この大宮のBigBankから歩き始める。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。