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「KEIRINグランプリ2022」が12月30日に平塚競輪場で開催される。そこで、激闘の歴史を近くで見守ってきた競輪記者の皆様に集まってもらい、「KEIRINグランプリ2022」を徹底討論してもらいました。並びは? 展開は? 脇本雄太は? 北日本は? 気になるグランプリ予想をどうぞご覧ください。(取材日:12月9日)
松本直記者(デイリースポーツ、以下松本) まずは2022年の振り返りから行きましょう。グランプリ出場9選手の顔ぶれですけれども初出場は一人、新山響平です。
前田睦生記者(東京スポーツ、以下前田) (松本記者を見ながら)ライバルじゃない(笑)。「イケメンのライバルが出てきた」って松本さんが言ってました(笑)。
松本 新山が優勝したときに一緒に函館で写真をとってもらったんですけど…。
松井律記者(日刊スポーツ、以下松井) ダメなんだよ。本当のイケメンと並べちゃ松本(の顔)が引き立たないんだよ。
前田 ダメですね。住む世界が違うくらい新山の方がカッコいいということを知りました。
松本 このくだり絶対使ってくださいね(笑)。で、9人が決まりましたが、顔ぶれを見ていかがですか?
松井 まあ、ワッキー(脇本雄太)と新田(祐大)の復活でしょうね。去年一年、オリンピックもあって競輪に出られなかったんだけど、やっぱり実力通りというか。またこの場に帰ってきたと。
前田 新田はグランドスラムをよく獲ったよね。調子が全然良くなかった中で、ギリギリの走りだったけれども。
松本 最後の最後で清水(裕友)が落ちて、そのかわりに競輪祭を優勝して新山が自分でグランプリの切符をつかみ取ったわけですけれども、あとの顔ぶれはいかがですか?
松井 順当といえば順当だよね。
前田 古性はすごかったですよ。前半。
松本 タイトルは全日本選抜競輪に高松宮記念杯ですか。まず全日本選抜を勝ったっていうのがすごいですね。やっぱりグランプリを勝つ選手ってそのあとちょっと大変な思いするじゃないですか。取材も多いし、思うような練習ができないし。グランプリ王者として迎えた2022年最初のGIで一発ツモはすごい。
松井 しかもワッキーがいなかったからね。自力でGIを獲ったから。
松本 古性に関しては、共同通信社杯の落車の影響で、後半戦は握り(指)がうまく使えないなかでの走りでしたからすごいですよ。
前田 左手の指を4本ケガしたうち1本は腱が切れててね。もともと古性は小倉競輪祭と相性があんまりよくないといわれていますしね。
松本 まあグランプリに向けて仕上げてくるでしょうね。あとは脇本雄太はどうですか?
前田 ワッキーは体が不安で仕方ないよ。
松本 万全の状態には戻らないでしょうね。もう体に関しては。
松井 そうなの?
前田 まる半年、1年とかは休まないと。壊れた体なんだと思いますよ。
松井 もう勤続疲労もあるだろうしね。
松本 満身創痍なんでしょうね。新田(祐大)は本当にジェットコースターみたいな一年でしたね。日本選手権の前検日に落車というアクシデントがあって。
松井 (新田の)地元の平でね〜。
松本 メンタルもキツかったんじゃないかと思いましたけど、よく立て直してきましたよね。
松井 本人も年内最後のGI競輪祭でなんとか調子をピークに持って行きたいという計画でやっていたみたいなんだけど、その前の寛仁親王牌で獲っちゃったから。ビックリしたね。いや〜“持ってる”なと思ったよ。
松本 自分が9月の共同通信社杯で取材したときは、「ダービーの特選狙ってます」くらいだったんですけど(笑)。
松井 来年の?
松本 来年、23年のグランプリに出るのを見据えていたようなんですが、その後10月の寛仁親王牌で決勝に乗って、内に突っ込んであの紙一重の勝負をして獲った。で、競輪祭でも決勝に乗って、新山に優勝をもたらした。ちょっと今年の新田の1年間ってスゴいな、と。
前田 内容が濃い。そもそも新田はパワーが凄いから(普通の人では)開けられないドアみたいなものを開けちゃったんだと思いますよ。おりゃーって。すさまじいですよこの人は(笑)。まさかグランドスラムを見られると思わなかった。(GIを)1コ勝つことでさえ大変な中。で、グランプリを獲ってしまえば6コプラス1コは…。
松本 史上初ですね。で、新山響平。「勝ちたい、競輪祭を獲りたい」という自分の意志を貫いた競輪祭でしたよね。これまでやってきたことの積み重ねで、チャンスがめぐってきました。
松井 去年の競輪祭あと一歩のところで、しかもよりによってライバルのヨシタク(吉田拓矢)に獲られて自分が2着だったっていうあの悔しさの中、一年やってきて。で、同じ競輪祭で一年越しのリベンジっていうのもまたストーリーとして見事だったよね。
松本 見事でした。それをモノにできるかできないか。できなかった選手をこれまで見てきてたじゃないですか。なのにそれを一発で仕上げちゃった新山ってやっぱり“持ってる男”だなと改めて思いましたね。
松井 今年から競輪一本にシフトチェンジして結果を出したわけだからね。
松本 賞金上位の5人に関しては連続出場です。まずは松浦悠士。
前田 松浦、郡司ね。
松本 まあ安定感ですよね。GIは勝ってないんですけど、GIIはともに。松浦はサマーナイト、郡司は共同通信社杯と。1年通してこの二人は強かったですよね。
前田 記念の二次予選の車券貢献度はこの2人でしょうね。「この二人はラインで決めるから」と車券好きは車券を握りしめていたと思うよ(笑)。
松本 で、郡司に関しては防府の決勝で落車してしまったけど、競輪祭を見た感じ、不安はないですよね。
松井 郡司は一回落ちてから上がって、ちょうどいいところで(グランプリを)迎えられるんじゃない?
松本 守澤(太志)と佐藤慎太郎。守澤は親王牌は獲ったかなと思いましたけどね。大外ぶん回してあの(33バンクの)前橋で。今年の守澤は追い込みに迫力がありましたよね。
松井 あった。で去年はほら、広島記念(ひろしまピースカップ)で右鎖骨骨折をやってしまったんだけど、今年はすごいいい状態でグランプリを迎えられる。(北日本の)並び次第なんだけど、いいとこを回れる可能性高くない?
松本 高いですね。
前田 この守澤、慎太郎の順番がこのグランプリのカギですよね。
松井 どう思う? 並び。
松本 僕は新山-新田-守澤-慎太郎で4車結束だと思います。
松井 同じく。
前田 松本さんは(デイリーなんだから)慎太郎さんを3番手で出しておかないとダメでしょう(笑)。
松本 慎太郎さんだからこそ4番手なんです。
松井 これまでも何度かあったじゃん、慎太郎が守澤を前に回したときって、守澤が固くなっちゃってんのか、なかなかいいレースができないっていうのが続いたじゃん。
松本 今年の寛仁親王牌2日目のローズカップでも、前を回ったんですけど(新田-守澤-慎太郎-成田)、守澤もちょっと失敗しちゃったからそのリベンジをもう一回させてくれるんじゃないですかね?
松井 リベンジをここでっていう感覚ではないんじゃないかな? 現状の調子で決めるんじゃないかな。
松本 慎太郎さんに関しては後半戦ちょっと落車が多すぎたっていうのもあります。
松井 そうだね。可愛そうだったね。
松本 前半戦のキレッキレの状態からすると、ベストな状態とは言いづらいと思うんですよ。
松井 まあダービー2着で、賞金争い優位でグランプリはほぼほぼ当確みたいな状態で過ごしてきてたから、なかなかモチベーションの維持が大変だったと思う。ほら、追われるより追う側の人間の方が強いじゃない? 守りに入ったとは思わないけど、ちょっと後半影が薄くなっちゃったよね。
松本 落車ももらい事故みたいなのも多かったけど、ちょっとツキがなかったかな、と思います。でも4車になって4番手といってもチャンスがある4番手だと僕は思っています。3番手の守澤が慎太郎さんのコースは作るだろうし。
前田 新山がいない番手・3番手という考え方で、慎太郎さんが4番手でも勝負になるという判断ならね。ローズカップの失敗はあったとはいえ基本的に守澤のことについては高い評価をしている選手だし、守澤が3番手で頑張るのはおおいにあると思いますよ。全員一致しましたね、そこ。
松本 で、平原康多です。
前田 さ、ここは松井さんに15年分の思いを語ってもらいましょう。これで何回目のグランプリになるんですか?
松本 10年連続13回目です。神山さんが15回ですね。
松井 08年から3年連続で出て、11年から2回出られなくて、13年から10年連続出場。すごいよね、これ。
松本 まあ2着も何度か2回か3回? ありますね。そんな中、今年は単騎が濃厚です。去年はヨシタク、宿口がいましたけど、単騎のグランプリは久しぶりですか?
松井 そうだね、20年の平塚のときはワッキーについたし、19年の立川のときは単騎だったね。8番車で。
前田 外伸びたやつ。
松井 あれ10秒9くらいだったんじゃない? 一番タイムよかったんじゃないかな。あのときの立川もそうだけど、やっぱりそのグランプリの調整の仕方を誰よりも知っている選手じゃない?「別に単騎で走るのは始めてじゃないから。そりゃ関東の誰かがいてくれた方がよかったけど、まあ走るのは始めてじゃないから大丈夫です」って平原は言うと思うよ。
松本 ただ、今年は大きいタイトルがありませんでした。
松井 それでもGIで6回のうち4回決勝に乗っているでしょ。まあオールスターは落車のアクシデントがあったりしたけれど、安定していた1年だと思うよ。松浦、郡司、平原、古性。この4人はいつも買っておいて安心の選手だったし。
前田 松本さんもたまには失礼なこと言ってみなさいよ。平原に「郡司と松浦あいてるよ?」って(笑)。言ってみなさいよ。
松本 俺が言うの(笑)?
松井 言うことはないよ(笑)。20年のときは「ワッキーあいてるよ?」って思っていたけどね(笑)。
前田 そうですね。松浦と郡司という素晴らしい、魅力ある選手に付くのは面白いけど、平原はそういう判断をしないでしょう。
松井 平原自身も(松浦、郡司と)同じスタイルだって思ってると思うよ。
松本 平原って基本自力選手なんですよね。
松井 そうだよ。関東の若手がいるから育てるために任せたりついたりするけど、基本的には前でやった方がカタい場合も多いじゃない。
前田 ね、だから吉澤純平のときでも全然自分が自力でもってのはずっとやってきて、純平も意地があるから前で頑張りたいでやってるけど、その平原がずっと変わらないのがすごい。
松本 でも本当に縁なんですかね、(グランプリを)勝てないのは。巡り合わせなんですかね。
前田 「(グランプリは)勝てない設定になってる」って平原は自分で言ってましたよ(笑)。
松本 神山さんのねえ、15回もそうですけど。
松井 そこを受け継いじゃったんだ(笑)。なんかもうアレだよね。長く交際すればするほど結婚のタイミングがわからなくなる、みたいな。もう15年もずーっとグランプリと付き合ってるから、勝ち方わからなくなっちゃってるんじゃないかという気がしないでもないけど。何かのひと押しでね、ポンと“籍”入れてほしいよね。
松本 何かそのきっかけがあるといいんだけど、きっかけがなかなか見つからなくて。単騎も経験しているし。
前田 本当、ありとあらゆるパターンをやってきて。
松井 後輩の頑張りもあったし。ワッキーの番手もあったし。でも勝てるチャンスでさ、勝つためだけのレースをしないのが平原なんだよね。まだそこでもワッキーの番手についたときだって前に踏めばいいのにヨコを行っちゃうとかさ。やっぱりこんだけ頑張ってくれてるから仕事しなきゃって。この一億円かかった場面でも普段と同じことができちゃうんだよね。何かリスクを冒したりしないことには、脚力が拮抗しているメンバー同士だから勝ち取れないのかもしれないね。やっぱりグランプリって。そういう点では平原はやっぱり人がいいのかなっていうのをすごく感じるね。
前田 松本さんなら付いちゃうでしょ? 松浦か郡司に。
松本 つくつく。
松井 「グンちゃんいい? グンちゃんいい?」って(笑)。
前田 「ちょっとチャンス生まれそうだからさ」って(笑)。
松本 ヤジロベエになるよ俺は。
松井 風見鶏だろ? これ使ってくださいね(笑)。
松本 誰とでもバランスをとるということなんです。
前田 平原が勝つチャンスっていうのは、どういうときに生まれます?
松井 今回は北の結束っていうのが絶対的にあるじゃない。「新山行きまーす!」があるわけだから。ワッキーがそこに襲い掛かってくれる、で、ワッキーが襲い掛かかることによって仮に新山が突っ張ったにしても、古性はどこかに降りる。要するに北の4車を分解させる動きができるっていうのが近畿の二人じゃない。で、それを期待して単騎勢が捲ってくところに平原がやっぱり自分が先捲りでもいいけど、それこそ郡司や松浦の捲りに平原がついて行く形での外伸びだろうね。
松本 もしくは…
松井 まあ新田の後ろあたりを取っちゃう。
前田 平原が?
松井 まあ、単騎の人がね。平原に限らない。松浦にしろ、郡司にしろ、平原にしろ、勝つためには、やっぱり近畿と東北でガチャガチャにやってくれるか、あとは北日本のどこかいいところにスルッともぐりこむと。今の新山のデキだったら新田やっちゃってもいいかもしれないし、本当だったら番手捲りの後ろが一番いいんだろうけど。
前田 セオリーとしてはどうですか?
松井 セオリーとしては、2段駆けだったら3番手取ってるのが一番勝ちやすいのかな、とは思うんだけどね。でも新山がカカるだろうし。
松本 現段階では枠が決まってないので展開予想は難しいですね。
松井 そう展開の予想はしづらい。
松本 並びも出てない段階ですけど、レース展望に行かせてください。並びは3人とも見解が一致したんですけど、ひとつパターンとしては、支部で分かれるという選択肢もあるのでは? という声もあります。新山-守澤、新田-慎太郎なんですが。
松井 そしたら新田が新山をあそこで引っ張った理由がなくなっちゃう。北はひとつで、やっぱり新田が寛仁親王牌、ラインの力もあって勝てた。グランドスラム獲れたっていうことを競輪祭で新田が「じゃあ僕前で頑張るよ」って。そのやっぱり“東北の絆”というかさ。それが出来上がってたうえでのこのグランプリの4人だから。これで2-2は100%ないと思うよ。
前田 100%の表現が正しい気がする。
松本 並びについてぼやかすこともしないですかね、前夜祭でもうハッキリ言いますかね。
前田 まあ慎太郎さんだけは茶化し気味に「松浦と郡司もあいてるよな、ガハハ」って笑わせてくれるかもしれないけど(笑)、まあしないでしょう。
松本 じゃあ9割9分この並びでいくかな、と。
前田 100%。
松井 そう。守澤と慎太郎の前後だけはまあ、、、でも8割方守澤が3番手と思う。
松本 近畿に関しても100%で脇本-古性。
松井 うん100%。
松本 古性はこれでグランプリは戦いたかったんですもんね。去年は一人で勝った。今年はこの脇本との連係で。
松井 ワンツーを決めたい。
前田 古性は本当はもう一人後ろに稲川(翔)がいて欲しかったかもしれないどね。
松本 そうね。今年の寛仁親王牌なんかはそんな感じだった。古性としてはもう一人(グランプリに)乗っけたかった。
前田 ね、意欲がすごく出ていた。近畿でもう一人っていうのが。
松井 なんかあれを見てワッキーもスイッチ入った、じゃないけど。近畿のね、古性の意気込みというかそれを感じた。
前田 ワッキーはすごく興奮して、新田の優勝より古性の先行ばっかり見てたって。
松井 そういう意味でも近畿もひとつになってるよね、気持ちがね。
前田 この二人はやっぱりレベルが高いところでつながっていると思う。
松本 さっきの話に戻りますけど。やっぱり平原は自力選手ですからね。その松浦、郡司に続くことは僕たちは考えてないかな、というところ。
松井 そこは全員単騎。
松本 郡司と松浦もオールラウンダーですから付くというよりは、自分たちでやるでしょう。
前田 そういう競輪をやってきてないよね。ライバルですから。
松井 松浦に関して言うと今年は清水がいないっていうことと、やっぱり日程的にも地元記念を走ってからのグランプリで、調整がほかの選手よりはタイトというか。ハードな状態。で体の追い込むピークの状態というのを維持する時間が長いから、アドバンテージはあるのかな、と。
松本 走ることの有利不利っていうのはどうなんですかね。結局12月にレースを走るの多分松浦だけなんですよね、グランプリ前に。去年の守澤を見ているとリスクでしかないと感じます。でもやっぱり松浦にとっては広島記念がね、広島が改修に入るから。でもなんだろう、あそこで勝つことによってメンタルとかレース勘とか一番近々で仕上がるのが松浦なのかなって気はするんですけどね。
前田 だからあんまりマイナスに働く参加ではないと思います。松浦も自分自身でわかってるんだろうなと。
松井 地元記念を勝てば満たされるものが大きいしね。お客さんの前で走り見せて、それがグランプリの壮行会になるわけだからね。ただ清水がいないんだよね。
松本 はじめてですね。清水がいない松浦のグランプリは。
前田 グランプリ開催中の過ごし方がちょっと心配(笑)。松浦も人懐っこいタイプだから寂しがるかもしれない(笑)。
松本 あと郡司はやっぱり地元ですよね。平塚でのグランプリは。
松井 あんまり目立たなかったんだよね。期待されたわりにね。前回の平塚のときはね。
松本 ワダケン(和田健太郎)が勝ったときですね。
前田 郡司自身は9着。17年の平塚は補欠だったし。でも今回とにかく「優勝だけ」と思って走るので。
松本 単騎でも結果を出していますしね、郡司も。で、やっぱり単騎とあんまり関係ないかもしれないけど車番のアドバンテージがあるかもしれません。
松井 あるだろうね。
松本 過去の例からすると平塚グランプリの車番は抽選じゃなくて番組編成で決まるから、郡司としては戦いやすいのかなという気がします。
松井 古性は1年間、1番車をやってきて今度、久しぶりに違う車番になるんだね、じゃあ。一応、3年連続で4番車が優勝してるじゃん? 慎太郎、ワダケン、去年の古性。
前田 それもすごいよね。
松井 だから今年はゲンをかつぐなら郡司は4番車なんだけどな。
松本 タイトルを獲った人から内から入れていって、郡司を4番車に入れてもいいんですよね。4番車が3年連続勝っているというのは、もし車券に迷った時はそれを買ってもいいんでしょうね。
前田 車番で考えるとあれじゃないの? 小倉の競輪祭決勝で北は3番車以降の外枠で、前を取りに行ってとれずという組み立てだったけど、今回は北が前を取って突っ張り作戦なのか、ワッキーに前を取らせてから勝負をするのか…。
松井 でも結局、競輪祭だってキレイな2段駆けにはなってないじゃん。今回だっておいそれとさ、どうぞ2段駆けしてくださいって出してはくれないでしょ。
松本 2周から展開してそのインを単騎で、まあ北日本が前を取れなかったテイでまず話すんですけど。この単騎の3人は動く度胸のある選手たちですからね。
松井 全員ね。リスクを冒してインも切れるし。
松本 ワッキーはもう単騎の3人に何かしてもらってっていうとこかな、と思うんですけよね。僕はレースを動かすのは単騎3人かなと思います。
松井 単騎3人がレースを動かして、北日本が行きます、8、9番手になります。で、それがどのタイミングか、なんだよね。それが2周なのか、ジャンなのか、ホームなのか。ホームで8、9番手じゃワッキーはキツいから、やっぱりワッキーは行くと思うんだよ。その段階では。
松本 いったんは8、9番手になりますよね?
松井 まあ普通はそう考えるよね。
松本 ですよね。やっぱり単騎3人が位置にうるさい人たちだから。そことワッキーはやっぱりヨコの勝負はしないと思うんですよね。
松井 ワッキーと古性が早めに行くだろうと踏んでその3番手でギャンブルをする人がいれば、7番手の可能性はあるけど、でも基本的には自分で前々行きたい3人じゃない。だからやっぱりワッキーは8,9番手になる可能性は高いよね。
松本 僕はワッキーが前かなと、思っているんですけど。
前田 北が前取って突っ張れれば? 今回はちょっとね、競輪祭のときはね、内側ガツンと行ってさすがに無理っぽかったけど。
松本 競輪祭は確かに平原にしてもラインが坂井と2車だったから、前からって言ったんだろうけど、単騎だと前っていうよりはね。
松井 だってあれ前取りたくなかったんだよ平原は。
松本 ですけど、まあ郡司が外に差したからっていうところで前になっただけで。
松本 じゃあ前田くんはけっこう北が前を取れちゃう、と。
前田 取って突っ張るのが一番。
松本 律さんはどっちですか?
松井 車番が良ければ、北はそれを狙ってくるだろうけど。
松本 じゃあ、北が取れれば突っ張り。単騎の選手たちの動向ですよね。追い上げますか? 北が前受けになったとき、単騎の選手たちってどうします? ジャン、ホームとかって。
松井 単騎だからね。これが清水-松浦とかだったら追い上げは全然あると思うんだよ。新田の横を“ビタ〜”って。それを捨てて、ワッキーがいたらそれに併せて出て行って北をつぶすとか作戦あるけど。単騎だと、どっかにシュルシュルっともぐりこむのはいいけど、外はまずないんじゃないかな?
松本 内は慎太郎さんが締めっきりですよ。
松井 あかないでしょ、だって。
松本 だから追い上げるアクションを起こす選手は?
前田 誰かと言われたら、松浦だと思う。
松本 ハコまでいきますよね。
松井 そしたら新田のとこだよ。守澤の外で競るんだったら。
前田 内側じゃもちろん狙って内行っちゃうけど? オールスターの決勝で松浦がやったような動き。松浦は本当に何でもできるから。一瞬でもスキがあれば単騎で一番レースを動かすのは松浦。
松井 郡司がさあ、今年イン粘りとかそういうレースであんまり発揮していないというか。慎太郎のところに飛びついて競り負けちゃったりとか。あったじゃない。郡司は位置取りうんぬんよりは自分がもう最初から北の5番手なら5番手、で一発イチかバチかも、新田が出てくるのが迷うぐらいのところで行くとかっていうレースじゃないかな。
松本 じゃあ北が2周のところで突っ張れる体勢だったとしたときに、ワッキーの巻き返しですよね。どうです? 古性がついてるだけにやっぱり8、9番手でドッシリ構えてってのは、ぼくはないかなと思っているんですよね。
松井 ワッキーはもう体調次第じゃない? 体が動けば先行で押し切れる人だから。でもやっぱり踏める距離を考えるとね〜。最近の調子が、グランプリもそれぐらいだとしたら、もうイチかバチかだよね。混戦捲るしかないんじゃない? でワッキーはほら年間最高獲得賞金額かかっているじゃない?
前田 (三谷)竜生の記録更新。
松本 グランプリって、例年、単調な流れになることがあったじゃないですか。やっぱりワッキーが動かないと単騎勢はちょっと動きづらいんじゃないかなと思ってるんですよ。
前田 ワッキーと新山の二分戦みたいなのって、これまでも時々あったじゃないですか。で新山が緩やかに抑えにいって突っ張られて、ワッキーが新山に「あれは甘いよ」っていうのをね、歴史の中でみてきたから。この二人がグランプリで再び相まみえるわけだけど、新山は「北から(優勝者を)出す」ことしか頭にないと思うから。今回は、ワッキーは「勝たなきゃいけない」っていう思いで来てるから。
松井 そうなんだよね。ワッキーは勝つための自力だからね。
前田 この北4人は(ワッキーにとって)ものすごく嫌だと思うけど、新山-新田の並びで、もし番手から出ないでちょっとでも逃すようだと、ワッキーが10秒の前半台とかでグアーッと来て一気に飲み込んじゃうっていうケースも考えられる。最後の一戦だからワッキーは仕上げてくると思うけどな。
松井 そうだね。全開の新山を飲み込んじゃうくらいの、ゾクゾクするようなワッキーのレースを見たい。グランプリって意外と単調なレースになったりすから、アッサリ新田-守澤の折り返しでした、っていうのもあるんだけどね(笑)。結局やっぱりグランプリはみんな思い入れとかも入るんだけど、やっぱり新田-守澤-慎太郎の車券は買っておいた方がいいよね。シンプルなその守澤の逆転はあるにしてもさ。それは絶対抑えたほうがいいよね。
松本 新山の逃げは多分いいカカリだと思いますよ。新田が、あとは躊躇しないことでしょうね。ひきつけてひきつけてっていうよりは…。
松井 新山にあわされちゃったりして(笑)今、新山の方がちょっとトルク(回転させる力)があるもんね。だから脚のあるやつの後ろからバンマク(番手まくり)って相当脚を使うだろうし。だからやっぱり守澤もチャンスだよね。
松本 はい。僕はそこに賭けてみたんですよね。
前田 北の3番手の。
松井 新田に印ついていないのは何で? 守澤本命だったら新田は対抗じゃないの?
松本 う〜ん、あの、僕の今年の新田の評価、まあ競輪祭の動き含めてですけど、やっぱり親王牌は「取れちゃった」なんですよ。新田の本来の強さはまだ戻ってきてないと思うんですよね。だから2段駆けして、もう守澤としてはやっぱり後ろに慎太郎さんがついてるだけに、早く踏む展開になっちゃうかな、と。もちろん前の新田もそうだけど、やっぱり3番手を回してもらっている意味を考えると、前に踏んで、絶対郡司なり平原なり松浦が迫ってくるじゃないですか。そうするとやっぱり(前を)かばっていられないと思うんですよね。内側は番手捲りをした新田がいて、守澤、慎太郎となったときに、内の新田はもちろん残したいけど、やっぱり踏まなきゃ自分も行かれちゃう。単騎3人て、ものすごくタテ脚あるじゃないですか。
松井 この3人の現段階での予想なんだけど、一番優勝に近いと思われる新田が全員無印なのよ(笑)。一人くらい本命いなきゃいけないはずなのに、新田-守澤で誰もつけていないという。
松本 でも新田の今の状態はどうですか?
松井 良くはないよ。だけど展開があるじゃない。
松本 展開でも、4コーナーをハコでまわってきても、いや、4コーナー先頭でも勝てます?
松井 調子悪いのにG1勝っちゃうんだよ?
前田 勝つよ。4コーナーハコなら勝つよ。
松本 ハコはね。だって最終バック番手捲りでしょ。僕は4コーナー先頭だと思っています。
松井 新山だってカカるぞ。
前田 私はそもそもそれが壊れるという推理だから(笑)。
松井 普通にね、北がすんなり先行争いなしで、ワッキーの邪魔なしで新山がいい感じで駆けちゃって。
松本 でも、これが僕たちの評価かな、と思うんですよ。新田は無印になっちゃいません?
前田 いや2段駆けで推理した場合は、(新田は)拾っておいた方がいいよ。
松井 二段駆け推理だったら俺も守澤-新田か新田-守澤だよ。グランプリって多いじゃん、バンマクの後ろの優勝っていうのはさ。わりとシンプルなレース。
前田 車券的にはね、新田が残らない方で勝負が面白いけど。
松井 それはそうなんだけど、一番確率の高い新田が全員無印っていうのは相当俺たちひねくれてるな(笑)。ワッキーもかろうじて俺が5番目の印がついているだけで。
前田 ワッキー拾えないからこっちもね。悩ましかったですね。
松本 僕はやっぱり、ワッキー無印になっちゃったのは、北日本の作戦レースが上手く決まるんじゃないかな、っていうところですね。やっぱり一億円がかかってるところで、“駆ける”選手がいるラインって強いと思うんですよ。新山はとにかく行くじゃないですか。
松井 うん、北日本はとにかく新山がハナを切ることだけだろうね。後ろに脚のある3人、新田、守澤、慎太郎がついてるわけだから、自分はとにかく最終バックまでは取って、後は後ろの3人の誰かが勝ってくださいってくのが新山の思いだから。脇本がどうとか、単騎の誰がどうとかじゃないです。4人で出切ってとにかく競らせないように新山は前に出て、後ろの誰かが勝ってください、だと思う。脇本でも単騎の選手でも、他の選手に先行されたらダメなんですよ新山は。今回に関しては。
前田 もう意地というか。選手の看板の問題ですからね。このグランプリで先行できないと、来年以降新山は、ピンクのパンツをね、赤が薄めでね。見えるような恰好になっちゃうから。
松本 北がやることはひとつなんですけど、それでも、ワッキーは警戒されるでしょうね。おなじように単騎の選手たちが真ん中にはいって。どうしても位置が取れる選手じゃないから。8,9番手にはなっちゃうのかなという気がしますけどね。
松井 本当にいいときのワッキーだとさ、オールスターのレースも衝撃だったんだけど、フタされてかぶされて番手まわったのに9番手まで下げて、そこから捲っちゃうっていう漫画みたいなレースしてたじゃん。
前田 捲り届かない西武園で。ビンビンにカカッてる寺崎で後ろの新山-小松崎がいっぱいになったやつを9番手から捲って。その力があるのはワッキーしかいない。あれは本当、信じられない。
松井 オールスターの優勝はエグかった。だからそこの状態にどこまでワッキーが近づけられるか。あの状態だったら北の2段駆けの新田の番手捲りのうえを軽々捲って行っちゃうと思う。
松本 あれですよね、普通のGI戦とかなら3走見れてその脇本の状態がわかるわけですけどグランプリだけは本当にその当日になってみないとわからないのが。
松井 結局ワッキーの体って、パンチ力が強すぎるゆえに自分の拳を壊しちゃうようなボクサーみたいなものだから。
前田 仕上げると傷めるという。
松本 律さんはこれは、展開的に2位くらいまでにはワッキー来るんじゃないかというところで印は拾いました?
松井 いや。これは俺はもう北の4人を無印にしてるの。だからそこを誰かが、ワッキーなり単騎3人なりがどうにか分断したりたたき合いに持ち込んだり、こう、2段駆けをうまくさせない作戦を組んで、その残りの5人でどうにかするという展開予想だから。一年で一番、競輪がクローズアップされて注目される日、普段見ない人も見るわけじゃない、そのレースを。で、なんか「ああ、ポーンポーンのバンマク、ああ抜きました、バンマクそのまま押し切りました。他の5人動きありません」というレースは見たくないから。
松本 だから、こうなった以上対極の意見ですよね。僕はもうスンナリ。みんな一億円かかっちゃって、ガチガチになっちゃう方の推理でこうなりました。
松井 俺は、ちょっとそういうレースよりは、ワッキーが2段駆けをつぶしに行くような“すごい脇本”を見たいし、それによって単騎3人が漁夫の利を得るというか。混戦をちょっと期待している。
前田 で、この◎はやめるはずじゃなかったの? やめないんですね(笑)?
松井 どれ? あ平原?
前田 いつまで平原にグランプリ◎をやり続けるのか。今年はまだ、あるという。
松井 そう、だからもういい加減俺が◎だから来ないのか、という責任を感じるね。まあ本人は俺のせいにしてないから。
松本 で、前田くんの郡司の勝つ展開というのはどういう?
前田 これはもう簡単。北が行くのは当然だけどワッキーはねえ、大人になりきれないから。で、その中で冷静に考えると、番手から出る前に出て叩いていくのが、対番手捲りの常套(常道)でしょ。だからジャン過ぎ、ホーム1コーナーで出きれるくらいのタイミングで仕掛けると。で、その時に“古性”が発動するわけですよ。“古性”が発動したらレースはもう、究極に盛り上がるよ。
松井 古性爆弾?
前田 そうです古性爆弾です。で、私がズルいのは、平原が優勝したときに拾える印なんですよ(笑)。だから対抗で平原に。松浦も裕友(清水)がいないときにダサいレースできないから、裕友ばりに暴れると。郡司-平原の折り返しで、松井さん、飲みに行きましょう(笑)。
松井 そうだね(笑)。
前田 あ、ダメだ。別府移動だった(笑)。
松本 やっぱりじゃあこのレースのキーマンはワッキーの仕掛けですね。
松井 そう。と、ワッキーのデキ。もう北はある程度もう状態はわかってるし、単騎の3人も絶対仕上げてくる。だけど単騎っていう不利がある。だからもうキーマンはワッキー。
前田 体調が戻っているとワッキーは子供になれる。
松本 その、仕掛ける...踏み合いを楽しむワッキー。
松井 ワクワクさせてくれるワッキーなのか。
前田 ワッキーはグランプリを逃げ切りたいと思ってる。便所に書いてあるんだから、トイレットペーパーに。「グランプリ逃げ切り」って。そんなトイレットペーパー使ってる奴なんですよ、ワッキーは。
松井 本当なのそれ(笑)?
前田 福井に取材に行ってください。発見できるかもしれない。
松本 並びは20日にはわかるですが、最後に、サプライズはないですか?
松井 ないな。
前田 サプライズないな〜。
松井 もう平原、郡司、松浦がどこかが2つになることはないし。
前田 松浦も「新山ジカ」とか言わないし。
松井 サプライズはないよ。まあ佐藤と守澤がちょっと変わる...でもそれもないような気がする。
松本 取材している側からすると、サプライズをする選手たちじゃないかな、と。この9人は。もし並びが違ったりサプライズがあったときは前田くんが丸刈りにしますので、それで許してください(笑)。
netkeirin取材スタッフ
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