2022/12/02 (金) 12:00 24
高松競輪の「玉藻杯争覇戦(GIII)」が12月3〜6日に開催される。「KEIRINグランプリ2022」の出場9選手が決まり、平原康多(40歳・埼玉=87期)と郡司浩平(32歳・神奈川=99期)は今回欠場となった。平原の代わりは坂井洋(28歳・栃木=115期)だ。
坂井と平原は小倉競輪の「第64回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」の準決12Rで平原2着、坂井3着で一緒に決勝に進出した。坂井の逃げを平原がうまく援護して、ともに切符を手にした。お互いがお互いの仕事をして、3番手を締めて回った小原太樹(34歳・神奈川=95期)と上位独占だった。
平原と坂井は、おそらく「このレースをして決勝を決められた」ことにものすごく感動したと思う。場内も盛り上がりもすごかったし、ゴール後はもつれあうように喜んでいた。一番やりたかったレースだった。
共同インタビューに来た平原はうれしそうで、インタビュアーから「抱き合って喜んでましたね」と振られると、「そういう関係です」と答えた。シンプルな回答だが、受け取り方に幅のある、感じ方に複雑さのある言葉だった。
ひとつの切り口を考えると「後継者としての坂井」にバトンを渡すようなもの。喜んでいる姿を見ると、“平原から坂井へ”が浮かんでくる。選手たちには関係性があり、レースを重ねるごとに、その関係は深まり、また変わっていく。それが最高潮に達した瞬間だった。
おっと、『真面目?』の声が聞こえてくる。確かにこのコラムの読者は違う“関係”のことを聞きたいのだろう。
すでに“性”そのものがなくなった現代社会。すべては自由で、既成の概念は蹂躙され尽くし、カタストロフィとデコンストラクシオンの狭間で無方向性だけを有する緩慢なアンガージュマンが、………、や、やめようか…。
決勝は新山響平(29歳・青森=107期)が坂井の飛び付きをこらえ、番手から出て優勝した。その坂井の走りだが、狙いがわかりやすく、まさに競輪の戦いだった。
人がうらやむスピード感とさわやかさは、競輪っぽさを薄れさせる。しかし、坂井は持っている。“平原が”ファンが感じている「競輪の面白さ」を坂井はこれから体現していくことになる。
競輪祭の後、すぐに坂井の走りを見られることはファンにとって大きな喜びとなる。KEIRINグランプリ出場を控える平原と郡司の欠場は、ある意味、業務上やむをえないものといっていい。坂井の走りから、早くも来年のKEIRINグランプリすら感じられそうなことを、期待しよう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。