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猪突猛進

【清水裕友コラム】 有言実行の大偉業! 地元記念5連覇から運命の競輪祭へ「あと5走すれば決まる」 #13 猪突猛進

2022/11/17 (木) 18:00 29

施設改修前最後の地元記念に挑み、3月のウィナーズカップ以来今年2度目のVで有言実行の5連覇を達成。ファンの大声援に結果で応えた。競輪祭に向けて最高の弾みも付き、今年最後のGIでの大暴れの期待も高まっただろう。5連覇を達成した地元記念の裏側を余すところなくお伝えします。最後はお便りコーナーもあります。

(撮影:島尻譲)

ーー地元記念5連覇おめでとうございます。今年は桑原大志選手との地元ワンツーでした。

 ありがとうございます。(決勝で)落車もあったのは残念だったけど、優勝できて桑原さんとワンツー決まった。結果としては良かった。

ーープレッシャーも大きい中で結果を出し続けました。声援も凄かったんじゃないですか?

 初日から凄いお客さんの数で。思った以上にプレッシャーがかかった。去年ほど(プレッシャー)かからないだろうと思ってたけど、そんなことなかった。それにしても本当に凄いお客さんでびっくりした。走ってて気持ち良かった。

ーー初日が祝日(文化の日)だったのもあるかもしれませんね。その初日、特選は松浦悠士選手の前を回りました。

 初日に自分の脚を見ておきたかった。それとお客さんに自力で走っているところを見てもらいたくて。

ーーレースではどんな思いで?

 とにかく出し惜しみだけはしないように。力いっぱい走る事だけを。

(撮影:島尻譲)

ーー結果は6着でしたが、長い距離を踏んで主導権を握りました。

 スピードは凄く良かったと思うけど、出てからの感触がもうひとつで最後は失速した。でも調子自体は悪くないんかなと確認できた。

ーー二次予選は山下一輝選手との連係でワンツーが決まりました。ただ、出番が10Rだったのが驚きでした。

 僕も正直、エッて。びっくりした。悔しい思いをした。

ーー現地では、他の選手も不思議がっていたそうです。

 周りで言ってくれる人も多かった。自分の防府での結果を認めてもらってると思ったら嬉しい気持ちもあった。ただ、今まで防府記念を走っててこういうのは初めてだった。最近の自分が不甲斐ないってことです。

ーー捲りを決めて山下選手とワンツー。決勝後のコメントで、2日目から感触を掴めたという言葉がありました。

 自転車の乗り方ですね。2日目のアップのローラーでちょっと急におりてきたんです。乗り方のアドバイスとかいろいろしてもらってて、乗り方の意識を少し変えてみたら急にはまった感じで。これちょっと面白いなってなった。悩んでた部分がマシになって、“あぁこういうことなのか”と。最近ではなかった、いい頃に自然に出来ていた動きが出来るようになった。山下さんとは今年何回も連係してて、このレース後に「いい時のトルク感が出た。(今年の)今までで一番良かった」と言ってもらった。自分の感覚と、自転車の出方が間違ってなかったと思った。

「乗り方の意識を少し変えてみたら急にはまった」(撮影:島尻譲)

ーー急激に良くなったんですね。

 練習でも昔の乗車フォームとかさかのぼってやったりしたんだけど。初日はなかった感覚。でも2日目以降は最近の中では一番感触良く走れた。意識しないとできないことを、無意識で出来るようにしたい。以前はそうだったんで。

ーー準決勝は桑原大志選手と松浦悠士選手と3人での連係でした。並びはすんなり決まったのですか?

 桑原さんはどちらが前でも3番手とおっしゃってくださって。松浦さんとの前後もすんなり決まった。でも準決勝で一緒になるとは思わなかった。メンバーを見てびっくりしました。

ーー松浦-清水-桑原で並んだ準決勝。結果的には物議を醸すことになってしまいました。

 去年の(町田)太我の件は完全に焦りが招いた。今年も“なんとしても決勝に”という思いが強すぎて判断が早くなってしまった。松浦さんには申し訳ないと思ってます。1センターで2回振られて少し止まったと思ったところで、阿部(拓真)さんが内藤(秀久)さんの内をしゃくってるのが見えて、これはヤバいと思い仕掛ける形になった。結果的に正しい判断ではなかったかもしれないけど、正直走ってる中で凄く難しかった。

ーー桑原選手とワンツーで決勝進出になりました。決勝も自力勝負に。

 準決勝が終わった後にお客さんに「松浦がいなくて大丈夫なんか〜」って言われて、ちくしょー、絶対に優勝してやると思った。でも自分でもこのメンバー(郡司浩平、吉田拓矢との3分戦)では厳しいかなという思いもあった。ちょっと分が良くないかな〜って。それで逆に開き直れたのもある。決勝に関しては(宮本)隼輔の番手だった去年の方が緊張した。

ーー桑原選手とはレース前にどんな話を。

 今回は珍しく自分の意見があったので、それを伝えた。こうなったらこうとか。

山口県の先輩・桑原大志(オレンジ)と決勝進出(撮影:島尻譲)

ーーちなみにどういう内容だったんですか?

 1番車だったので基本は中団から。あとは後ろ攻めのラインの動き方を見て、先に斬るか上を叩くか。あとは東口さんの動きは気になっていたのでそこの対処もしっかりする。とにかく、連日仕上がっていたというか仕上がってなくても強い郡司さんを一番後ろに置くっていうのがセオリーだろうし。タクヤ(吉田)がライン2 車だったんで、その3 番手から運べたら一番分があるかなと。

ーー望みうる理想の展開になりましたね。

 展開的にはですね、でも駆けてるのがタクヤで、後ろに郡司さんがいる。たまたまはまってくれて捲れたけど「捲れるんかいな」と思いながら走ってた(笑)。

ーー最終HSすぎに落車がありました。音は聞こえましたか?

 聞こえたけど、誰がどうなったとか、後ろの状況を確認する余裕はなかった。音的に後ろの方だったので、桑原さんは大丈夫だろうというのはなんとなく。

ーー捲り切って桑原さんとワンツーが決まりました。

 1着なのとワンツーはすぐにわかった。すぐにガッツポーズしたかったけど、落車があったのでこらえた。その後はお客さんが喜んでくれたことに応えたかったので。嬉しかった。

ーー改修前最後の防府記念で5連覇を達成。地元のファンも大いに喜んだでしょう。

 5年前に獲ってからずっと勝ちたいと言い続けてきた防府記念を勝てて、今年も地元で上位を固めることが出来た。頑張ってきて良かったなと思う。

ーーいろいろな選手から子どもの声援が多かったというコメントを見ました。

 多かったですね。レースを見て、将来競輪選手になりたいと言ってくれたら嬉しい。僕らはレースで夢を与えるしかないので。そういう選手になりたい。

「レースを見て、将来競輪選手になりたいと言ってくれたら嬉しい」(撮影:島尻譲)

ーー今年も地元記念が終わりました。

 長かった。いつもの倍くらい(の長さ)に感じる。終わってしまえばあっという間なんだけど。プレッシャーが嫌な反面、ひと息ついたらちょっと寂しさもある。とにかく良かった。

ーー5連覇。これだけは誇れるというコメントもありました。

 誰もやったことないし、自分でも出来るとは思ってなかった。表彰式の市長さんの言葉でも“最後もまた地元の清水選手が”というのがあって、うるっと来た。泣いてないけど。響くものがあった。地元選手としてその場に立てて良かった。

ーーなぜここまで勝ち続けられるのでしょうか?

 なんでしょうね。気付いたらゴール線を先頭で通過している。地元にかける思いは誰にも負けないって思ってる。そこだけはっていう。いろいろな人の支えもあって。今回は特に感じた。

ーー決勝後に桑原大志選手が「清水はいい選手に育った」というコメントしたそうです。レース直後に桑原選手からかけられた言葉はありましたか?

“苦しかっただろうけど良かったな。本当、おまえが勝ってくれて良かった”と言ってもらいました。

「本当、おまえが勝ってくれて良かった」支えてくれた先輩・桑原大志の言葉が胸を刺した(撮影:島尻譲)

ーー防府競輪場でのレースが約2年間ありません。来年は違う場で防府記念が行われることになります

 僕にとってはいいリフレッシュになる。一回いい休憩ですね。毎年、寿命が4歳くらい縮まってたから。正直キツいのはキツいけど、それくらいプレッシャーがかかった方が結果が出るのかも。まぁそういうプレッシャーを味わえるのも自分だけの特権ですからね。

ーー終わってから数日が経ちました。疲労感もあったのでは?

 疲れた。でもすぐに競輪祭があるので。乗り方も見えてきたものがあるし、少しでも精度を高めて自分のものにしていかないと。日にちがあるので上積みは出来ると思う。

「毎年寿命が4歳くらい縮まってた」地元記念の重圧はすさまじい(撮影:島尻譲)

ーーいよいよ、全てが決まる最後のGIを残すのみになりました。

 グランプリに出る、出ないに関しては現時点ではプレッシャーはそこまでない。ただ、(賞金ランキング)9位で迎えたことがないので、開催に入ったら感じることもあるかも。今のところはピリピリするようなことはないですね。

ーーしかし、グランプリ出場争いは周りが騒ぎ立てるでしょうね。

 こればっかりはなるようにしかならん。競輪祭を獲るつもりで走るだけ。そもそも焦るような位置にいる自分が悪い。今年にいたってはいいレースがほとんどなかった。逆にこの位置にいられるのが不思議なくらい。その分も競輪祭で発散させたい。近況の成績を考えたら厳しいと思ってた防府記念の5連覇も、アクシデントはあったけどなんだかんだで達成できた。競輪祭もなんとかなるかもって思ってる。あと5走もすれば決まること。楽しみっすね。

ーー昨年の競輪祭は1走目で落車のアクシデント。2走目は9着で、まさかの一次予選敗退になってしまいました。相性のいい前橋と同じドームが舞台ですが、競輪祭との相性はどうなんですか?

 競輪祭自体が独特な雰囲気がある。なんかせわしないというか。前橋とはちょっと違うかな。でも競輪祭も最初はいい結果を残せていたんですよ。最初の2年が良くて、ここ2年が悪い。順番的には今回はいいんじゃないかな。とにかくやることをやるだけ。その結果、(グランプリに)出られればいいし、出られなきゃしょうがない。ただ、グランプリに出るつもりで走る。その気持ちだけはしっかりと持って戦いたい。

「グランプリに出るつもりで走る」いざ、競輪祭へ(撮影:島尻譲)

読者から届いた質問コーナー

ーー中日ドラゴンズから始球式の依頼があったら受けますか? いつか見たいです!

 受けないっすね。してみたい気持ちはあるけど、人前に出るのが苦手。あまり注目されたくないので。地元記念の表彰式だけは別です。

ーーお誕生日(11月9日)おめでとうございます!プレゼント何かもらいましたか? もしくは買いましたか?

 特に何も貰ってないですね。自分で買ってもない。今は欲しいものがないので。ちょっと前に車を買い足したけど。

ーー28歳おめでとうございます。誕生日はどんな風に過ごされましたか? また、どんな一年が待ち受けているとおもいますか?

 普通に練習して、飯食って、風呂入って、寝た(笑)。一年、あっという間。何があったとか振り返らないし、淡々と一年が過ぎていく感じですね。

ーーファンの方からプレゼントで最近嬉しかった物ありますか?

 本場で名前を呼んで貰えるのが一番嬉しいです! あと、僕の絵がデザインされているTシャツを頂いたんです。それは嬉しかったですね。

(撮影:島尻譲)

ーー新田祐大さんがグランドスラムですね。清水選手はあと5つ。20代のうちにどうでしょう?

 厳しいでしょう。新田さんは競輪界をずっと引っ張ってきた方。おめでとうございますとしか言えない。GIIにグランドスラムがあれば、あとは共同通信社杯だけなんだけど…。あっ、ヤンググランプリも獲ってなかった。ダメですね。僕はまぁ地道にマイペースでやっていきます。

ーー防府でGIがあれば増えそうな気がしますが。

 胃が何個あっても足りない。防府でGIやGIIとか、体が持つ気がしない。

ーー防府記念、レース後の桑原選手のコメントに泣けてきました。桑原選手とは普段(距離感とか)どのような感じですか。一緒に練習する機会は多いですか?

 お互いバンクで練習する方なので、一緒にやる機会は多いですね。若い頃からレースに関しては厳しく言われてきた。そういうのもあって、地元記念の決勝で連係出来て、ワンツーを決められて嬉しかった。

ーー隅田選手は実は35歳なんですが、何歳くらいだと思ってましたか?

 期が一期後輩なんです。31、32歳のイメージだった。35歳とは思わなかった。そんなにいってるって事にびっくりした。というようにヨイショしといてください(笑)

隅田洋介の中国地区移籍は心強い (撮影:島尻譲)

(取材・構成=netkeirin編集部)

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清水裕友

Hiroto Shimizu

清水裕友(しみずひろと)。山口県防府市出身。105期。日本競輪選手会山口支部所属。師匠は國村洋。ビックレースはGI「読売新聞社杯全日本選抜競輪」(2020年)、GII「サマーナイトフェスティバル」(2020年)、GII「ウィナーズカップ」(2021年)。

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