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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】43歳からはじめる交換日記 平原康多とのやりとりに中川誠一郎「興奮しました」♯18

2022/11/06 (日) 18:00 66

気持ちも骨も折れたGI、3Vの超一流・中川誠一郎。10月前橋競輪「第31回寬仁親王牌(GI)」で戦線復帰したものの、拭えぬ違和感を覚え1走して途中欠場となった。おかげで10月はほとんど無職。暇を持て余したアスリートが痛恨の日々を振り返ります。 【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】

●表紙の写真0 (撮影:R.Nakagawa)を入れる
(撮影:R.Nakagawa)

ーーお久しぶりです。だいぶ、やさぐれているように見えますが、ケガの状態はいかがですか。

 おかげさまでだいぶ回復しています。くしゃみもできるし、ヨコになって寝られるし、晩酌も解禁しています。ムリな態勢にならなければ自転車にだって乗れますよ。

ーーここ1カ月は無職状態でしたが、どのように過ごしていましたか。

 入院をしていないので、ずっと家にいました。10月はバイトも無かったし、何もせずムチャクチャ暇でした。こんなに時間を持て余すのかっていうぐらい。

ーーまだ本格的な練習はできないわけですか。

 今でこそ少しずつできていますけどね。まともに練習ができないときは漫画やゲームしかすることがなくて。そうなると時間が余っちゃう。あまりにも暇だから高木(竜司)さんを呼び出して2時間近く雑談したこともありました。

ーー家にいる間、気の迷いもあったそうですね。

 あまりにも肺が痛すぎたときがあって、もう嫌だ…このまま引退しようって気持ちが落ちたんです。

ーー高木真備さん、村上義弘さん、三宅伸さんに続き、まさかの電撃引退ですか。

 そのクラスに並べてくれますか! でも、よくよく考えたら、辞めたらこの暇な日々がずっと続くのかと気がついて。やっぱり、もうちょっと選手を続けようと気持ちが翻りました。

●熊本記念写真1(集合写真の右上に、遠足の欠席者みたく中川の写真を合成する。四角囲みか丸囲みで。中川写真はプロフィール写真のやつを使う)
大事な大事な地元記念は無念の欠場となった

ーー欠場した10月の地元記念(熊本競輪開設72周年記念 火の国杯争奪戦in久留米)はどう見ていましたか。

 応援団長として観戦していました。ネット中継とかで、ある一定数オレに走って欲しかったってファンの人の声があったので、まだオワコンじゃなかったなと知れてよかったです。

ーーそんな声、どこであったのですか? 若手の活躍が際立っており世代交代の匂いを色濃く感じましたが。

 いやいや。(中本)匠栄から「来年は鎖骨折れていても走ってください。僕にはあの重圧はムリです」って言われ、(松岡)貴久からは「力不足ですいませんでした」ってLINEが来た。やっぱり、オレっていう精神的支柱はまだまだ必要だったということです。いわゆる“キングカズ枠”ってところですか。

ーーまた、自分で精神的支柱とか言うんですね。

 そろそろ、誰にも言われなくなるでしょ。だから、精神的支柱枠を今から施行者にアピールしておかないといけないのですよ。

●前橋2

ーー前橋競輪「寬仁親王牌」から復帰しました。初日、一次予選は上田(尭弥)選手に任せて7着。上田選手が膨れるとみるや自力に転じました。

 頭の中には怪我する前のいつものイメージが残っているんです。ガルベス(上田)が行けないとわかって自分でまくろうと車を持ち出したら、3コーナーあたりで「あっ!」って気付いたんです。

ーー「オレ、まだ怪我人だった」って感じですか。

 そうです。まくっても1秒ぐらいしか車が出なくて、フォームもガタガタ。なんでこんなに車が進まないんだって焦っていたら、ああ、そういえばオレ鎖骨、折れてたわって。

ーー初日を走って途中欠場しましたね。

 今、来年2月の「全日本選抜競輪」の選考期間中で出走本数が足りないんです。だから走ってもよかったけど、さすがにまだだなと思い大事を取りました。

ーー「全日本選抜競輪」の権利は大丈夫なのですか。

 あと9走残っていて、今月の静岡FIと小倉競輪祭を走れば本数はギリギリ大丈夫。あとは点数次第です。

ーー中川選手は昔から特別戦線の“権利取りの名人”と豪語しています。そこは譲れないところですね。

 デビューから15、6年ぐらいは何とか帳尻を合わせてビッグの権利を取ってきました。でも最近はそんなことをする必要も無く、今回は久々に昔の気持ちを思い出しています。

ーーそれは超一流選手になったから余裕ってことですか。

 だって最近は当落のボーダーにいるとかが無かったでしょ。新聞記者さんからその手の質問があると「そういうの、オレに聞くの失礼じゃない?」ってなるじゃないですか。

ーー本当に言っていそうで、何か嫌な感じが滲みでています。

 このワタクシからすると「その権利、持っていますけど何か?」みたいなもんですから。つい5、6年前までは1走ごとにめちゃくちゃ電卓を弾いてそわそわしていたくせに(笑)

ーー状態面を知る上でも前橋を走って正解でしたね。

 そうですね。前検の前日に『ドラクエウォーク』の都合で富岡製糸場に足を運びました。普段行けないところへ行けたし、群馬まで行ってよかったです。

●村上写真3
村上義弘

ーーさて、ここからは最近起きた競輪界のニュースについて、中川選手にご意見をうかがいます。

 レースを走っていないから大した話題もないし、ネタ不足を補う苦肉の策ですね(苦笑)。他力本願もはなはだしいですが、バイトのシフトに穴を空けないこの姿勢、褒めてください。

ーー村上義弘選手が突如、引退しました。村上さんとの思い出は何かありますか。

 一番ビックリしたのは、レース中にオレに激突してきて、後から「当たったっけ?」って言われたことです。気持ちが入りすぎていたんでしょうね。もう唖然としましたよ。ああ、住む世界が違う人なんだと。

ーーまさに一戦入魂だったということですね。

 すごいと思いました。そんなに入り込めるんだって。入り込んでいるときはたぶん言葉が通じないぐらい集中されていたと思います。周波数が違うし、もし話をしたとしても翻訳する人がいないと成り立たなかったかもしれません。

ーー普段からですか。

 普段から翻訳が必要だったら、それはそれで変でしょ(笑)。宿舎とか風呂では、いろんな話をしてくれて超面白い方なんです。魂OFFって感じで。

ーーちょっと、ディスっていませんか。

 いやいや、だから余計に競輪場でのギャップがすごかったってことです。ローラー場でアップ中の村上さんを見ると「恐ろしい」ぐらいしか言葉が浮かばなかったですもん。

ーー怒られませんか、これ。

 アップ中からすでに入っているから、こんな人と今から戦うのかと思ったら恐怖しかなかったです。ひたすら自分と葛藤をしている、そんなパワーを感じました。

●新田写真4
新田祐大

 そういえば新田(祐大)の話はしなくていいんですか?

ーー新田選手ですか。「寬仁親王牌」でグランドスラムを達成しましたね。

 すごいですよね、グランドスラム。過去には(井上)茂徳さん、滝澤(正光)さん、神山(雄一郎)さんの3人だけですよ。どんな内容であれ結果こそが真実ですから。

ーー中川選手もGIを3本獲っています。あと残り3本ですね。

 これは今まで誰にも言っていなかったのですが、実はオレって「上半期グランドスラマー」という称号を持っているんです。

ーー何ですか、それは。

 獲ったGIが全日本選抜とダービー、それに高松宮記念杯。これって、ぜんぶ6月までに行われる前半戦の特別競輪なんです。だから今後はオレのことを「上半期グランドスラマー」って書いてください。

ーー自分から新田選手の話を持ち出したのは、これが言いたかったからですか。

 そうです。今の流行りで略すと「半グラ」ですか。「半グレ」じゃないですよ。

ーー暇だったからずっと考えていたのですか。

 そうですよ。あまりにも暇だったから、前橋の決勝はテレビの前でかじりついて見ていたし。何なら「半分グランドスラマー」でもいいです。とにかく「半グラ」を推して欲しい。ダメですかね、これ。

ーーダメとかではなくて、そもそもそんな称号は無いでしょう。

 競輪業界には後〇さんみたいな「半グレ」っぽい匂いのする方はいますけど、「半グラ」はいないでしょ。

ーーまた、そういう話を。伏せ字にすれば何を言っていいってわけではありませんよ。

 いやいや、何て言ったって後〇さんですから。家庭菜園で忙しいでしょうし、そもそもこのコラムなんか絶対に読んでいませんよ(笑)。これからは「半グラの誠ちゃん」でよろしくお願いします。

●荒井写真5(荒井崇博 左から2人目)
荒井崇博 (左から2人目)

ーー10月29日に荒井(崇博)選手の通算500勝セレモニーが武雄競輪場で行われました。

 セレモニーの話は聞いていたんですけど、荒井さんは「オレは行かない」とか「スーツが無いから行くときはスーツ代を請求する」とかムチャクチャ言っていたんです。

ーー事前にそんなやり取りがあったのですか。

 そうしたら、バッチリとスーツ着てキメて「グランプリ出たいっすね」みたいなことを言っていたでしょ。もう、はぁ? って感じで、ネットに記事が出たらすぐにスクリーンショットして「キメ顔でスーツ着とるし」ってLINEしましたよ。

ーー返事が気になります。

 そうしたらすぐに「(ネットに)流された!」って。ああいうの、どうやら嫌いじゃなかったみたいです(笑)。

ーーセレモニーでは普段とは違って神妙な面持ちでした。

 あまりにも暇だったから武雄まで行こうかと思ったぐらい。客席の一番前から「荒井〜!」とかヤジろうかと。でも、さすがに武雄は遠かった。

ーー中川選手との500勝対決に終止符を打ちました。

 すでに500勝の記念品を作ったみたいで。支部に話をつけて制作費用の一部を捻出してもらうかも、みたいな話をしていました。どんな交渉をしたかはわかりませんが(笑)。

ーーなかなか、やり手ですね。

 口が立つ人ですから。あっ、いましたねガチな「半グレ」が。忘れていました。近くにピッタリな人がいたわ。後閑さん、ごめんなさい。

●平原康多写真6
平原康多

ーー最後になりましたが平原(康多)選手のコラムに再度、中川選手の話題が登場しました。

 興奮しました。まさか、平原と交換日記ができる時代がくるとは…。

ーーこのコラムは交換日記だったのですか!?

 そうですよ。間違いなく交換日記。正式な名称は「全世界公開交換日記」ですけど。

ーー中川選手はレースでは平原選手に苦手意識があるそうですね。

 そうなんです。昔から相当な平原アレルギーをこじらせていて。そんなオレが、現役生活23年、43歳になってまさか平原と交換日記をする世界が訪れるとは。ちょっとうれしかったし、平原のことを追いかけている女性ファンの気持ちがわかりました。

ーー平原選手側は「コラムを通して間接的に関わるぐらいがちょうどいい」と控えめでした。相手を傷つけない優しい断り方のようにも見受けられましたが。

 いやいや、全世界公開交換日記はこれからも広げたいですね。一方的でもいいですから。

ーーもし仲良くなって、2人で会うことがあれば顛末を教えてください。

 インスタライブとかで配信でもしますか。そのときは、若い頃の失敗談や、イメージが崩れるような危ない話をぜんぶ白状してもらいましょう(笑)。

●質問写真7

ーー今月も質問が来ておりますのでお答えください。

Q、中川選手は位置取りもしないし淡泊だし、内に切り込んだりもしないので、なかなか落車をする印象がありません。それだけに今回の落車は相当こたえたのじゃないですか?(東京都/40代/男性)

 オレの走りって大塚(健一郎)さんとは対極の、誰にも迷惑をかけない平和で美しい競輪だったじゃないですか。安全運転だけが取り柄だったのに、事故ってゴールド免許がアウトになりました。5、6年無事故運転だったのに。大塚さんは1カ月免停クラスですけど(笑)。

Q、熊本のニュース(天草のうまかもん)のインタビューに出てきて、素人っぽく答えていましたね。(?/?/?)

 あまりにも暇だったので『ドラクエウォーク』で天草の「﨑津教会」って世界遺産に登録されている観光地に行ったんです。ウロウロしていたら、テレビクルーに声を掛けられて。聞くと「今日からお披露目のステンドグラスの特集です」って言われて。こっちは『ドラクエウォーク』で来たのになあって思いながら「あ、世界遺産に合いますね。キレイです」みたいなウソっぽいコメントをしたんです(笑)。

 テレビでは「観光客」と表記されていたそうです。その放送を見ていた(西島)貢司さんと(野口)大誠からすぐにLINEが来ました。夕方に一家団欒で夕飯を食べていたらいきなりオレが出てきて、しかも「観光客」ってなっていて驚いたみたいで。この匿名の質問者、2人のどちらかじゃないですか?

Q、マッチングアプリでマッチした女性にお店に連れていかれたのですが、そこがぼったくりバーでした。業者かそうでないかを見抜く方法を教えて下さい。(神奈川県/40代/男性)

 これは難しい…。職業柄そういうところには行かないように注意していますから。ただ、もう10何年以上前に、とても話せないような危ないことがありました。人生で3本の指に入るぐらいのエピソードでしたが…。引退した後、どこかのトークショーとかでお話できればとしたいと思います。

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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