2022/09/15 (木) 12:00 22
9月16〜19日の日程で名古屋競輪の「第38回共同通信社杯(GII)」が開催される。昨年は岐阜競輪場で行われ、山口拳矢(26歳・岐阜=117期)が錚々たる中団からのまくりで制圧。地元で衝撃のGII初制覇を果たした。
その後は落車が続いて、派手な活躍を見せることはできていない。しかし、この時間がとても大事だと感じている。苦しんだ奴は、強くなる…。
偉そうで申し訳ないが、当方も年を重ね、いろんな選手を見てきた。今を苦しむ拳矢の中には、本人や父上(幸二、引退=62期)には分からない輝きが潜んでいると思う。もしかしたら、師匠の富生(52歳・岐阜=68期)には見えているのかも…と思う。
netkeirinの幸二さんの原稿に何度か書かれているように、拳矢は平坦な道のりを歩いていない。おそらく本人は平坦な場所を歩きたいように推察するが、そうはならない。
“天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず”は福沢諭吉の言葉で、これは過酷にも、人間には抗えない不平等があることを示唆している。コーエーという会社が作っているゲームソフトで、戦国時代を取り扱うものには「魅力」というパラメータがある。拳矢のそれは、高い。
人は、人に魅かれる。デビュー前の困難はありつつも、デビュー後の進撃はきらびやか。拳矢は輝きを放つ。そして今、壁に当たっている。当たり続けていいと思う。穏やかな食卓を囲み、「パパ」と呼ばれることが幸二さんの唯一の癒しかと思うが、歯を食いしばって“立場”でモノを言う父の威厳がある。「苦しんでもいいから、それに負けるな」という声なき声がある。
中部が劣勢と言われる現状にあって、拳矢の存在は重要だ。富山記念(瑞峰立山賞争奪戦)、岐阜記念(長良川鵜飼カップ)と中部連係で結果を残せなかったが、その戦いぶりは誰もが見ている。中部の若手選手だけでなく、中堅、ベテラン選手も「やらねば」と感じているだろう。
名古屋で争われるビッグレース。自動番組の勝ち上がりだが、中部勢の一つひとつの戦いに目を凝らしたい。
GII初参戦の中野慎詞(23歳・岩手=121期)も青森記念の4日間を終え、走りたくてたまらない現在だと思う。選手たちが思いをはじけさせるシリーズが、楽しみでならない。
最終日(19日)にはガールズケイリンのティアラカップが行われる。特別な一戦だ。児玉碧衣(27歳・福岡=108期)は「最初で最後の大会かも知れない。その優勝者に名前を刻みたい」と、刃をむき出しにしていた。
現実的に優勝賞金200万円が持つあらゆる意味もあるが、このレースを走れることは、ガールズケイリンの選手にとって、誇り。10周年を喜ぶこととこれから、思うべきことは多い。
そんなさまざまな思いを代表し、一身にまとい、戦う7人の姿を見ることができる。発走機に並ぶ7人の姿に、敬礼、だ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。