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脇本雄太の競輪無双十三面待ち 〜そして伝説へ〜

【脇本雄太のダービー回顧】どこか冷めた自分がゴール後にガッツポーズを繰り返した理由

2022/05/20 (金) 18:00 40

2度目のダービー王に輝き、“競輪無双”を改めて証明した脇本雄太。いわき平競輪場で行われた「第76回日本選手権競輪」は、乾坤一擲の勝負を見事にものにした。決勝を、また、決勝までの道のりを冷静に振り返りつつ、ゴール後のガッツポーズに込められた思いを明らかにした。(取材・構成:netkeirin編集部)

ダービー王となった脇本雄太。年末のKEIRINグランプリ制覇にも期待がかかる(撮影:島尻譲)

競輪界を引っ張る姿に対戦した選手たちも…

「あんなのはなかなかないですね。でも自分の中でも感情を込めて、っていうのは最初のガッツポーズだけなんですよ」

 叩き下ろすような渾身のガッツポーズで喜びを表現した。今年は出場できるGIが限られる中での勝負。それをつかみ取った意味、が拳に込められていたが、その後も繰り返したのは、違う力が生まれたからだった。これまでは「同じラインの人から肩をポンポンと叩かれるのはあるじゃないですか」と、ボソっとつぶやく。

 しかし今回は「違うラインの人からも、肩を叩かれたんです。(佐藤)慎太郎さんとか、荒井(崇博)さんとか…。違うラインの人から祝福されて…」と、戦った別線の選手からの率直な祝福が沁みた。敵として戦ったとはいえ、ワッキーは競輪界を引っ張り、東京五輪で生き様を示し、競輪選手のすごさを世にアピールしている選手。

 また、動けなくなるほどのケガから立ち直った男。負けてなお、ワッキーを祝福する思いを、対戦した選手たちが隠さなかった。そんな彼らの思いが、ガッツポーズを繰り返させたという。


眞杉との勝負は昨年の向日町記念が伏線に

 決勝戦、勝つことは全く容易ではないメンバーと、展開だった。眞杉匠が踏み上げたシーンはどうか。「あれはあれで正解。ボクが同じ立場でもあの走りをしています」。痛いほど、真杉の心はわかる。勝ち上がりをワッキーは先行で上がってきた。決勝も「緩めたら、行かないとと思ってました」ーー。「眞杉は、叩かれたら終わりでしょう」。

 そして「去年の向日町記念の決勝も、眞杉君にはグサっと来ていると思うんですよ」。競輪はメンタルの戦いと断言するワッキーの分析がある。去年の9月の向日町記念決勝で真杉は脇本の2周突っ張り先行の前に何もできずに負けている。

 今回のダービーは滞留制限を設けた中でも多くのファンが詰めかけ、熱い声援を送った。「いわき平自体、ものすごく盛り上がる場のひとつだと思っています。去年のオールスターが無観客だったので、それもあってか、違いましたね」。ファンも待ちわびた瞬間だった。

故障を乗り越え2度目のダービー制覇、純粋な嬉しさは変わらないけど

 優勝につながった最大のポイントは「準決が終わってラインを引き連れていけた」ところにあった。その前の勝ち上がりもラインで決めている。「差されているのは今の状態というか、距離もありますからね」と材料視する部分ではない。それに「イナショー(稲川翔)さんはイナショーさんなんで! いつまでも差されるイメージなんですよ(笑)、もう」。

準決勝では近畿ライン3車で上位を独占(8番が脇本選手)。優勝に大きくつながった1戦だった(撮影:島尻譲)

 これで古性優作と年末の平塚グランプリ出場が決まった。「2人以上いるなら心強い。4人の時も経験しているんでね、ボクは。いかに大事なことか、わかっています」と、グランプリに近畿ラインで多く乗ることの重みを語る。その古性だが、決勝は慎太郎にさばかれてしまった。

「慎太郎さんだけ、でしょうね。あんな動きができるのは。3番手の時の動きもわかっているし、眞杉君、平原(康多)さんの立ち回りも理解している」。

 人の後ろを回るのは、実に難しい。実感している。もちろん、あの人にも聞いた。「村上(義弘)さんと話させてもらったんですけど、思考の切り替え、これが難しいんです」。FIでうまく連係を決められなかったのは「これまで、かばう、ということをしてこなかったツケが回ってきた」と表現する。

 克服するのは簡単ではなく「村上さんみたいに俊敏じゃないし、参考にはするけど、真似はしない。独自で築いていかないといけない」と模索していく。そんなに機会も多いわけではないので、これはまたこれからの話だ。

他人との関係を大事にする、自分の事以上に熱くなる

 復活のダービーV、グランプリ決定、S班返り咲き…と結構、衝撃的な事実を前にするが、なんとも冷静…。松戸でダービーを勝った時とかとは違う? の問いには「ゴールした時の気持ちは一緒ですね。純粋にうれしい。ケガを乗り越えたから、とかいうのもない」。遠くにいるワッキーが話す。

「自分に対しての感情が、割と薄い」。

 脇本雄太の体の中にいるワッキーは、「もっと喜べよ」と欲しているかもしれない。が、「自分自身に興味を持てないんです。最近、ゲームする時も一人でできないですもん。誰かとコミュニケーションしたいがためにやりますし」が口から出てくる言葉。人に教えて、それがどうなるか、とか、他人のことの方で感情的になるのがワッキー。

 ダービーV後も平然としていて「1週間くらい休むかな…とか思ったけど、ちょっと休んですぐ練習始めてましたね。出られるGIが限られる分、照準を絞りやすい。オールスターに向けての体作りを、というところです」。競輪無双十三面待ち…。当コラムのタイトルの名付け親である中川誠一郎が、「まあ、ワッキーは、ワッキーやもんね」と笑っていそうだ。

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脇本雄太

Yuta Wakimoto

脇本雄太(わきもとゆうた)。1989年福井県福井市生まれ、日本競輪学校94期卒。競輪では特別競輪9勝、20年最優秀選手賞を受賞。自転車競技ではリオ、東京と2度オリンピック出場、20年世界選手権銀メダル獲得。ナショナルチームで鍛えられた世界レベルの脚力とメンタルは競輪ファンからの信頼も厚く、他の競輪選手たちに大きな刺激を与えている。プライベートではゲーム・コーヒー・麻雀など多彩な趣味の持ち主。愛称は”ワッキー”。

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