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【松浦悠士の大目標】絶対にリベンジ果たす! 今年狙うは“賞金王”のみ!

2022/01/25 (火) 19:00

 みなさん、こんにちは。松浦悠士です。今年もよろしくお願いします。今年最初となる今回のコラムでは昨年末の『KEIRINグランプリ』と新年初戦となった『和歌山グランプリ』を振り返ります。また、1年のはじまりにつき、今年の目標を書いていきたいと思います。

今回のコラムは出場レースを振り返りつつ、今抱く決意を刻む(撮影:島尻譲)

静岡のKEIRINグランプリを振り返って

 最初に昨年末のKEIRINグランプリを振り返りたいと思います。優勝できなかったことに対して『切り替えられたこと・切り替えられなかったこと』があります。まず自分の状態に関して言えば、しっかりと力を出せる感覚で仕上げていましたし、精神的な部分でも良い感覚を持って静岡に入ることができていました。

 硬くならずにリラックスしてレースを迎えられたのですが、今思えば、リラックス状態が逆に良くなかったかもしれないと考える部分もあります。冷静にさまざまなレースパターンを思い浮かべられていたので、裏を返せば「この戦い方しかない」と決め打ちする感じはなく、選択肢を広く持っていたんです。

 例えば関東ラインは「この戦い方しかない」とやることが決まっていたと思いますが、そういうのも必要だったのかな、と感じます。選択肢が広いと柔軟に対応できる範囲も広くなりますが、その分悩みも生じますし、瞬時の判断も難しくなります。グランプリでは対戦相手の心づもりを読み切れず、ラインとして作戦を立てる上でミスをしていたのかもしれません。今後の糧にしたい・するというのは当然として、ミスをしてしまった事実に悔しい気持ちが残っています。

清水裕友選手と松浦選手の中国ライン。赤板で出切れず、戦局は苦しい展開となった(撮影:島尻譲)

切り替えられたこと・切り替えられなかったこと

 レースが終わって裕友の「やっちまった」というような顔を見た時に、気持ちを切り替えなくてはいけないと思いました。僕と裕友の中では何がダメだったのかお互いにわかっていたし、「ああした方が良かった」「こうしていれば違った」と振り返る必要はなかったんですよね。ブレスコントロールの10分間で悔しさと向き合い、「来年リベンジする以外にない」という気持ちに切り替えました。

 ただし「次回頑張るしかない」というのは、あくまでも選手としての『僕個人の話』でしかありません。今でも残っている悔しさがあります。それは「ここに賭けるぞ!」とお客さんが自分に期待してくれて、その期待に応えられなかったことです。これは一発勝負の戦いですし、2021年の静岡グランプリは終わったので取り返しようがないのですが、お客さんに対する申し訳なさも含めて切り替えが難しいです。

 僕は「次回頑張る」でいいかもしれないけど、静岡のグランプリを楽しみに、僕を応援してくれたお客さんの気持ちを考えれば、やっぱり結果を出さなくちゃいけないし、そこで勝ってこそだと思っています。僕が優勝するレース展開を予想し、車券を買ってくれたお客さんに「予想通りの展開だ!」と熱くなってもらえるレースをして、勝って一緒に喜びたかったです。自分が勝てなかった悔しさよりも、応援してくれる方と喜べなかった悔しさが胸にきました。

 この気持ちは忘れず、しっかり今年を戦っていきます。

中国ゴールデンコンビはさらに強さを増し、リベンジへと向かうに違いない(撮影:島尻譲)

年内初戦・和歌山グランプリを終えて

 今年に入って初シリーズの和歌山でしたが、なかなか思うような結果を出すことができませんでした。一昨年も去年も、新年一発目のシリーズでは優勝することができていたので、ホッとした安心感を持ちながら「よし1年が始まったぞ!」と幸先良いイメージで明るく帰れていたんですよね。今年はそうはならず、「マズいな…」と首を傾げてしまうような感じで帰宅しました。良い部分も悪い部分も見えているので悲観的にはなっていませんが、少し焦燥感もあるのが、今の正直な気持ちです。

 それでは詳しく振り返っていきます。初日と二日目は踏んだ感じも悪くなかったのですが、あとひと伸び足りない感じがしました。特に初日に関してはきちんと仕掛け切りたかった、と反省しています。いつもより風がうまく使えず、前走選手の作った煽りをもろにくらってしまい、加速させることができませんでした。準決勝は自分の持ち味を発揮し、気持ち良く1着を獲れたので良しとしていますが、そのほかのレースはフラストレーションを感じ、どうにも厳しかったです。

 ただ、失敗や敗戦から強くならなくてはいけないですし、安定させるための“気づき”を得たりもするので、今回も開催が終わってから自転車のセッティングを見直すことができました。和歌山は昨年の競輪祭の前にセッティングしたものですが、バンクコンディションによって微調整が必要だったように思います。和歌山は寒くてバンクが重たかったのですが、そこに対応できていない感じがしました。

 ひとつひとつ違和感を見つけ、解決し、これからも試行錯誤をしながらレースに臨もうと思います。

念入りに自転車と向き合う松浦選手、違和感があれば答えが出るまで探ると本人談(撮影:島尻譲)

決勝の連係は次に繋がる経験

 思う結果は出せない決勝戦となりましたが、この先に繋がる経験もありました。決勝は熊本の松本秀之介君の番手を回り、ラインを組んで戦いました。いつもなら自力を選択する場面だったと思いますが、松本君と話をして「ラインで戦いたい」という言葉を聞き、一緒に戦おうと決めました。

 実際のレースでもホームから目一杯駆けてくれた彼の気持ちが伝わってきましたし、ラインに対する意識を見て「組んで良かった」と思っています。残り一周、松本君の後ろで「こんなに強いのか!」と感じながら走っていましたし、次また連係できる機会が楽しみです。その時は一緒に勝ちたいと思います!

結果は出なかったが収穫が多かった松本選手との連係(撮影:島尻譲)

 競輪を応援してくれるファンのみなさんの中には「地区」を重んじる人もそうでない人もいると思いますので、少し僕の考えを書きたいです。例えば今回の松本君は九州地区の選手ですが、僕はあまり九州を他地区とは思ってません。山崎賢人君に付かせてもらったこともあるし、熊本で言えば上田尭弥君とも走ってみたいな、と興味があります。園田匠さんや中本匠栄さんとの連係もあるので、あまり遠い地区ではないという認識なんですよね。

検車場では地区に限らず意見交換も。松浦選手と話し込んでいるのは熊本の嘉永泰斗選手(撮影:島尻譲)

 僕は完全に自力型の選手というわけではないし、良いレースをしている選手がいれば他地区でも番手回りを考えますし、対戦相手を見て「やっぱりここは自力で勝負したい」など、1着を獲るためにラインというものを捉えて、これからも柔軟に考えていきたいです。

今年の目標は『賞金王』

 昨年のコラムでは年初に「ダービー王になりたい」と目標を掲げましたが、今年は『賞金王になりたい』が目標です。賞金王、これに1本狙いを定めて精進していきます。結果にこだわるレースを積み上げていくことに意識を置きたいです。

 僕の場合、結果だけを求めて勝ちを意識し過ぎると調子が狂い、うまくレースを組み立てられないことが多いです。でも、その点を踏まえつつ自分の走りを磨きあげ、しっかりと確定板をとらえる意識を持ちたいと思います。

 僕は過程を大事にしてこそ、そこに結果が付いてくるイメージを持っているので、「結果、結果」と走れば楽しいレースも楽しくないかもしれません。でも「絶対に3着以内に入るぞ」と自分の胸に指標を持って、成績に向き合って行こうと思います!

有言実行で“ダービー王”になった2021年、今年も大きな目標へ挑戦する(撮影:島尻譲)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は4問の質問に答えていきます!

今年最初の読者質問は4つ、昨年と変わらず真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー競輪初心者です。昨年松浦選手が函館に来たときに現地観戦し、強さに惹かれました。ひとつ疑問に思っているのですが、競輪はラインの先頭を走る選手と番手の選手はどちらが有利ですか? 見ていると番手の選手が有利に思います。

 これは選手によってそれぞれですね。僕はラインの先頭で走ることもあれば、番手を回る時もあります。戦う相手の特性を考えて「自力で勝負したいな」とか「番手を回りたいな」とか、その時々の思いも違います。ただ、どちらが得意か? と聞かれれば、僕は番手の方が得意です。それでも一概に有利不利とはジャッジできないです。

 例えば僕のように「番手が得意だ」という選手でも、番手回りの方が総合的なリスクを抱えているんですよね。前を走る選手の判断によって展開不利になってしまったり、アクシデントに見舞われたりすることもあります。

 ラインを組んでいる以上、前を走る選手が危険な判断をしたり、時に失敗したりしても、それを含めて自分の判断とするのが競輪のレースです。競輪界にはたくさんの選手がいて、たくさんのラインがあります。「この選手とこの選手が組むとこういうレースになる」とか考えながら予想すると、より車券推理も楽しくなると思います!

ーー宿舎ではどのように時間を過ごしていますか? DVDや本を持っていく選手が多いようですが、松浦選手が必ず持っていくものはありますか?

 パッと思い浮かぶものがあんまりないので書き出してみます(笑)。決まって持っていくのはコンタクト、加湿器、マットレス、乾燥を防ぐための「ぬれマスク」、ホットアイマスクですかね。

 そのホットアイマスクですが、必ず持っていくものの僕自身はあまり使わないことが多いです。裕友がよく使うんですが、今まで結構僕の分をあげてます(笑)。ほかには、分宿になりそうなときはゲームボーイアドバンスを持っていきます。ゲームボーイアドバンスって通信機能がないので持ち込めるんです。

 宿舎での過ごし方ですが、最近はスピードチャンネルを見ていることが多いです。あとは将棋をやる選手がいたら将棋を指します。これも楽しみのひとつですね。

ーーデビューしてから今まで競輪選手を辞めたいと思ったことはありますか?

 何度もあります。ここ4年くらいはないですが、それ以前に「もう辞めたい」って深刻に考えたことがA級の時もS級の時もありました。S級S班になってからは選手をやめたいまではありませんが、「このレベルで走らない方が楽しかっただろうな」って気持ちも抱いたことがあります。

 昔から競輪を観てくれている方は知っていると思いますが、僕は弱くて、しかも危ない選手でした。コースが空いていなくても上位着を目指して突っ込んでいたので、たくさんコケました。当時を振り返ると失格はダメだという意識はありましたが、『上位着に絡むか落車で終わるか』という勝負はしていいと考えていたんです。でも、この“危ない走り”は車券を買ってくれるファンの方や一緒にレースを走る選手に迷惑をかけ、自分自身も怪我をしました。

 朝から晩まで練習に打ち込んで開催に入り、落車をして怪我を負って帰る。結果も出ない。やめたいけど、走らなければ収入だってない…。そんなある日、何もかもうまくいかない中で落車をして、スタンドから心をえぐられる野次を浴びたことがありました。その時に「もうやめたい」となりました…。つらかったです(笑)。でも失格に対する意識や危ない走りに気を付ける視点については、この頃の経験が今に生きています。

ーー松浦選手はボートや競馬などギャンブルも楽しんでいますよね。そんな松浦選手が思う競輪の醍醐味や面白さ、見どころを教えてもらいたいです。

 他の公営競技に負けないと思っているところは『スピード感と迫力』です。それに加えて、良い悪い含めて“人間性”がレースに現れる所ですね。競輪選手は間違いなく走り方に性格が出ます。それを知れば知るほど観ている方は楽しめるんじゃないかなと思います。

 個人的には最後方の9番手から「どこから来たんだ(笑)」と言いたくなる感じで1着まで伸びてくる選手の走り、そのシーンが面白いですね。そういうレースは他の競技にあまりないシーンだと思いますし、興奮できると思います。

 あと車券推理がハマった時の爽快感ですかね。競輪をはじめたばかりの方には少し厳しいかもしれませんが、選手の性格まで読み切って、レース展開がその通りに進む時の気持ち良さは競輪ならではのものがあると思います。車券推理に奥深さがある分、的中の喜びも大きいのではないか? と感じます。

3連覇を目指して玉藻杯争覇戦へ!

 それでは今月のコラムはこのあたりで終わりにしたいと思います。次走は高松記念『玉藻杯争覇戦』です。高松はバンクを踏んだ感触が好きで、自分としては相性の良さを感じるバンク。和歌山で感じたフラストレーションを晴らすためにも、ここでしっかりと自分の走りをしていきたいと思います。昨年のように最初のシリーズで安心感を得られなかった分、集中して結果を出したいです! それではみなさん、今年も応援よろしくお願いいたします!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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