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【松浦悠士の詳細解説】地元戦で完全優勝! 最高の勢いに乗って3度目のグランプリへ

2021/12/26 (日) 15:00

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。今月は地元戦『ひろしまピースカップ(GIII)』に出場してきました。すごく楽しみにしていた地元開催でしたが、完全優勝という最高の結果でシリーズを終えることができました。今回は地元戦の報告と年末のKEIRINグランプリ2021について書いていきたいと思います!

グランプリ前に地元広島で完全優勝、年末の大一番へ向けて最高の勢いがついた(撮影:島尻譲)

最高に嬉しかった地元の声援

 S級S班になってからはグランプリの兼ね合いで、12月開催の地元記念「ひろしまピースカップ」に参加できていませんでした。僕は記念開催じゃなくともFI戦だって走りたいくらい広島が好きです。S級S班に昇格してから、はじめて広島のお客さんの前で走ることができ、本当に嬉しかったです。選手紹介の時から「松浦〜!松浦〜!」と名前を呼んで応援してもらい、地元広島の熱さを体感しました。僕だけじゃなく、太我や池田さんをはじめ広島の地元選手が多くの声援を受けている状態、その空気は最高でした。地元のお客さんが地元の選手に声をかける空気感は格別です。

負けることが全く怖くなかった

優勝を決め、ヘルメットを観客席のファンへ(撮影:島尻譲)

 そんな地元の声援の中で、僕は4日間、一切プレッシャーを感じませんでした。たとえ負けたとしても、地元のお客さんが『明日また頑張れよ』って言ってくれる気がして、その温かさに力をもらい、緊張すらしなかったです。「地元だから絶対に勝たないといけない」という気持ちにはまったくならず、地元のお客さんに「自分が今できる最大限の走りを見てもらいたい」と、その気持ちしかありませんでした。

 勝ち負けを過剰に意識せず、ただ「自分の走りを届けたい」と考える時、僕はとても良い心理状態になります。リラックスしつつ、それでいて気が引き締まっているような感覚で、楽しく爽快にレースを走ることができるんです。開催中には自分の状態の良さを確認できるようなポイントも多々ありました。例えば、準決勝と決勝は、前で走る太我の強さを体感していたのですが、車間を切って「これくらいで差せるか?」とタイミングを瞬時に判断し、ドンピシャで差せたところなどは、仕上がりの良さを感じました。

ラインの先頭を走る町田太我選手をサポートし、計算し尽したようなベストタイミングで差していた(撮影:島尻譲)
 『自分の思った通りのスピードに乗れていること』や『ゴールまでのペース配分、余力と距離の計り方は間違えないこと』、『太我がどこで仕掛けたかを判断し、抜け出すタイミングを見極めること』などが完璧にできないと思い描く通りに差し切ることはできません。「だいぶ仕上がってるかも」と自分の状態の良さを確認しながら、さらには完全優勝という結果までついてきて、グランプリを前に最高のシリーズだったと振り返っています。

広島競輪マスコットの『ひろしまぴーすけ』と歓喜を分かち合った(撮影:島尻譲)

たったひとつ悔しかったこと

 それでもすべてが100点かと言えばそうではなく、悔しかったこともありました。それは決勝レースでワンツースリーフォーを決められなかったことです。もともと広島の選手は地元開催で奮闘する傾向はありますが、しっかりと決勝に地元から4車乗れたことは嬉しかったです。でも欲を言えば、1着からすべて広島の選手で独占したかった…。

 またこれから先、広島で走るチャンスがあると思いますから、その時は広島勢みんなで勝ち上がり、上位は全員広島の選手だ! という結果を出したいです。今回の課題であり、次回の地元戦の目標にしようと思いました! 現地で熱い応援を届けてくれた地元の皆様、そして開催に注目してくれた遠方の皆様も、改めて応援に感謝しています! ありがとうございました!

声援を受け、感謝の意を伝える松浦悠士選手(撮影:島尻譲)

信頼できる仲間から“兄弟”という関係性になった

 それではグランプリについて書いていきたいと思います。まずは一緒に戦う裕友のこと。21日の共同会見でも発表しましたが、今年のグランプリは前を裕友に任せて、僕が後ろを回ることになりました。裕友の後ろを走る時は考えることが少なく、全部任せられる信頼感があります。

KEIRINグランプリ2021の並びは清水裕友選手(左)が前、松浦悠士選手が番手を回る(写真:(公財)JKA提供)

 今年は早い段階でグランプリに意識を向けたタイミングがあったんですが「前を走る」と裕友が伝えてきてくれたことがありました。お互い出場が決まり、いざ裕友と話したところ「どちらでも」という感じだったので、僕から後ろを回りたいと言いました。特に意見を交わして煮詰めて決めたわけじゃなくて、すんなりと決まりました。

 ここで少し去年の話を挟みたいと思います。去年は並びを決めるのが相当直前になりました。おそらくですが、お互いが前で走ることに自信が持てず後ろを回りたかったのでは、と振り返っています。そんな中、僕が前でやるということを裕友に伝えた形でした。

KEIRINグランプリ2020では松浦選手が前でレースを組み立てた(撮影:島尻譲)

 当然出場するからには優勝を目指すのは言うまでもありませんが、もしも道中でダメだと感じたとしても、その時は裕友にチャンスが巡るような展開を作りたいと考えました。そして、僕も裕友も優勝こそ逃してしまいましたが、レース自体は作れたのかなと思ってます。去年の並び、去年のレースがあって、そういうことをすべて踏まえて裕友が「どちらでも」と言ってくれたのだと解釈してます。

 裕友の胸の内はわかりませんが、僕の中では去年のグランプリで関係性がバージョンアップしたと考えています。例えるならば『同地区の信頼できる仲間』から『兄弟』になったような感覚があります。本当に分かり合えた瞬間があったという意味で。その面で、去年と今年では連係する上での信頼感・絆は違いますので、いつも清水・松浦の連係を楽しみにしてくださる方は、ぜひご期待ください!!

意識せず“いつも通り”に

 続いて、今の僕の気持ちについて記録しておこうと思います。グランプリに向けて意識を集中し過ぎると、ネガティブな反動があり、仕上がり切らないのかもしれないな、と考えています。「グランプリだ! 特別な舞台だ!」と気負い過ぎると、制御できない気持ちの高ぶりを感じたり、ゆえに追い込み過ぎてしまったり、リズムが狂ってしまいます。このあたりは過去2回のグランプリで、準備の仕方や気持ちの作り方についても経験を積んだつもりです。今はとてもリラックスした心理状態を保っており、いい感じで毎日を過ごしています。「いつも通りにやればいいんだ」という気持ちで本番まで「心で仕上げていきたい」という感じです。

平常心でいつも通りにやるということ(撮影:島尻譲)

 僕は体のケアとして整体院に通っているのですが、先生に「何かを変える必要なんてない。いつも通りでいい。しっかり考えてやれば1位じゃけえ。そのままやればいい」と言ってもらったんです。すごく腑に落ちる言葉でした。常に練習のことを考えて過ごした1年間。食事から睡眠から、何もかも気にしてきましたし、お酒を飲んだのも2回だけ。“強くなるためにできること”を習慣にしてきたのだから、いつも通りでやろう! と強く思っています。

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います! 今月は4問の質問に答えていきます!

今回はグランプリにまつわる読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー防府で清水選手と練習していたと思いますが、感触はどうでしょうか?

 感触は全然わからなかったです。ただ、終わってみてすごい疲労感を味わいました(笑)。というのが、裕友と防府で練習をしたときは「よし!やるぞ!」みたいに燃えたぎってた感があって、気合いが入っていた分のダメージを負いました。冬で雨なのに、寒さも感じませんでしたね(笑)。雨で濡れることを考えて競走用の自転車は持っていきませんでしたし、感触どうこうっていう練習でもなかったんです。まだ一緒に練習をする機会があるので、これから確かめていきたいと思います!

ーー年間獲得賞金の記録がかかるグランプリ、記録を意識して、いつもよりプレッシャーを感じる?

 これは「いいえ」です。さきほど上でも書きましたが、いつも通り自然体で挑みます。年間獲得賞金の記録を更新したいかを問われれば、答えは「はい」なんですけど、優勝することでその記録がついてくるイメージです。その記録に意識を向けて「狙うぞ!」という気持ちはゼロですね。「記録更新を狙えるから絶対に今年こそ優勝したい」とかでは全然ないです。優勝=記録更新になるので、更新したいか聞かれると「はい」と答えていますが、僕の気持ちの上でのニュアンスを加味すると、この質問には「いいえ」ですね!

ーー清水選手とラインを組む時に松浦選手が戦略を組み立てることが多いと、以前何かの配信番組だったかで聞いた記憶があります。その際に松浦選手のレース戦略に清水選手が意見を言ってきたりすることもありますか?

 二人で連係する時はあんまりないですね。でも「明日どうします?」みたいなことを裕友から聞いてくるときがあるんですが、すでに自分の意見を持っていて“ブレない裕友”でいることは全然あります。でも考えてみると、裕友とはあんまり作戦とか詰めて決めないかもしれません。スタート位置だけ決めておいて「あとは流れで〜」とか「ぜんぶ任せるよ」とか結構多いです(笑)。どのレースかは明かせませんけど、すごく重要なビッグレースでお互いの気持ちが分かり合っていて「出たとこ勝負で〜」だけの会話で走ったこともあります!

ーーグランプリは3回目の出場ですね! 3度目の正直になるように頑張ってください! 松浦選手はジンクスとかそういうのは信じますか?

 普段はジンクスとかあまり信じないですね(笑)。でも今年はグランプリに3回目の出場ということもあり、『3度目の正直』と声をかけてもらうことはあります。実は僕自身、この『3度目』というのには結構意識を向けているんですよね。『3』にポジティブなイメージがあるからです。はじめてGIを獲った時も『3度目』の決勝戦でした。S級S班になって『3度目』の地元戦でお客さんの前で走り完全優勝できました。そして、戦い方は難しいですが、『3番車』での優勝も多く、相性の良さを感じています。好きな車番は1番車ですけど(笑)。こういうのに根拠なんてないんですけど、どこか自信が出てくるものがあります。なので、僕にまつわる「3」がありましたら、ぜひ読者のみなさん教えてください(笑)

チャンピオンユニフォームを見せられるように

 それではグランプリへの気持ちを沢山書いたので、ここで筆を置きたいと思います。コロナの状況次第かもしれませんが、これからお客さんが気兼ねなく現地観戦できる機会が増えていくことを祈っています。お客さんにグランプリのチャンピオンユニフォームを見に来てもらえるように、優勝目指して“いつも通り”に走ってきます!!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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