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木三原さくらの『恋して競輪ハンター』169Hunting

2024/11/27 (水) 17:00

木三原さくらの『恋して競輪ハンター』169Hunting

競輪祭は、なぜ競輪「祭」と言うのだろうか--。

ふと、そんなことを考えました。

「祭」という漢字には、いろいろな意味がありますが、私が最初に浮かぶのは、やはりお囃子が聞こえたり、出店が出ていたり、たくさんの人でにぎわう、そんなハッピーなイベント「お祭り」です。近所でやっていたら、ちょっとでも行きたい、なんなら毎日お祭りだったらいいのに。そんな気持ちになるものですが、正直に言って、競輪祭はそうではありません。確かにG1の華やかでにぎやかな本場、現地に行けなくても、SNSや様々な配信で、その盛り上がりは伝わってきます。ドームならではの照明や、ファンファーレと反響する歓声に心が踊るのも事実です。でも、それ以上に、1日、1日、1レース、1レースの結果が重く切なく、それを受け止め、噛みしめながら進んだ先の決勝戦で、最上級の興奮と切なさが待っています。
毎年、涙なくして見ることができない、この長い6日間。それが、私の感じる競輪「祭」です。毎日これでは心臓がいくらあってももちません。涙の種類と量は毎年変わりますが、今年も決勝戦を見終わって、ふと気づいたら、ほろりほろりと涙がこぼれていました。

なんて切ない祭りなんだろう、と涙をぬぐいながら、タブレットで流れる閉会式の映像をぼんやりと見つめて、そんな取り止めのないことを考えていました。
神奈川の郡司浩平選手が、S班復活の全日本選抜優勝で幕を開けた今年のG1戦線。ダービーでは平原康多選手の涙の優勝もあり、また高松宮記念杯では北井佑季選手のG1初タイトルもありました。スタートから3つのG1でS班以外から優勝者がでたことで、今年はどんな1年になるんだろうと、今までにない興奮を覚えました。

ガールズケイリンでのG1でも、児玉碧衣選手の地元G1優勝に、パールカップで千葉・石井貴子選手の優勝に感動の涙を流しました。それから、夏にはパリ五輪でグランプリ権利獲得のチャンスも楽しみに、寝不足になりながら自転車競技を観戦もしました。

たくさんの興奮と感動を記憶し、思い出を抱えて迎える最後のチャンス。勝ち上がれず赤いレーサーパンツを脱ぐことが決まった者、地元グランプリ出場への道が悲痛にも閉ざされる者、神がかった走りでラストチャンスに手を伸ばす者、結果に身を委ねる者。10カ月という月日をかけて積み重ねてきた選手とファンの思いが、この6日間で加速度的に結末に向かっていく。それが競輪祭特有の切なさを生んでいるのかもしれません。

その中で、今年優勝したのは福井の脇本雄太選手。同県・寺崎浩平選手の先行から掴んだ、初の競輪祭の優勝。久しぶりのG1タイトルということはもちろん、やっと決まった連携というところに、安堵と笑顔が見られた表彰式でした。

1年で一番熱く、切ない夜にセンチメンタルになった心は、一晩寝ると興奮と期待にあふれていました。ここからはグランプリに向けて楽しみな時間が続いていきます。
決戦の地、静岡競輪で、今年最後に笑うのは誰でしょうか。今年もあと1カ月、最後まで楽しく競輪を戦い抜きましょう!

恋して競輪ハンター

木三原さくら

2013年夏に松戸競輪場で ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。 以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。 番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。 好きな選手のタイプは徹底先行! 好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。 “おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。

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