木三原さくら「恋して競輪ハンター」134 Hunting

松戸競輪で先日、競輪ルーキーシリーズ2023が開催されました。
まだ可能性と未来しかないフレッシュな新人選手たち。ルーキーシリーズの開催としては、3場所目ではありますが、目標高く意気込みを話す選手もいれば、目の前の着実なステップについて話す選手もいて、ぎこちなく話すインタビューは何度見ても飽きないものですね。また、車券を買っていながら、普段とは違って、どのような展開になっても、全員に「頑張れ！」と応援の言葉をかけながらレースを見ていました。

さて、そのルーキーシリーズ。女子は通常のレース同様となりますが、男子は単騎のレースが多くなるのも、この開催ならではですよね。放送にゲスト出演された滝澤正光所長からもうかがいましたが、競輪選手養成所では自力で走るレースを基本に指導。そういった訓練の中でも、追込み主体で走る候補生もいるそうですが、多くの選手が、まずは自分でレースを作ろうとしていました。必然的に単騎が多くなり、7人ほぼ全員が自力、単騎のレースがほとんどでした。そうなると、レースは早めからの仕掛け合いとなり、さらに捲りラッシュになっていきます。逃げた選手の番手から捲り、その番手からさらに捲り、後方からも一気に捲り。捲りの打ち合いで、バック線3車が並走になるようなレースまで。
ネット配信のコメントを見ていると「先行して残れない選手ばかりで弱い！」というコメントもありました。でも、私はそうは思いませんでした。果たして、真後ろから脚をためた敵に捲りを打たれても逃げ切れる選手は、他6人の仕掛けを一人であわせきれる選手は、現在トップで活躍する選手たちの中に何人いるのでしょう。YouTubeの厳しいコメントを見ながら、そのような想像を膨らましました。トップクラスの先行力のある選手でも、真後ろに同等の自力を持つ選手に付かれていたら……。あの選手だったら……と、あれこれ考えてみたものの、絶対と言い切れる考えはうまれませんでした。

むしろ先行するルーキーたちのレースを見ていて、改めて感じたことは、ラインの存在がレースに与える大きさです。一人で逃げても捲られてしまうけど、後ろに1車でも「ラインとして」続く選手がいることで、レースは全く変わっていきいます。捲りは、もうひとつ後ろになり、またある程度の牽制やブロックを越えていかなければなりません。そうなるとレースの結果は、また違ったものになるはず。互いの力を利用し合い、チャンスを掴もうとするライン。そこに同県や同地区、先輩後輩、師弟など、さまざまなファクターが加わると、より一層、ラインの存在はレースの中で重要なものになっていきますよね。

逆に言えば、ルーキーシリーズのような点のレースが勝負の原点なのかなとも考えました。それぞれが自分が勝つために自分のタイミングで仕掛けを打つ。ガールズケイリンはまさにそうですが、男子選手の競輪も、やはり皆が1着をとりたい。そういう気持ちで走っているということを改めて再確認しました。
新人選手たちのフレッシュな走りに色々なことを考えた3日間。ルーキーシリーズが終われば、いよいよ7月から本デビュー。男子選手たちは後ろにラインができたとき、走りと結果にどんな変化が生まれるのか。ガールズケイリンではトップクラスの先輩選手たちとのレースで自分の力を発揮できるのか。そんなところに注目したいと思います。
たくさん迷い、失敗しながらも、高みを目指すルーキー選手たちを全力で応援したいです！

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【恋して競輪ハンター・過去コラム】
133Hunting「軽やかにダービー王」
132Hunting「偏食しない自由な車券」
131Hunting「感謝の10周年」
130Hunting「勝負の気配」
129Hunting「平塚の春よ来い！」
128Hunting「新人でなくなる前に」
127Hunting「10年目の奈良記念」
126Hunting「脱タテ目！」
125Hunting「最恐の走りに震えた和歌山記念」
124Hunting「泣けるオッズ」

【略歴】

木三原さくら（きみはら・さくら）

1989年3月28日生　岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。
好きな選手のタイプは徹底先行！
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。