2021/05/21 (金) 11:17
松浦悠士の優勝で終わった「G1第75回日本選手権競輪」。G1の最高峰らしい激しい戦いが演じられた。売り上げは121億6,719万4,600円。目標の125億円には届かなかったが、健闘したといっていいだろう。世の中がコロナ禍にあり、その中で開催したのだから、ある程度の売り上げがあり、それを還元する必要があった。
感染防止対策だが、やはり中途半端だったのではないかと言わざるをえない。何より、PCR検査を毎日行わなかったのには驚いた。選手は事前にPCR検査をして陰性証明書を持参するのが必須、開催中は検温など毎日行っていたが、リスクを抱えた中での開催なのだから、検査を毎日するのは当たり前。選手宿舎は、競輪場とホテルに分宿だったが、競輪場宿舎は完全個室だったのだろうか。
対策が施された会見場
何より、参加した選手の、その後を追ったのか? 追って検査したのか? ダービー直後にも、競輪選手の感染者発生のニュースが出ている。JKAはいまだに名前を公表していない。もし、それがダービー出場選手だとしたら、これほど恐ろしいことはないのではなかろうか。追跡調査は、ファンではなく選手に対して行うのだから、簡単にできるはずだ。無観客開催といいながら、いきなり現場に現れた関係者もいたと聞いた。これも、身内に甘すぎるのではないだろうか。
話を日本選手権の決勝戦に戻そう。大方の予想は、眞杉匠が先行し、平原康多が番手捲りを放つというもの。平原の後ろは武藤龍生。清水裕友に松浦悠士、郡司浩平には佐藤慎太郎。浅井康太と松岡健介が単騎になった。周回中、眞杉は中団5番手。ところが8番手の郡司が、眞杉の横にピタリ。時折、体を預けて挑発する。すると眞杉も負けじとやり返す。そんな状況を見て、清水が腹をくくり先行。追い上げた郡司が松浦後位に入った。平原は眞杉から切り替えず、終わってみれば6着だった。真後ろに郡司がいながら、松浦は落ち着いていた。引きつけるだけ引きつけて一気の差し。インから突っ込んだ佐藤、郡司との写真判定を制し、見事に初のダービー王の栄誉に輝いた。
眞杉の甘さ、郡司の老獪さ。そして松浦の落ち着き払った走り。だが、一番目立っていたのは清水だろう。打鐘だから引くに引けない状況だったとはいえ、G1の決勝で堂々の先行。負けたことは事実だが、内容は濃かった。ここのところ、松浦との前後が話題になるが、やはり清水は自力型であり、松浦は自在型。今後も清水が前で戦ってほしいものだ。ただ、一つだけ言っておく。マスコミは松浦と清水をゴールデンコンビと持ち上げるが、ゴールデンコンビと呼べるのは、決勝で両者の1・2着か1・3着。まだ、真の意味でゴールデンコンビとは言えないと考える。記者とは言葉を生業にしているものである。その言葉の意味を、もう少し考えて報道してもらいたい。
最後になったが、松浦は自在型としての完成形だろう。近い将来、グランドスラムも達成しそうな気がする。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター