2021/03/09 (火) 12:42
第119回候補生と第120回候補生の卒業記念レースが2月26日、27日の2日間、静岡県伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。当初は静岡競輪場で行われる予定であったが、コロナ禍を考慮し、同養成所での開催となった。卒業記念レースと言えば家族やマスコミが大挙して押し寄せ、未来のスターを探そうと、必死になっていたものだ。ただ、今回は仕方ないと言えば仕方ないが、無観客のうえでマスコミもリモート取材となった。それでも、現在の置かれている環境を考えれば「実施されただけでも良し」と、しなければならないだろう。
晴れて卒業チャンピオンとクイーンに輝いたのは桑名僚也(埼玉)と西脇美唯奈(愛知)。桑名は最終バック4番手から捲り、西脇は内野艶和(福岡)の捲りに乗り、追い込んで頂点に立った。優勝した2人には同期のチャンピオンとして恥ずかしくないようもデビューしてからも頑張っていただきたい。
119回生には2016年リオデジャネイロ五輪のオムニアムに出場し、14位だった窪木一茂(福島)もいる。窪木は『特別選抜枠』による入所で、当初から話題を独占していた。しかし、オムニアムなどの中長距離を主戦場としていただけに競輪では苦戦を強いられた。それでも、潜在能力の高さはピカイチだろう。卒業記念レースでは目立たなかったが、やはり、デビュー後は一番の注目株だ。そして、何よりもスター性がある。強いだけでなく、マスコミに対するリップサービスもできる。卒業後、デビューまでには競輪で順応できる身体を作り上げてくるだろう。優勝した桑名、在所1位の犬伏湧也(徳島)よりも期待が持てるのではないだろうか。競技との両立を問題なく、こなせるだけの能力は持っているはずだ。他にも元ボートレーサーや日本有数の進学校出身者などもいたのだが。
残念なことに、これらを報じたマスコミがほぼなかったことだ。在所成績やアマチュアで凄い経歴を持っている訓練生の記事ばかり。これは毎度のことだが、読者にしてみれば「またか」と、辟易(へきえき)してしまう。もちろん、どんな記事を読みたいかは人それぞれだが、競輪界のことを考えれば特異な経歴を持った訓練生のことを知りたいと思ってしまうのは、筆者だけだろうか?成績が良いだけでは魅力的に映らない。そういう意味でもJKAは巧くリードするべきだと、考える。新しいファンを獲得するためには特異なキャラクターを持つ訓練生をもっとプッシュすべきであろう。何をアピールしたいのか?いくら格好良いことを言ったとしても、これでは今までと何も変わらない。少しでも業界を良くしたいと思うのならばリーダーシップを執って、マスコミを有効活用すべきであろう。
ゴールデンキャップを獲得した訓練生に支払われる報奨金に関しても、どこか腑に落ちないところがある。報奨金を出すことには賛成であるが、デビューして、活躍することができたら支払われる仕組みにしたら、どうだろうか?在所中に成績が良くてもデビュー後、意外に活躍できていない選手も何人かいる。支払うのであれば「何年でS級に昇格した」などの基準を設ければ、ヤル気が違ってくるかも知れない。昔、よく耳にしたのは「競輪選手になって、大金を稼ぐ」だったが、現在では「選手になること」を目標にしている訓練生が多いと、聞いた。あくまでも筆者の個人的な意見だが、業界を盛り上げることを考えると、それはいかがなものであろうか。
写真提供/公益財団法人JKA
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター