2021/02/26 (金) 10:01
今年初のG1『第36回全日本選抜競輪』(川崎競輪場)は地元の郡司浩平(神奈川99期)が深谷知広(静岡96期)の先行を利して、番手捲りを放ち、見事に優勝を決めた。昨年『競輪祭』(小倉競輪場)に続いてのG1連覇の快挙。何よりも嬉しかったのはホームバンクで勝てたことだろう。新型コロナウイルスの影響もあって、一時は開催自体が危ぶまれたが、無観客という決断で開催。売り上げも88億563万4,100円で前年の豊橋での開催を上回った。この状況下では大成功だと言えるだろう。
優勝した郡司だが、競輪界には「タイトルは2つ獲って本物」の格言があるので、さらに堂々と、振る舞えるに違いない。レースは今年から静岡に移籍した深谷が赤板から噴かした。飛びつきも考えていたであろう平原康多(埼玉87期)は5番手、清水裕友(山口105期)に至っては7番手。こうなってしまえば郡司に“分があった”のは当然だろう。ただ、深谷もタイトルホルダー。色々な意見はあろうが、今開催の深谷の仕上がりも踏まえ、もう少し深谷自身が残る競走をしても良かったのではないか。これが競輪と言えばそれまでなのだけれども。
2着の和田健太郎(千葉87期)に関しては動きが重いように映った。それでも、2着死守は立派の一言。昨年のKEIRINグランプリ2020で頂点に立ち、今年は1番車のプレッシャーがつきまとう。その中での準優勝は手放しで誉めても問題ない。残念だったのが3着の守澤太志(秋田96期)だ。コメントでは位置は決めないと、発していたのだが、最初から南関勢の後ろ。冷静に考えて、あの位置で優勝を狙えたのだろうか?守澤は何かするかも知れない、そう思っていたファンも多かったはず。守澤も初のS班かつ最初のG1。和田と同じようにプレッシャーを感じていただろうが、もう少し見せ場は作って欲しかった。
筆者はネット観戦と場外で車券を勝負していたのだが、違和感を覚えてしまうことがあった。それは実況だ__。
開催最終日の9R、9着に敗れた寺崎浩平(福井117期)に“スーパールーキー”と、連呼していた。スーパールーキー!?正直、失笑するしかなかった。
簡単にスーパーを使えば良いものではないだろう。仮にスーパールーキーならば最終日の決勝に乗って貰わないと。F1戦で結果を残しているからと言って、スーパーはない。プロ野球で例えるならば新人投手が開幕からローテーションを守り、2桁勝利を挙げる。野手だったら、スタメンに定着して、最低でも2割8分から3割まで打っている印象だ。寺崎自身も恥ずかしくなってしまうだろう。
ただ、これはマスコミにも責任がある。確かに寺崎は早期卒業デビュー後、期待通りにトントン拍子でS級へ。S級初戦で優勝も飾っている。だが、その後は正直なところ、上のレベルでは苦戦している現状でもある。であるのに、スターを無理に作り出したいマスコミが必要以上に持ち上げてしまう。実力があるのは確かだが、“怪童”とも呼ばれた深谷のデビュー当時と比べれば寺崎があまりにもかわいそうだ。
言葉一つ、一つの意味をシッカリ考えたうえで、せめて“大型新人”とか“次代を担うスター候補生”など、表現はいくらでもある。それを最終日に9着の選手を“スーパールーキー”ではこの業界のレベルが知れてしまう。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター