2020/12/11 (金) 10:00
師走になっても、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。政府肝いりの『GO TOトラベル』も制限がかかってしまう始末。いくら自己防衛していても感染してしまう可能性があるのが、コロナの恐ろしさだ。最近では競輪選手だけではなく、関係者の感染が頻繁に報道されるようになった。松戸競輪場では警備員が感染し、開催自体が中止に追い込まれた。日本競輪選手養成所の滝澤正光所長の冠した千葉G3『滝澤正光杯in松戸』も無観客での開催が発表された。KEIRINグランプリ2020も入場制限があり、一体、いつになったら競輪場が大歓声に包まれるのだろうか?
今回はKEIRINグランプリシリーズの中でも『ガールズグランプリ』に触れてみたい。競輪祭と同時に行われたツイントーナメントによるガールズグランプリ2020トライアルレース。ここで明暗を分けたのが、同じ神奈川の尾崎睦(108期)と佐藤水菜(114期)だ。先のレースを走った佐藤は小林優香を力でねじ伏せて優勝。この時点で、尾崎は次のレースで優勝するしかなくなった。ただし、今開催の尾崎は普段と違っていた。どこか調子が優れないと思わせる走りで、見るからにキレがなかった。
尾崎のホームバンクは平塚競輪場。佐藤も茅ヶ崎高校出身で、デビューは平塚だったが、その後、川崎にホームバンクを移した経緯がある。やはり、今も平塚で頑張っている尾崎にしてみれば、ホームでのグランプリ開催__どうしても、出場したかったはず。勝負の世界は厳しいとは言え、尾崎の胸中を察すると、言葉が見つからない。
これまでにも書いたことがあるけれども、筆者は尾崎にデビュー当初から期待していた。児玉碧衣(福岡108期)と同期ではあるが、日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)在校中は尾崎がNo.1で、卒業記念レースも尾崎が制している。元々はビーチバレーのトップ選手だけあってストイック。競輪に転向しても、アスリートといった佇まいだった。派手さはないが、真摯(しんし)な走りは好感が持てた。
一方の佐藤は尾崎と正反対だと言えるだろう。良い意味で注目を集めたいタイプに映り、イベントに呼ばれることも尾崎より多いかも知れない。だが、実は佐藤もストイックなのだ。高校時代から五輪を意識していたと語り、現在はナショナルチーム(強化指定B)の一員として、2024年のパリ五輪を目指している。尾崎も佐藤も負けず嫌いではあるが、表情を表に出さない尾崎に対し、佐藤は人前で涙を見せることもあるなど、感情をあらわにする。どちらが良いとかではなく、好対照だった2人に明暗が分かれた。佐藤には尾崎の分までグランプリで頑張っていただきたいものだ。
明暗を分けたと言えば小林優香(福岡106期)もだ。男子の新田祐大(福島90期)、脇本雄太(福井94期)の東京五輪代表内定組がKEIRINグランプリ2020出場を決めたが、女子のトップ・小林は頂上決戦の出場機会を逃してしまった。よくよく考えれば尾崎以上に悔しかったのは小林かも知れない。五輪を第一に取り組んできた結果、普段のレースは欠場せざるを得なかった。ただ、小林ならば最後の最後で優勝できるだろうという見方もあったが、それだけガールズケイリンのレベルが上がり、実力差がなくなってきているとも言えるだろう。
児玉の優位は動かないと見ている今年のガールズグランプリだが、高木真備(東京106期)、一発勝負に滅法強い石井貴子(千葉106期)など見所は多い。コロナに翻弄(ほんろう)されたこの1年。男子とは違った華やかさと激しさがあるガールズグランプリ__。入場制限は致し方ないが、競輪場にいるつもりになって、ネット観戦で興奮してみたい。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター