2020/08/19 (水) 10:44
名古屋G1オールスター競輪は松浦悠士(広島98期)の優勝で幕を閉じた。決勝戦当日は中部地方で気温が40℃を超えた地点もあった程の猛暑。猛暑を通り越して、酷暑と、言っても良いだろう。バンクでの体感温度は45℃以上だったはずだ。そのような過酷なコンディションの中、松浦が壮絶な戦いを制した。
松浦のG1制覇は昨年11月の競輪祭以来。この時は清水裕友(山口105期)の仕掛けに乗ってV。そして、今回は原田研太朗(徳島98期)が先行して、最終1センター過ぎから番手捲りを放ってのもの。捲ってきた脇本雄太(福井94期)に合わせるタイミングが若干、遅れたが、そこからのリカバリーが素晴らしく、価値のあるものだった。世界トップレベルのダッシュ力を持つ脇本に対し、リカバリーできたのは松浦にそれだけ力が付いてきた証拠だとも言える。2人のもがき合いはまさに競輪の醍醐味である『力対力』。無観客で行われていたのがもったいないくらいのハードなせめぎ合いだった。ファンが場内にいたら、それこそ近年にないくらい興奮度はMAXだったであろう。
ただ、せめぎ合いとは言っても、離れた7番手から仕掛けた脇本、原田の引き出しがあった松浦とでは簡単に比較できない。この辺りは松浦も重々に承知のようで、優勝後のコメントにはそれらしいことがスポーツ紙に掲載されていた。勝ったとは言え、自力勝負でなかった分、松浦に満足感はなかったかも知れない。だが、こういった話しが伝わってくるということ自体、松浦自身が一皮むけたのではないかとも感じる。ただ、勝つのではなく、内容にも言及しており、確かな成長を伺わせた。
売り上げだが、目標は低く見積もって90億円だった。5日制G1で90億円というのも情けない話しではあるが……結局、目標を大幅に上回る117億7,481万6,400円と、盛況だった。裏を返せば、前述したように目標設定が低過ぎたということだろう。公営競技である以上、どうしても結果が求められる。それこそ赤字ならば廃止の議論が沸き起こる時代だ。目標を高く設定して、達成できなければ叩かれる。それならば目標を低く設定しておけば達成できないという心配も少ないということだろう。攻めの姿勢ではなく、明らかに守りの姿勢である。せめて100億〜110億と、目標を設定してのことならば筆者も手放しで喜べるし、今後の業界に期待が持てた。5日制で100億を割り込めば__それこそ業界自体が危険水域に入ったということだ。
表彰式をテレビで観たが、一つだけ腑に落ちない光景があった。河村たかし名古屋市長をはじめ、その他の来賓もマスクを着けていたのだが、1人だけはしていなかったのだ。松浦はこの場合、マスクをしていなくても理解できるが、バンクに立つ来賓は着用しなくてはダメだろう。ましてや開催前から愛知県はコロナ感染者が多く出て、県独自の緊急事態宣言も発令している。開催そのものができるかどうか危ぶまれたという話しも聞いた。その中で選手、関係者が定められたガイドラインを守ったからこそ、無事に開催が行えたはずなのだから。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター