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高松宮杯記念競輪を終えて

2020/06/28 (日) 15:33

高松宮杯記念競輪を終えて

4ヶ月ぶりのG1となった『第71回高松宮記念杯競輪』(和歌山競輪場)は脇本雄太(福井94期)の圧勝劇で幕を閉じた。脇本と同じく、東京五輪代表の新田祐大(福島90期)も決勝に進んだことで『五輪前哨戦』と、勝手に思いながらネットで観戦した。
それにしても、脇本の強さが際立った。

従来はスタートを決め、引いてから一気に巻き返すパターンが多かったが、今大会は後ろ攻め。レース自体は単調なものとなってしまった。新田、平原康多(埼玉87期)、松浦悠士(広島98期)と、自力型は揃ったが、先行型ではない。実質、脇本の先行1車というメンバー構成となった。果たして、新田、松浦、平原は何をするのか?車券を買ううえで、考えさせられた。レースは脇本の上昇に合わせて、平原も踏み上げ、稲垣裕之をどかして3番手をキープ。松浦、新田は捲り勝負になった。しかし、世界レベルの脇本を捲るのは容易ではない。それとも、自信があったのだろうか。結局、松浦も新田も捲ることができず、脇本が逃げ切った。もう少しレースに動きがあれば、観戦する側はもっと興奮はできたかも知れない。

大会を振り返ると、売り上げは70億5,905万100円と、70億円を超えた。目標はコロナの影響も考慮して60億円だったが、それを10億円も上回った。正直なところ、これは予想していなかった。目標達成も難しいだろうと思っていた。前年比は83.1%。しかし、それでも大成功だろう。無観客、投票はインターネットと電話投票だけだったのが、緊急事態宣言解除を受け、全国の場外車券売り場が再開されたのが大きい。今後の動向が気になるところである。

成功に終わった大会ではあったが、やはり、コロナ渦に対する業界内の動きは遅い。22日のスポーツ各紙には「JRAが50億円の寄付。宝塚記念の売り上げから」が大きく扱われた。50億円という数字には驚かされた。競輪と競馬では売り上げが違い過ぎるが、それでも、50億円とは……。それだけJRAは真剣に今の状況を憂いている証拠だろう。発表の時期も高松宮記念杯競輪の終了時に合わせてきた。敢えて競輪業界との差を世間に知らしめるためだったのではと、勘繰ってもしまう。
せめて高松宮記念杯競輪からも売り上げの一部として1億円くらいは寄付しても良かったのではないだろうか。それができないのは業界のシステム上の問題だろう。JRAは国の管轄であるのに対し、競輪はあくまでも地方自治体。これにJKAや日本競輪選手会などの各種団体がそれぞれの思惑で動いているから足並みが揃わない。今大会の決勝は民放でも放送されていた。その場で和歌山県、JKAが「コロナ対策として〇〇億円を寄付します」と言えば視聴者も競輪業界に対する見方が違ってきたかも知れない。そういったチャンスをみすみす逃し続けているのが、競輪界の悪いところでもある。
寄付に関して言えば大きな災害の時には『復興支援競輪』が開催される。しかし、売り上げの何%なのか?いくらを寄付したのか?は明らかになっていない。復興支援を掲げる以上、それ相応の寄付をしていると思っていたのだが、実はそうでもないらしい。これに関して、マスコミ各社は何も触れていないのが不思議でならない。JRAの50億円寄付、前にも触れたが、ボート業界も多額の寄付だけでなく、用地も提供している。有観客、場外再開と、明るい話題は出てきているが、コロナ渦に対する競輪業界の立ち位置は未だにハッキリしていないと、強く感じる。

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岩井範一

Perfecta Naviの競輪ライター

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