2020/04/30 (木) 14:17
「まさか」と言うよりは「やはり」である。
4月24日、第74回G1日本選手権競輪の中止が発表された。それも主管の静岡市長が自らの定例会見で、だ。正直なところ筆者に驚きはなかった。もちろん、競輪ファンとしては開催していただきたかったのだが、全国に緊急事態宣言が出ている以上、開催中止は止むを得ないだろう。
しかしながら、どうして競輪だけが中止に追い込まれるのか?その疑問は尽きない。静岡県では浜名湖ボートレース、浜松オートレースが無観客ながらも開催されている。そして、伊東温泉競輪も4月29日からF1戦を開催している。首長だと言っても、それが知事の意向なのか?それとも市長の意向なのか?今回はどういう話し合いが行われたのか、詳細は把握していないが、ボートレースやオートレースが開催されている以上、市長の判断だったことが推測される。
競輪とは裏腹にボートレースは総額6億円を寄付すると、発表した。関係団体、全国のボートレース場が一つになり、多額の寄付を決めた。その額にも驚きだが、新型コロナウイルスに対する国民感情を巧く捉えている。あくまでもギャンブルであるが、こういった国難の時には率先して、寄付を行っている。東日本大震災の時もボートレース界の動きは速かった。それに比べて、競輪界はどうであろうか?前回も書いたが、全てにおいて後手だ。やっと武雄記念の時に寄付を発表したが、あくまでも地方レベルの話しであり、中央団体からは未だに音沙汰なし。ボートレースが一丸となっているのに……対して、競輪界は主要3団体の足並みが全く揃っていないように見受けられる。
いくらここで騒いでみてもJKAの重い腰は上がる気配がない。日本競輪選手会、全国競輪施行者競技会も同じである。風の便りに、休業補償を口にする団体の幹部もいるそうだ。もし、それが本当ならばおかしな話しであろう。国からの自粛要請がきていない。その中で中止を決断している。静岡市長が会見で語っていたことだが、一番のネックは往来が多数に上るということだろう。神奈川県知事が「湘南の海に来ないでいただきたい」など、各自治体は他県から自分の所への移動自粛を要請している。ただ、これに関して言えば、往来の人数が多いか少ないかは関係のない話しだ。競輪は多くて、ボートレースやオートレースは少ない、それでは理屈に合わない。大小の問題ではないはずなのに、このことからも競輪界だけは弱腰に映る。
このような状況下でも開催している競輪場はある。そこには強い意志を感じる。緊急事態宣言が延長(4月30日時点、1ヶ月程度の延長も検討中という報道)も考えられる今、このままの状況が続けば、いくつかの競輪場は廃場の流れになっていくことは確実だ。ましてや従事員や場内の食堂関係者、宿舎の食堂、宿舎に出入りしているマッサージ関係者まで、既に生活への影響が出ている。選手の誰もが勝ちたいと思う『日本一決定戦』が中止になったことを中央団体はどう思っているのだろうか?JKA会長の談話がスポーツ紙に掲載されていたが、正直なところ心に響かなかった。競輪は社会に貢献していることをここで語るのか?そう思えてしまった。中止にならないようにしていくのがJKAの仕事だと思うのは筆者だけだろうか?選手、マスコミの動きも鈍い。恐らくではあるが、何か行動を起こしたくても制限があるのだろうか。だが、今こそ団体の垣根を越えて、一つにならねば競輪は終わってしまう__。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター