2020/03/10 (火) 14:47
ドイツ・ベルリンで行われたUCI 2020トラック世界選手権のケイリンで、脇本雄太(福井94期)が銀メダルに輝いた。この結果を受けて、恐らく、脇本はリオデジャネイロに続き、2大会連続の五輪出場を確実(正式な発表は4月上旬)にした。ケイリン、スプリントで枠を獲得し、それぞれ2人が出場する。選考基準を考えれば、脇本と新田祐大(福島90期)だろう。残念だったのが、チームスプリントで枠を取れなかったことだ。今シーズンのワールドカップでは金メダルを獲得するなど、期待していたのだが……。
そして、何と言っても今回の世界選手権で注目を集めたのは女子オムニアムで、日本史上初の金メダルを獲得した梶原悠未(筑波大学)だろう。オムニアムとはスクラッチ、テンポレース、エリミネーション、ポイントの4種目からなるもので、1日で全種目が行われる。よほどの体力がない限り、勝つことが難しい競技である。梶原は3種目目のエリミネーションでアクシデントに巻き込まれ落車してしまったが、幸いにも骨折は免れ、最終種目のポイントレースを迎えることができた。そして、前半の貯金が物を言い、逃げ切ったのだ。この快挙は当日のニュースなどで大きく報じられた。前日の脇本の銀メダル獲得も大きかったが、それを明らかに上回るものだった。
3月3日に脇本、梶原の記者会見が成田空港で行われた。新型コロナウイルスの影響で、記者会見自体が行われるかどうか懸念されたが、2人は元気な姿を見せた。報道陣も当たり前だが、マスク着用など厳戒態勢の中での記者会見だったそうだ。ただ、その場に居合わせた知人によると「テレビインタビューだったと思うが、脇本、梶原はマスクを着けたままだった。報道陣のマスク着用は分かるが、インタビューを受ける方は取っても良かったのではないか」と、聞かされた。それぞれの言い分はあろうが、他の競技を見ていると、マスク着用でインタビューに答えていたアスリートは少なかったように思える。もちろん、各団体が決めたことだが、もう少し柔軟に考えても良いのではなかろうか。“せっかく”という表現が正しいかは別にして、まだまだ自転車競技はマイナー競技であるのに、世界1、2位の記者会見でマスク姿では一般の人にアピールできたか疑問が残る。「脇本って、イケメンじゃん」や「梶原、カワイイ」という次元であっても話題になれば、競技自体の知名度はもっと上がると、考える。
話題を五輪に戻したい。脇本は帰国会見で「ベストの状態で戦ったのに負けた」と、コメントを残している。足りなかったのはどこなのか?それが戦略的な部分にあることはヘッドコーチのブノア・ベトゥも認めている。仮に、戦略・戦術的な部分を見直していけば、脇本の金メダル獲得が近づくということだ。筆者の勝手な考えだが、7月の本番を控え、この時期にピークを持っていった選手は何人いたのだろうか?既に枠を取っている国の選手は、敢えてここに100%で臨まないのではないだろうか?相手に手の内をさらけ出す必要はない。それが国の威信をかけた戦いにおける常套手段だろう。穿った見方かも知れないが、全て間違いではないと考える。脇本の場合、今回の世界選手権が五輪出場へのラストチャンスだった。その反動を考えたくはないが、もしかしたら、あるかも知れない。しかし、今はそんなことを考えるのはやめよう。今回の快挙を素直に喜びたい。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター